努力に勝るαなし

認認家族

文字の大きさ
上 下
13 / 178

バース未定からの-ー優

しおりを挟む
優には、努力家の幼馴染みがいる。学校でイジメられても卑屈にならず前をみつめる、そんな男だ。



優の住むこの地域は所謂高級住宅地だ。

当然ながら、α×Ωやα×αといった夫婦が多く、子供たちもα率が高い地域である。

αというものは効率を重要視する。それは、子供の教育においてもである。

つまり、遠くのレベルの高い私立学校に通わせるのは通学時間が無駄である。

近くには公立学校がある。ならば、公立学校の教育レベルを上げてしまえばいい。

レベルの高い教員が来るようにバックアップすればいい。

かくして、公立とは思えないほどの小中学校が日本の要所要所に存在することとなった。


優の通っていた小学校もまた、エリート教員のみで構成された公立学校であった。

そんな学校であるから、世の中のα:β:Ωの比率は2:7:1であるのに対し、ここでは6:1:3という、βが最も少ないというまれな環境になっていた。

つまり、この狭い学校社会においてβは異分子であり軽視してよい存在であったのだ。


優の幼馴染の智則はβだ。小学校入学前の検査で判明した。

智則の両親は智則にβでも生活しやすい私立学校などを進めていたが、当人が断っていた。幼稚園児がイジメなどというものを理解出来るわけがない。ただ、仲の良い友達とはなれるのが嫌だったのだろう。


小学校に入学するとβというだけで当然のようにいじめられた。いじめてくる者には幼稚園で親しかった友達も一部いた。

だが、智則はいじめられても卑屈になることなく前を向いていた。

それが、またイジメを加速させたのであろう。泣けばいいのに。泣いてごめんなさいと言って自分の元に来ればいいのに、と願うかまって君たちを一蹴し、存在すら無視していたのだから。

智則をイジメる者の中には、『いつか智君と結婚するんだ~』と言っていた者も少なくない。

幼稚園の頃から、目鼻立ちの整った智則はαかΩと思われていた。

自信家の子は『智君はΩだからαの僕と結婚するんだよ』と言っていた。夢を見ていたのだろう。

だから、入学前のバース検査で智則がβと判明した時は、阿鼻叫喚であった。特に慌てたのが、智則と結婚すると公言していたαの子供達の親である。

バース判明前は、子供のプロポーズを微笑ましいものと見ていた親たちも、バース判明後は智則に近づいてはいけないと命ずるようになった。子供たちは泣いて嫌がった。

有名なα×β夫婦の無理心中事件が起きたばかりで、自分の子供がそうなることを恐れたのだ。まだ幼い子供にそんなことは伝えられない。

αの伴侶への想いは飢餓にも近い。Ωであればそれに対して応えてくれるが、βは……自分の子供に辛い思いをさせたくなかった親たちは、みな言った

『智則君はβだからダメなの。貴方は近づいちゃダメ。αかΩだったら良かったのにね』
『貴方は、αだから。智則君とは合わないの。貴方にふさわしいΩの婚約者を用意したわ』


智則がβだから悪いんだ
智則がβだから近寄っちゃダメなんだ。
でも、智則が近づいてくる分にはしょうがないよね。

αとは言え、子供なんて親が怖いものだ。そこからの発想なんてそんなものである。

けれど、智則は平然としていた。
いや、平然としているように見えた。

ただ、バース検査後も態度を変えなかった優には時々泣き言を洩らしていた。

『なんで?βってそんなにダメなの?近寄っちゃいけないくらいにダメなものなの?』と。
『お兄ちゃんが、お前がβと判明してから、学校での俺の立場が悪くなったんだよって怒るんだ』

バース判明後も智則の隣にいる優に、α達はいらだっていた。
自分は頼りにされないのに、近づくのも禁止なのに優は側にいて智則を独占している。優がこの状況を悦んでいる事を、α達は感じ取っていた。自分たちと同じように智則に好意を持っていたくせに公言しなかった。それがここまでを計算してのことだったのかは不明だ。ただ、一つ言えることは、優はかなりの上位αで、だから狡猾なはずだ。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

5人の幼馴染と俺

まいど
BL
目を覚ますと軟禁されていた。5人のヤンデレに囲われる平凡の話。一番病んでいるのは誰なのか。

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

処理中です...