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行方
しおりを挟むカエが行方不明になった。
思えば、以前から突拍子のないことをするような女だった。部室の窓を開けておいて、放課後暗くなってから部室に入って寛いだり、四つ葉のクローバーを探すために炎天下で一日中地面に這いつくばっていたり、気に入らない奴の殺人計画を立てて遊んだりしていた。変わり者という一言で表現はしがたい、なんとも周りとは馴染みにくそうである性格だった。
でも何故か僕とは仲がよかった。仲が良かったというよりは、よくつるんでいたという表現の方が正しいだろうか。僕らは学校で大抵一緒に居た。
考え方などは僕とカエは似ていた。集団で戯れるのは苦手。クラスで団結!というようなノリはくだらないと感じるタイプだ。うすっぺらな友情ごっこに興味はない。自分が居心地のいい世界を作りたい。そんな感じの。
僕とカエがよくつるむようになったキッカケは、学校でのそれぞれの憩いのスペースが一致してしまったことだ。同じ文芸部ではあったものの、お互いさして仲良くなることはなかった。だが、とある日、僕が学校内のお気に入りの場所、封鎖されている屋上までの階段の踊り場に座って居ると、カエが突然現れたのだった。
「君もここ好きなの」
待ち合わせなどはしなかったが、時々鉢合わせたので、その時は色々な話をした。その中で少しずつ共通点や気の合う点などが分かってきた。そして僕らはいつの間にか、階段の踊り場以外でもよく一緒に過ごすようになった。周りからはカップルだと思われ、からかわれたりなどしたが、僕らはそういうのではなかった。ただただ居心地のいい友人。
気づいたら一緒にいて、気づいたら沢山の記憶を共に紡いでいて、気づいたら日が過ぎていた。それだけ。
あたりまえに隣にいたカエが突然居なくなった。僕らにメールや電話の連絡手段は無かった。わざわざ連絡することも無かったため、知らないままでいた。だから連絡もとれない。
別にカエが居なくたって、カエと過ごすようになる前に戻るだけ。独りで過ごすのは好きだし、なんら問題はない。
そのはずなのに、なんだか心に隙間がある事を否めない自分も居た。
僕は、行方不明になったカエを探しに行くことにした。
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