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作戦会議!
しおりを挟むあれから、あっという間に半年が過ぎていったわ。
クラスは攻略対象者や主要人物がひとかたまりになったAクラス。もちろんヒロインマリカと浮気野郎エドワード、レオも一緒。
そんなクラスに押し込められたのだから、もちろん憂鬱になるわ。でも、ゲームではクラスの皆から嫌われ、偽りの友達─取り巻き達に囲まれ、本当の意味で孤独になっていたゲームのメイリアよりは楽しい学校生活を送れていると思う。
なぜなら、そう!
伯爵令嬢のミリア・ルーフォード。彼女と友人になれたのだ!
彼女は公爵令嬢という立場の私に、怖じ気づくことなく声を掛けてきてくれた。そんな彼女に私は感激し、友人になれないかと頼んだ。彼女は喜んで了承してくれ、本当に感謝している。
そして彼女もこの学園で婚約者が出来ないか探しているとのこと。初めて同じ願いを持っている人と会え、しかも友人となれたかとに凄く嬉しかったわ。
でもミリアはレオナルドとの婚約を勧めてくるのでそこだけは好きになれないの。
そんな感じで過ごしてたのだが、いかんせん問題が多すぎる。
まず一番厄介なのはマリカ。いつでもどこでも私のことを睨んでいるし、攻略対象者たちにあざとい色目を使っている。
ヒロインは他のメンバーと着々とイベントを進めているようだが、エドワードや他のメンバーについてはどうでもいい。マリカとどうなろうが、どう動いても。ただいちいち、こちらに関わろうとしないでほしいのが一番だ。
エドワードは私に、どうだ、してやったぞ、とでもいいそうなドヤ顔で見てくるし、マリカに何て言われたのかと知らないが他のメンバーは私のことを悪魔だとか言って睨んでいるのを見たことがあった。
前世の記憶のおかげで、ああいうのは無視をするほうがいいと思っていたので最低限は関わろうとしないのだが──ここで次の問題と重なってくる。そう、レオナルドだ。
教室の席はほぼほぼ自由で、初めて教室に入った時にはだいたいの人が端に座っていたわ。だから仕方なく開いていた真ん中で、できるだけマリカと離れている席に座ったのだけれど、右隣にレオナルドが座ったことが問題でもあるわ。
私はもうレオナルドがいるという生活に慣れて────ないわよ!?──じゃなくて、まぁ、その、それがいつも通りだと思ってたから、隣に座ったのを気にしなかっただけ、うん、そうよ。ああっ、だからそうじゃなくて、確かゲームでのレオナルドはマリカに一番ぐいぐい近づいてくるキャラで、席もマリカの隣か後ろだったはずだったの。そのせいかマリカは隣のレオナルドを羨ましそうにこちらを睨んでくるし。
でもそれはあまり問題じゃない。先程と同じで睨んでくるのは無視を決め込もうと思っているし、レオナルドが隣なのはいつものことだし、左隣にはミリアがいるもの。授業中はあまり問題ない。
レオナルドはマリカのせいで人の目を気にしている私を気遣ってくれるのか、教室ではほとんど口説いてこない。
口説いてくるのは休み時間か昼休み。ミリアがいても気にしないの。ミリアは後ろでニヤニヤしているのだけど。どういうことよっ!
ああまた話が逸れちゃった! 問題はレオナルドが口説いてくるのはことよ!
まずレオナルドは、私が婚約者を探していると知っているせいか、他の男と二人きりとか会話しないようにしてくる。歩くときはまるで婚約者同士のようにエスコートしてくるしっ、ふいに私のこと愛称で呼んでくるのっ、本当やめてほしいわ! しかも気軽に挨拶するみたいに好きだとか可愛いだとか言ってくるのっ、恥ずか──じゃなくて迷惑して────あれ、エイミー聞いてるの!?
「本当仲がいいですね、お二人は」
私とエイミーは今後に向けての作戦会議をしている。私はベッドに寝転がり、エイミーは椅子に座っている(座らせた)。
紅茶を優雅に啜り、涼しげな笑顔で答えるエイミーに、私はガバリと起き上がって枕をバンバンと叩く。
「なっ、さっきの話聞いて無かったの!? 私は迷惑してるのよ!」
「でも話している顔は嬉しそうでしたよ? 顔を真っ赤にさせて…初々しいですね」
「そ、そ、そんな顔してないわ! エイミーの見間違いでしょっ」
「はぁ」
「何よそのやる気のない返事は! ううっ、とにかく、私が言いたいのは、この問題をどうにかしないといけないってことよ!」
「どうにか…と言われましても……先程の話、レオナルド様の話が多かったので」
「なっ、そこまで多くないわよっ。だいたいっ──」
「───うーん、どうにか、ですか……そういえばお嬢様の前世のげーむ?とやらに出てくる攻略対象者がどなたなのかを教えていただけないでしょうか」
エイミーには平穏な学園生活を送るための協力をお願いしている。そのため、私の前世のことを含め、ゲームのざっくりとしたことを教えている。と言っても入学したあとにだが。
「さりげなく話を逸らしたわね……まあいいわ。攻略対象者は全部で五人。レオナルドと、エドワードと、名前は忘れたけど保健室の色気先生、ツンデレ魔術師見習い。それから来年、2年生になって出てくる後輩のワンコキャラ。こんな感じだったかしら? 今ヒロインが頑張っているのはエドワードとツンデレ貴族ね」
まだいたような気もするが、覚えてないので省略する。というかリメイクや続編もあった気がするからそっちと混ざってるのか?
「なるほど……私の方でも注意してみますが、今のところはまだ何もしなくてもいいのでは?」
「うーん……それもそうか…」
「お嬢様にはレオナルド様がいますし、危ない目には合わないんじゃないでょうか」
「そうね……ってどういうことよそれっ!」
「お嬢様にはレオナルド様がついている、ということですよ。もうめんどう──ではなくて婚約しているようなものですし」
「ちょっと、今めんどくさいって言おうとしなかった? 主に向かって失礼よ?」
「気になるのはそこですか。だいたい、私が仕えてる主人は公爵です。お嬢様ではありませんよ」
「それはそうだけどさぁ………ん? あっ、エイミー、貴女さっきあいつと婚約してるようなものって言った?」
「気づくの遅くないですか? …はぁ…」
「ため息…!? エイミー、貴女、あいつが関わってから私に対してドライになってない?」
「気のせいです」
「……ほんとに?」
「はい。気のせいです」
「…ほんとにほんとに?」
「はい。気のせいですのでさっさと寝る用意をしましょうか」
そう言って私をベッドから引きずり降ろすみたいに引っ張り、お風呂へと連行される。
「ちょっと、私は主じゃなくても仕えてるんでしょっ? ならもっと優しくしてよ!」
「お嬢様は優しくするとダメになるでしょう。ダメになるのはレオナルド様だけでお願いします」
「ちょっ、それはどういう意味!?」
「さぁさぁお嬢様、湯あみしましょうねー」
エイミーはまるでわがままな子供をあやすように、でも少し乱暴に私をあっという間に綺麗にさせ、着替えさせると「おやすみなさいませ」と言い部屋を出ていった。
先程の出来事でなんだか疲れた私はベッドに倒れ込んだ。
「…そういえば明日は生徒会のレクレーションがあったな……なにやるんだろ……」
明日の午後、生徒会が主催するレクレーションが予定されている。入学して半年。さすがにもう学園生活に慣れたであろうことと、定期的に先輩方の交流も兼ねて開催されると先生が言っていた。
同時に、ヒロインとのイベントもあるということも思い出した。それがなんなのかどうしても思い出せなくて、もどかしくて、忘れるように目を閉じ、気がついた時には私の意識はブラックアウトしていた─。
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