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教室の日常ー智則
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「智則~」
次の授業の準備をしていると、後ろからふわりと九条が覆いかぶさってきた。
「う~ん、やっぱり癒やされるなぁ」
ぐりぐりと、肩に顔をなすりつける。
最初は抵抗していた智則も、段々面倒くさくなり、放置するようになった。抱き着かれた後に抵抗しても、九条が満足するまでは離してもらえないことを思い知らされたからだ。抱きつくのも猫のように気配なく近寄るから、反動を使って逃げ飛ばす事も不可能で。力ではどうやってもアルファには敵わないのである。
「一週間ぶりだな、九条」
「やだなあ智則、九条じやなくて、英樹ってよんでよ」
「……九条で。」
九条に近しい人間が、彼のことを下の名で呼んでいるのは知っている。だが、英樹様
なのだ。いまさら同級生を様付けで呼ぶのは嫌だし呼びすてなんて事をしたら、九条信奉者に闇討ちでもされそうだ。
ただでさえ、九条からハンドタオルを貸し付けられている事に納得していない者も多い。
最も、一番納得してないのは智則であるが、問答無用と九条が勝手にハンドタオルを自分のと交換するのだ。
今も勝手に人のポケットからタオルを取り出している。
メーカーも教えてやったのだから、自分で買えばいいものを。
「2枚持ってきてるから、九条のはいらない」と言えば2枚とも奪っていく。
そんなに気にいったのならばと、購入して贈ってやれば、「ありがとう」といいながらやはり使用中のタオルを奪って自分のタオルを置いていくのだ。
九条のタオルを返却しようにも本人は受け取らないし、目をギラギラさせてタオルを見ているのは一人や二人ではなく、誰に渡しても角が立つし、置いて教室を出るからそいつ等で話し合ってくれと席をたてば、側近が「高額転売されたらどうしてくれるんですか」と言ってくる
正直、もう、面倒なのでやりたいようにさせている。
「今度の土曜日、親しい奴らで集まってバーベキューやるんだよ。智則もおいでよ」
「え、いや、不参加で」
九条と親しい=上位αの集まりになんか参加したくねぇっつーの。
だが、周囲はそうは思わなかったようだ。ギラリと目を光らせたものの、何も言ってこない。声をかけて貰えるのを待っているようだ。昔の貴族階級とか、目下の者からの話しかけるのは無礼ってなってだけど、現存してんだなぁ………
。
しかし、どこにでも強者はいる。
「あのっ私も参加したいです」
「……親しい、といったのがききとれなかったのかな?そんな耳、必要ないよね?」
九条の台詞に空気が凍りつく。
………
こわっ
九条の取り巻きのひとりが里奈を教室の外へとエスコートしていく。いや、状況が状況だけにドナドナにしか見えん。本人も顔色が真っ白っだ。大体、どごに連れてくんだよ
「あ~、えと、九条、俺、里奈も行くなら俺も行こうかな~、なんて……」
「智則は優しいね。あの子の為に行きたくもないバーベキューに来てくれるの?」
な、なんか、更に九条の声が……
「いっいや、興味はあるんだけど、俺、九条しか知らないし、きついかな~、なんて。里奈とか誰かしらいてくれたら、心細く無いなあ、と」
「ふうん、彼女じゃなくても良かったと。興味はあると、大丈夫だよ。僕が智則の側にいるから安心して?
ま、彼女には感謝かな、智則も行くって言ってくれたし」
里奈を戸口へとエスコートしていた男がそれをきき、席へと戻ってきた。
教室から安堵のため息が溢れる。
ってか、大学の構内でこんな緊張感、おかしくね?
着席した里奈の顔色も少しだけ戻ってきた。
「じゃあ、智則。11時に迎えに行くからね」
『αは狡猾だ。言質を取られるような不用意な発言には注意しろ』
おじさんに言われた言葉を思い出して智則は、深い深いため息をついた。
次の授業の準備をしていると、後ろからふわりと九条が覆いかぶさってきた。
「う~ん、やっぱり癒やされるなぁ」
ぐりぐりと、肩に顔をなすりつける。
最初は抵抗していた智則も、段々面倒くさくなり、放置するようになった。抱き着かれた後に抵抗しても、九条が満足するまでは離してもらえないことを思い知らされたからだ。抱きつくのも猫のように気配なく近寄るから、反動を使って逃げ飛ばす事も不可能で。力ではどうやってもアルファには敵わないのである。
「一週間ぶりだな、九条」
「やだなあ智則、九条じやなくて、英樹ってよんでよ」
「……九条で。」
九条に近しい人間が、彼のことを下の名で呼んでいるのは知っている。だが、英樹様
なのだ。いまさら同級生を様付けで呼ぶのは嫌だし呼びすてなんて事をしたら、九条信奉者に闇討ちでもされそうだ。
ただでさえ、九条からハンドタオルを貸し付けられている事に納得していない者も多い。
最も、一番納得してないのは智則であるが、問答無用と九条が勝手にハンドタオルを自分のと交換するのだ。
今も勝手に人のポケットからタオルを取り出している。
メーカーも教えてやったのだから、自分で買えばいいものを。
「2枚持ってきてるから、九条のはいらない」と言えば2枚とも奪っていく。
そんなに気にいったのならばと、購入して贈ってやれば、「ありがとう」といいながらやはり使用中のタオルを奪って自分のタオルを置いていくのだ。
九条のタオルを返却しようにも本人は受け取らないし、目をギラギラさせてタオルを見ているのは一人や二人ではなく、誰に渡しても角が立つし、置いて教室を出るからそいつ等で話し合ってくれと席をたてば、側近が「高額転売されたらどうしてくれるんですか」と言ってくる
正直、もう、面倒なのでやりたいようにさせている。
「今度の土曜日、親しい奴らで集まってバーベキューやるんだよ。智則もおいでよ」
「え、いや、不参加で」
九条と親しい=上位αの集まりになんか参加したくねぇっつーの。
だが、周囲はそうは思わなかったようだ。ギラリと目を光らせたものの、何も言ってこない。声をかけて貰えるのを待っているようだ。昔の貴族階級とか、目下の者からの話しかけるのは無礼ってなってだけど、現存してんだなぁ………
。
しかし、どこにでも強者はいる。
「あのっ私も参加したいです」
「……親しい、といったのがききとれなかったのかな?そんな耳、必要ないよね?」
九条の台詞に空気が凍りつく。
………
こわっ
九条の取り巻きのひとりが里奈を教室の外へとエスコートしていく。いや、状況が状況だけにドナドナにしか見えん。本人も顔色が真っ白っだ。大体、どごに連れてくんだよ
「あ~、えと、九条、俺、里奈も行くなら俺も行こうかな~、なんて……」
「智則は優しいね。あの子の為に行きたくもないバーベキューに来てくれるの?」
な、なんか、更に九条の声が……
「いっいや、興味はあるんだけど、俺、九条しか知らないし、きついかな~、なんて。里奈とか誰かしらいてくれたら、心細く無いなあ、と」
「ふうん、彼女じゃなくても良かったと。興味はあると、大丈夫だよ。僕が智則の側にいるから安心して?
ま、彼女には感謝かな、智則も行くって言ってくれたし」
里奈を戸口へとエスコートしていた男がそれをきき、席へと戻ってきた。
教室から安堵のため息が溢れる。
ってか、大学の構内でこんな緊張感、おかしくね?
着席した里奈の顔色も少しだけ戻ってきた。
「じゃあ、智則。11時に迎えに行くからね」
『αは狡猾だ。言質を取られるような不用意な発言には注意しろ』
おじさんに言われた言葉を思い出して智則は、深い深いため息をついた。
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