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踊り場
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次に僕は、高校の屋上に続く階段の踊り場に向かった。学校の屋上は閉鎖されており、その踊り場は倉庫のように要らなくなった備品や机、ソファが積み上げられていた。文化祭で使用した造花と思われる向日葵が窓から差し込む光でオレンジに輝いている。掃除も特にはされていないのでホコリがあちこちに積もっている。基本誰も近寄らないような場所。
ここは僕とカエが一番気に入っている場所だ。僕とカエ以外近寄らない。僕達だけの場所。僕らの絆の始まりの場所。学校でカエが見当たらない時は大抵ここに居る。教室が五月蝿くて居づらい時、1人になりたい時、考え事をしたい時などは、僕もカエも大抵ここに来る。お互いがお互いの心境に邪魔を入れることは無いし、何か話したかったら好きなように話しかけていい。そんな関係が成り立っていて、とても居心地が良かったんだ。
夏休みだというのに文化祭準備のために学校に駆り出されている。文化祭まであと1ヶ月と少し。僕のクラスは、クラス全員の手形を絵の具でつけて、ひとつの大きな絵を描くというものだった。僕は買い出し係と、自分の手形を1つ押す係。真っ赤なペンキを手に塗りたくって、手形1つ。もう用済みなようなので、踊り場へ。今日もカエは居た。カエのクラスは舞台発表だそうだ。ダンスをするそうで、カエは照明役になったから舞台に立たなくていいと喜んでいた。練習もリハーサルくらいで良いらしく、文化祭準備に追われることは無いようだ。夏休みなのにどうして居るのかと尋ねたら、目を細めて笑いながら言った。
「君がクラスの友達たちと仲良しこよししてる所を拝みにきたんだよ」
僕らはクラスの馴れ合いなどは嫌いだ。だからこそ成り立つ他愛ない冗談。本当は?と尋ねると、カエはフフっと鼻で笑った後、考え事しに来たと答えた。
こんなクソ暑い真夏でも、冷房もなくて風も通らない踊り場にやってくる。それくらいにはその場所が好き。それだけ。
じゃんけんに負けた僕は、カエと僕の分のいちごミルクを買いに行った。再び長く暑い階段を登る。高校生活最後の夏。世間一般がいう青春とはかけ離れているかもしれないが、僕は充実した気持ちで過ごせていた。カエが僕の日常を淡く染めてくれる。きっとカエの日常も、僕が淡く色付けている。お互い不思議な信頼や絆を感じている。
そんなカエが今目の前でカッターナイフを弄んでいる。僕は何をする気だと尋ねる。カエは答える。
「人を殺そうかと思って」
続けて言う。
「美しい殺し方をしようと思って」
「死は美しいものでないとね」
僕は誰を殺すのかと尋ねたが、カエがなんて答えたかは覚えていない。ただ、カエは人を殺そうとしていた。
「計画しましょう。美しいフィナーレを」
僕はきっとタチの悪い冗談だろうと捉えて、一緒に計画を考えた。
もともと突拍子のない女だ。また今回も訳分からない戯言を言っているだけだろう。
どこか狂ったカエの命は、僕には一番美しく見える。
燃えたぎる命。燃え盛る命。
灯火が消えるまではあっという間なのかもしれない
ーえ?
なんでそんなこと思ったんだ僕は
ここは僕とカエが一番気に入っている場所だ。僕とカエ以外近寄らない。僕達だけの場所。僕らの絆の始まりの場所。学校でカエが見当たらない時は大抵ここに居る。教室が五月蝿くて居づらい時、1人になりたい時、考え事をしたい時などは、僕もカエも大抵ここに来る。お互いがお互いの心境に邪魔を入れることは無いし、何か話したかったら好きなように話しかけていい。そんな関係が成り立っていて、とても居心地が良かったんだ。
夏休みだというのに文化祭準備のために学校に駆り出されている。文化祭まであと1ヶ月と少し。僕のクラスは、クラス全員の手形を絵の具でつけて、ひとつの大きな絵を描くというものだった。僕は買い出し係と、自分の手形を1つ押す係。真っ赤なペンキを手に塗りたくって、手形1つ。もう用済みなようなので、踊り場へ。今日もカエは居た。カエのクラスは舞台発表だそうだ。ダンスをするそうで、カエは照明役になったから舞台に立たなくていいと喜んでいた。練習もリハーサルくらいで良いらしく、文化祭準備に追われることは無いようだ。夏休みなのにどうして居るのかと尋ねたら、目を細めて笑いながら言った。
「君がクラスの友達たちと仲良しこよししてる所を拝みにきたんだよ」
僕らはクラスの馴れ合いなどは嫌いだ。だからこそ成り立つ他愛ない冗談。本当は?と尋ねると、カエはフフっと鼻で笑った後、考え事しに来たと答えた。
こんなクソ暑い真夏でも、冷房もなくて風も通らない踊り場にやってくる。それくらいにはその場所が好き。それだけ。
じゃんけんに負けた僕は、カエと僕の分のいちごミルクを買いに行った。再び長く暑い階段を登る。高校生活最後の夏。世間一般がいう青春とはかけ離れているかもしれないが、僕は充実した気持ちで過ごせていた。カエが僕の日常を淡く染めてくれる。きっとカエの日常も、僕が淡く色付けている。お互い不思議な信頼や絆を感じている。
そんなカエが今目の前でカッターナイフを弄んでいる。僕は何をする気だと尋ねる。カエは答える。
「人を殺そうかと思って」
続けて言う。
「美しい殺し方をしようと思って」
「死は美しいものでないとね」
僕は誰を殺すのかと尋ねたが、カエがなんて答えたかは覚えていない。ただ、カエは人を殺そうとしていた。
「計画しましょう。美しいフィナーレを」
僕はきっとタチの悪い冗談だろうと捉えて、一緒に計画を考えた。
もともと突拍子のない女だ。また今回も訳分からない戯言を言っているだけだろう。
どこか狂ったカエの命は、僕には一番美しく見える。
燃えたぎる命。燃え盛る命。
灯火が消えるまではあっという間なのかもしれない
ーえ?
なんでそんなこと思ったんだ僕は
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