努力に勝るαなし

認認家族

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智則のあこがれる先は俺じゃなく…ーー優

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骨折が治ると、智則は優の父に師事した。

正確には勝手に真似をした。自分風情が猛に教えを請うなどとは、おこがましいにもほどがある、といったところか。


初めは相手をしなかった父も、父の真似をし続けた智則にほだされた。
猛はその道のプロだ。そんな父のルーティンを小1が真似れば、すぐ音をあげるものだが、2週間経っても続けていて、智則の体力は逆に落ちていった。当然だ。父の朝の一時間のメニューを小1がこなそうとすれば、数時間はかかる。睡眠時間を減らさざるえない。

父は何も言わず自身のメニューを少し減らした。それでも小1には全くついていけないレベルだ。智則は睡眠以外の時間を全てトレーニングに捧げた。

半年が過ぎた頃、智則が優に訪ねた。

「猛おじさん、朝のメニューまた変えたよな?どうしたの?」
「直接親父に訊けよ」
「え~緊張しちゃうし……」
智則が照れながらいう。

イライラした。
俺が智則を守ったのに、なんで親父に憧れんだよ。

その日の夜の父との稽古は散々だった。
とにかく俺は父を痛めつけたかった。我武者羅に挑みかかり、惨敗に終わった。
所詮は小2である。体術を知らぬ大人であれば逆に体格差を生かしその勢いを利用して攻撃もできるが、プロ相手にはどうしようもない。


「どうした?今日のお前は感情的だぞ」
「………智則が、父さんのルーティンついて訊いてきた。なんで?俺だって教えられるのになんで父さんなんだよ」
「まだまだガキだが、いっちょ前にαだな」
「父さんっ」
クツクツと喉奥で嗤う父親に抗議をしようとすると、
「明後日の稽古から、智則君も誘いなさい。身体もできてきたからな。お前も、相手を怪我させない攻撃をそろそろ覚えるころだ」

当初、ガチガチに緊張していた智則も3ヶ月もすると慣れてきた。

「智則っ手首をもっと柔らかくっスナップを効かせろ」
「はいっ」
父の指導が飛ぶ。

間合いに入ってきた智則を避けようとした瞬間、その項につい目をうばわれた。犬歯が疼いた。その一瞬の隙をとられて優は投げ飛ばされた。とっさに受け身をとれたのは体が覚えていたからだ。

「よし。智則は、次の段階だな。相手が軽傷ですむ攻撃の会得。優はあらゆるいまで猛省しろ」

その日の夜、精通があった。

こっそり汚れた下着を洗っていると、父親に見つかって爆笑された。

「お前、わっかり易いな~」

うっせー。αは早いんだよっ


一年もたつと、智則は、上級生のαを軽くいなせるようになった。余りも馬鹿いαは正当防衛が通じる範囲で排除していた。

努力は裏切らない。努力をすればαとも対等に渡り合える。
その確たる自信をえ、智則は稽古にも勉強にも真面目に取り組んでいた。

その一方で、何かに悩んでいた。優の父親に相談をしていた。
なんで、俺じゃないんだよっ。


智則が、稽古メニューを増やした。
優の倍以上は鍛錬している。勉強もし、いつ寝ているのか、そんな疑問ぐらい抱けばよかったのに、何も気が付かずに優は日々を過ごしていた
そこまでする原動力が何なのかを確認もせず、智則を独占できる時間が増えたことへの喜びしかなかった。


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