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多分、知っている
しおりを挟む久しぶりの投稿なので…
すぐ分かる!これまでのお話。
主人公のメイリアは前世を思い出し、ゲームの悪役令嬢であることが発覚!
ひとまず断罪を避けるため婚約者と婚約解消し、前世からの夢であった婚活に励むことにした……が、そこで攻略対象者であるレオナルドに絡まれ、あっという間に学園に入学することに!
学園では同じく前世持ちのヒロインと、おバカな攻略対象者の攻防戦が繰り広げられている!
信頼できる侍女と作戦会議をし、重要イベントの日が始まった!
という感じです。
******
「では今から生徒会主催、レクレーションを開催致します!まずは説明を始めます!」
マイクの音が響き渡る校庭で、私は最大のピンチを思い出していた。生徒会の双子がルール説明をしているが聞こえない。
ピンチが二つ頭の中で反響している。
一つは、今レクレーションの説明をしている生徒会メンバーのこと。
エイミーにはすっかり忘れていたため言い忘れていたが、生徒会メンバーの半分は攻略対象者だった。
まず生徒会長は王太子でもあるエドワード。
そして後で控えている書記のツンデレ魔術師見習い。この二人は言っていたのだが。
確かリメイクをすると公式が言っていた気がするので、その後に追加されたのだろう、インテリっぽい眼鏡の副会長と、書記の性格正反対双子。
この3人のこと、すっかり忘れていた。そして名前も。でも関わることなんてないからこれからも忘れよう。うん、そうしよう。
でも一番ピンチなのは…そう、このレクレーションは乙ゲーイベント、レオナルドのシリアスイベントがあるのだったと、今まさに思い出したから。
「あれ、メイリア、どうしたの?」
そんな状態の私に平然と声を掛けるレオナルドにイラッとし軽く睨み付ける。
「何でもないわよっ」
「…??」
不思議そうな顔をしているレオナルドを置いて、私は必死に思い出そうと頭をフル回転させる。
確かこのゲームは最初に攻略する相手を決めるんじゃなくて、選択肢によって相手が変わるシステムだった気がする。だからこのイベントが始まった後に選択肢が表れ、どれかを選択することによって誰かのイベントへ行く。
このイベントでは全員分あったはず。
王太子ルートではサボり、裏庭に行くと発生。
ツンデレ魔術師見習い(長いからツンデレでいいわね)は真面目に参加を選択し、誰も近寄らない旧準備室へ行くと発生。
双子ルートでは真面目に参加を選択し、校庭で誰もいなくなるまで待っておくと発生。
副会長ルートでは真面目に参加を選択するが、その後サボろうとすると発生。
保健室の色気先生はサボるを選択し立ち入り禁止になっている屋上へ行こうとすると発生。
そして、レオナルドはサボるを選択し図書館棟に行くと発生する。
このイベントがだいたいのルートを固定する。つまりこれはヒロインにとって大事なイベントのはず。どんな行動をとるのか分からないから警戒しなければならない。
しかしだが多分ヒロインは逆ハーを狙っているんじゃないだろうか。このゲームでは逆ハーエンドはなかったはずだが。
そう思いヒロインをちらりと見てみると、なんだか俯いてぶつぶつと何かを呟いている。怖い。
「では今からリボンを配りたいと思います」
「え?」
そうして近くにいた係の人から手渡されたのは"青"のリボン。
レオナルドをチラ見するとレオナルドの持っているリボンの色は"赤"。それから、ミリアのリボンも"赤"だった。
「色、違うのね」
「え、話聞いてたの?」
「えっ、き、聞いてたわよ…」
「ほんとに?ならなんて言ってた?」
「…………………」
「ほら、やっぱり図星」
「う、うるさいわね…!」
「メイリア、今からかくれんぼをするの。青のリボンの人は赤のリボンの人に見つからないように、赤のリボンの人は青のリボンの人を捕まえるのよ。そして、その証拠に青いリボンを持ってくるの」
分かってるなら説明してくれたって良いじゃないと、レオナルドに腹が立っていると、同じく一緒にいたミリアが説明してくれた。本当に彼女は優しい。
「ミリア…なるほどね、ありがとう。やっぱりミリアは優しくて、レオナルドとは大違いね」
「へぇ」
嫌味のごとくレオナルドを睨む。けどレオナルドはなんともない顔でさらりと私の嫌味を受け流した。
そんな私達をミリアはくすくすと笑っている。
「皆さん、リボンは行き渡りましたか?……ではまずは、青いリボンの人は隠れてくださいねー!5分経ったら、赤いリボンの人は青いリボンの人を見つけてください。では、かくれんぼ、スタート!!!」
そして、かくれんぼが始まった。
「じゃあ、また後でね」
ミリアとレオナルドに手を振って隠れため移動しようとするけど、その手をレオナルドに掴まれた。
「……? なによ」
「ねぇ…メイリア、絶対他の人に見つからないでね」
「え?」
どうして他の人に見つかってはダメなのかと聞き直すが、掴まれた手を引っ張られ──耳元で囁かれた。
「絶対、俺が見つけたいんだ」
驚いて目を見開くと、レオナルドの顔が近くに来ている事に気がつく。
「っ……!」
妖艶、という表現が似合うような微笑みをするレオナルド。ぶわりと効果音がなりそうな程、顔に熱が集まるのが分かった。きっと真っ赤になっている事だろう。
「あらあら、メイリアったら」
後ろでミリアがくすくすと笑ったのが聞こえた。
だって、こんなの卑怯だ。こんな笑顔、誰でも赤くなる。
「っ…わ、分かったから…っ、じゃ、じゃあね!」
レオナルドの手を振り払い、駆け出す。はしたないって言われるかもしれないけれど、それぐらい今ここから逃げ出したかった。
「っ、早く熱引いてよ…」
頬を擦りながら、ヒロイン達のリボンの色、見てなかったなぁ、なんて現実逃避しながら、あっという間に図書館棟へと来ていた。自然にここに出向いてしまった訳だが、ヒロインだってここに来るだろう。出くわす訳にはいかないため、違う場所に隠れようとしたのだが。
「…ここなら、きっと…」
そんな呟き声が聞こえた。
聞き覚えのある声に振り向くと、俯いて歩いてくるヒロインの姿があった。その手に握られているのは私と同じ"青"のリボン。隠れる方だ。
「ここでレオナルドとのイベントをクリアして、好感度ゲットよ…!」
ヒロインは私がいることに気がついて居ないようだが、どんどんこっちに近づいてきている。バレるのは時間の問題だ。そしてバレると厄介。という訳で私は慌てて近くの物陰に隠れた。
ブツブツと言いながらヒロインが通り過ぎる。
きっと、ヒロインはここで1番好感度の低いレオナルドとのイベントを進める気だ。それを考えるとここから離れた方がいい気もするが…正直、レオナルドとヒロインのイベントも気になるのも確かだ。内容は知らないが、大事な場面があるということは聞いた気がする。
だから、見てみたい────はずなのだが。
胸がズキズキと痛むのはどうしてだろうか。
まるでこんなの、嫉妬しているみたい。
「っ…!」
そう理解した時、熱が集まる顔を隠すように両手で覆う。きっと、こんなのは嘘だ。
だって、私はレオナルドが離れることを望んでいたはずだから。優しくて、私に一途になってくれる、そんな人と結婚したかったはず、なのに。レオナルドは意地悪で、優しくなんてない。チャラチャラしてて、女の子が好きなやつ。
だったらレオナルドがヒロインとくっついたって問題は無い。
なのに、思い浮かぶのは反対のこと。
『君だけに優しくするね』『君に一途になるよ』
そうやって笑いかけてくるレオナルドが思い浮かんで、余計に胸の痛みを感じた。
まるでこんなの、私は──
その時、ガサリと足音がした。ハッと顔をあげ、それ以上考えるのを辞めた。
「誰かしら…」
そっと物陰から見渡すと、遠くからレオナルドが歩いてくるのが見えた。
──こんなのまるでゲームと同じね。
まさかゲーム通り、図書館棟へと来るなんて。
まだズキズキと痛む胸に気づかない振りをして、見つからないようにもっと奥に隠れる。
その前をレオナルドが通り過ぎていく。これから起きるであろうイベントを知らないまま。
隠れているのは自分なのに、見つけてくれるなんて淡い期待をしていたことが酷く恥ずかしくなった。
いいや、とかぶりを振る。
──大丈夫。きっとまだ間に合うわ。
胸に手を当て、何に間に合うのか自分でもよく分からないまま、これからのイベントを待つことにした。
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