2 / 7
2 美しい
しおりを挟む
「まさか“ラウス”か?」
私だけでなくフィンも相当驚いたようで目を見開いていた。
ディフェウスは目の前にいる淡い色をした髪に整った容姿、宝石のような青い目に華奢なやせた体をした少年に目を奪われていた。
店主に挨拶を促された少年は少しの戸惑いの表情を見せた
「初めまして。ニクスと申します。」
すると王子は
少し目を細め、
「彼は不法入国者だな?ラウスの少年など我々の耳にはいっていない」
とわずかにトーンの落ちた冷静な声で店主に問う
「申し訳ございません。彼は少し前ガレヴァーユ王国からの輸入船の荷物の中に紛れていたところを仲間が発見したところかなり衰弱していたようなので少しの間かくまっておりました。そして、動けるまでに回復したところで不法入国でしたので国に送り返そうとしたところ激しい抵抗の末、過呼吸までおこし倒れてしまったのでなにか事情があるのではと本日お越しいただく予定であったあなた様方に確認しようと思っておりました。」
と店主はその時の様子とともに私たちに話をする中、彼がわずかに震えながら立っていることに気が付いた。
普段なら自分から話しかけるなどしないが、
その時すでに私は彼にとらわれていたのかもしれない。
「君はどうして荷物の中になど隠れていたんだい?」
いつもよりも穏やかな声を出す自分に王子でさえも驚いていた。
しかしニクスという少年は口を開こうとしなかった。
頑なに事情を話そうとせず何も聞き出せなかった。王子は不法入国ではあったが害のない人間と判断しこの国に滞在することを許可したところで我々はかえることとなった。
「彼はガレヴァーユ王国出身とみて間違いないだろう」
「そうだな、ガレヴァーユは貧富の差が激しいと聞く。ひどく痩せていたし飢えに耐え切れずに逃げてきたのかもしれない。」
「そうかもしれないな。私はとりあえず城に帰って申請をしてくるよ。」
「わかった。じゃあ私は騎士団へ帰るとしよう。」
そう言って私たちは城についたところで別れた。
この時の私たちは彼の抱えている事情がそんな簡単なものではないということを知る由もなかった。
------
三日後、ニクスのことが気になっていたディフェウスは仕事の合間に宝石店を訪ねていた。
「おや、ディフェウスさん。いらっしゃいませ。珍しいですね、あなたが宝石を見に来るなんて。」
「いや、宝石を見に来たわけではない。ニクスはいるか?」
「はい。上におります。」
そう聞くとディフェウスは店の奥へと足を向けた。
扉を開けると上へと続く階段があり音を殺して上がっていく。
二階にたどり着くとそこには本を広げたまま机の上で眠っているニクスの姿があった。
こうしてみてみると肌は焼けておらず雪のように白く、まつげも長い。美しいとは彼のことを表すのだろうと納得させられる。
観察していると彼の瞼がわずかに震え青い瞳に光が差した。
まだぼんやりとして焦点が合っていない目に私が映り込んだとたん彼の目が大きく見開いて
「申し訳ございません!」
とすぐに椅子からおり震える体で頭を床に擦り付けなんども謝り始めた。
その様子から自分ではない何かに恐怖を抱いているようにみえたディフェウスはわけもわからずいそいで少年を起こした。
「大丈夫だ。私はそなたに危害は加えない。怖がらなくていい。」
とディフェウスはまた柄にもなく落ち着かせ始めた。
少年は初めはうつろな目で私を見ていたがだんだん視界がはっきりしてくると落ち着きを取り戻し始めた。
「えっ…ディフェウスさん……?」
「あぁ、そうだ。よく覚えていたな。だいじょうぶか」
「はい…取り乱してしまいすみません」
「いや。問題ない。だがどうして取り乱したりしたんだ?そのことを私にはなしてはくれないか」
怯えさせないようできるだけ優しい声で問うがやはりニクスは手を震わせ口を閉ざしてしまった。
「話したらどうだい?ニクス」
と店主のカイルが気が付けば後ろに立っていた。
「昨日は私には泣きながらだが話してくれたじゃないか。この人は私も信頼している人だから話しても大丈夫だと思うよ。」
「カイルはニクスの事情をきいたのか?」
「はい。昨日少しだけではありますが話をしてくれました。ですが…」
とカイルが言葉を詰まらせる
「私ごときがどうにかできるお話ではありません」
それはどういうことだろうか。私には話してくれないのだろうかと心配になる。
下におりますとカイルは階段を下りて行った。
少しの静寂に包まれるなかディフェウスは口を開いた。
「そういえば、自己紹介をしていなかったね。私は第一騎士団の騎士団長を務めているディフェウス・マジェルだ。」
するとニクスは急に顔を上げ
「あなたが……。」とつぶやくと、なぜか安心した表情をディフェウスに向けたのだ。
私だけでなくフィンも相当驚いたようで目を見開いていた。
ディフェウスは目の前にいる淡い色をした髪に整った容姿、宝石のような青い目に華奢なやせた体をした少年に目を奪われていた。
店主に挨拶を促された少年は少しの戸惑いの表情を見せた
「初めまして。ニクスと申します。」
すると王子は
少し目を細め、
「彼は不法入国者だな?ラウスの少年など我々の耳にはいっていない」
とわずかにトーンの落ちた冷静な声で店主に問う
「申し訳ございません。彼は少し前ガレヴァーユ王国からの輸入船の荷物の中に紛れていたところを仲間が発見したところかなり衰弱していたようなので少しの間かくまっておりました。そして、動けるまでに回復したところで不法入国でしたので国に送り返そうとしたところ激しい抵抗の末、過呼吸までおこし倒れてしまったのでなにか事情があるのではと本日お越しいただく予定であったあなた様方に確認しようと思っておりました。」
と店主はその時の様子とともに私たちに話をする中、彼がわずかに震えながら立っていることに気が付いた。
普段なら自分から話しかけるなどしないが、
その時すでに私は彼にとらわれていたのかもしれない。
「君はどうして荷物の中になど隠れていたんだい?」
いつもよりも穏やかな声を出す自分に王子でさえも驚いていた。
しかしニクスという少年は口を開こうとしなかった。
頑なに事情を話そうとせず何も聞き出せなかった。王子は不法入国ではあったが害のない人間と判断しこの国に滞在することを許可したところで我々はかえることとなった。
「彼はガレヴァーユ王国出身とみて間違いないだろう」
「そうだな、ガレヴァーユは貧富の差が激しいと聞く。ひどく痩せていたし飢えに耐え切れずに逃げてきたのかもしれない。」
「そうかもしれないな。私はとりあえず城に帰って申請をしてくるよ。」
「わかった。じゃあ私は騎士団へ帰るとしよう。」
そう言って私たちは城についたところで別れた。
この時の私たちは彼の抱えている事情がそんな簡単なものではないということを知る由もなかった。
------
三日後、ニクスのことが気になっていたディフェウスは仕事の合間に宝石店を訪ねていた。
「おや、ディフェウスさん。いらっしゃいませ。珍しいですね、あなたが宝石を見に来るなんて。」
「いや、宝石を見に来たわけではない。ニクスはいるか?」
「はい。上におります。」
そう聞くとディフェウスは店の奥へと足を向けた。
扉を開けると上へと続く階段があり音を殺して上がっていく。
二階にたどり着くとそこには本を広げたまま机の上で眠っているニクスの姿があった。
こうしてみてみると肌は焼けておらず雪のように白く、まつげも長い。美しいとは彼のことを表すのだろうと納得させられる。
観察していると彼の瞼がわずかに震え青い瞳に光が差した。
まだぼんやりとして焦点が合っていない目に私が映り込んだとたん彼の目が大きく見開いて
「申し訳ございません!」
とすぐに椅子からおり震える体で頭を床に擦り付けなんども謝り始めた。
その様子から自分ではない何かに恐怖を抱いているようにみえたディフェウスはわけもわからずいそいで少年を起こした。
「大丈夫だ。私はそなたに危害は加えない。怖がらなくていい。」
とディフェウスはまた柄にもなく落ち着かせ始めた。
少年は初めはうつろな目で私を見ていたがだんだん視界がはっきりしてくると落ち着きを取り戻し始めた。
「えっ…ディフェウスさん……?」
「あぁ、そうだ。よく覚えていたな。だいじょうぶか」
「はい…取り乱してしまいすみません」
「いや。問題ない。だがどうして取り乱したりしたんだ?そのことを私にはなしてはくれないか」
怯えさせないようできるだけ優しい声で問うがやはりニクスは手を震わせ口を閉ざしてしまった。
「話したらどうだい?ニクス」
と店主のカイルが気が付けば後ろに立っていた。
「昨日は私には泣きながらだが話してくれたじゃないか。この人は私も信頼している人だから話しても大丈夫だと思うよ。」
「カイルはニクスの事情をきいたのか?」
「はい。昨日少しだけではありますが話をしてくれました。ですが…」
とカイルが言葉を詰まらせる
「私ごときがどうにかできるお話ではありません」
それはどういうことだろうか。私には話してくれないのだろうかと心配になる。
下におりますとカイルは階段を下りて行った。
少しの静寂に包まれるなかディフェウスは口を開いた。
「そういえば、自己紹介をしていなかったね。私は第一騎士団の騎士団長を務めているディフェウス・マジェルだ。」
するとニクスは急に顔を上げ
「あなたが……。」とつぶやくと、なぜか安心した表情をディフェウスに向けたのだ。
0
お気に入りに追加
140
あなたにおすすめの小説

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。

この恋は無双
ぽめた
BL
タリュスティン・マクヴィス。愛称タリュス。十四歳の少年。とてつもない美貌の持ち主だが本人に自覚がなく、よく女の子に間違われて困るなぁ程度の認識で軽率に他人を魅了してしまう顔面兵器。
サークス・イグニシオン。愛称サーク(ただしタリュスにしか呼ばせない)。万年二十五歳の成人男性。世界に四人しかいない白金と呼ばれる称号を持つ優れた魔術師。身分に関係なく他人には態度が悪い。
とある平和な国に居を構え、相棒として共に暮らしていた二人が辿る、比類なき恋の行方は。
*←少し性的な表現を含みます。
苦手な方、15歳未満の方は閲覧を避けてくださいね。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

使命を全うするために俺は死にます。
あぎ
BL
とあることで目覚めた主人公、「マリア」は悪役というスペックの人間だったことを思い出せ。そして悲しい過去を持っていた。
とあることで家族が殺され、とあることで婚約破棄をされ、その婚約破棄を言い出した男に殺された。
だが、この男が大好きだったこともしかり、その横にいた女も好きだった
なら、昔からの使命である、彼らを幸せにするという使命を全うする。
それが、みなに忘れられても_


囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?

俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。

愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる