上 下
7 / 14

作戦会議!

しおりを挟む


 あれから、あっという間に半年が過ぎていったわ。



 クラスは攻略対象者や主要人物がひとかたまりになったAクラス。もちろんヒロインマリカと浮気野郎エドワード、レオも一緒。



 そんなクラスに押し込められたのだから、もちろん憂鬱になるわ。でも、ゲームではクラスの皆から嫌われ、偽りの友達─取り巻き達に囲まれ、本当の意味で孤独になっていたゲームのメイリアよりは楽しい学校生活を送れていると思う。



 なぜなら、そう!

 伯爵令嬢のミリア・ルーフォード。彼女と友人になれたのだ!

 彼女は公爵令嬢という立場の私に、怖じ気づくことなく声を掛けてきてくれた。そんな彼女に私は感激し、友人になれないかと頼んだ。彼女は喜んで了承してくれ、本当に感謝している。

 そして彼女もこの学園で婚約者が出来ないか探しているとのこと。初めて同じ願いを持っている人と会え、しかも友人となれたかとに凄く嬉しかったわ。

 でもミリアはレオナルドとの婚約を勧めてくるのでそこだけは好きになれないの。



 そんな感じで過ごしてたのだが、いかんせん問題が多すぎる。

 まず一番厄介なのはマリカ。いつでもどこでも私のことを睨んでいるし、攻略対象者たちにあざとい色目を使っている。

 ヒロインは他のメンバーと着々とイベントを進めているようだが、エドワードや他のメンバーについてはどうでもいい。マリカとどうなろうが、どう動いても。ただいちいち、こちらに関わろうとしないでほしいのが一番だ。

 エドワードは私に、どうだ、してやったぞ、とでもいいそうなドヤ顔で見てくるし、マリカに何て言われたのかと知らないが他のメンバーは私のことを悪魔だとか言って睨んでいるのを見たことがあった。

 前世の記憶のおかげで、ああいうのは無視をするほうがいいと思っていたので最低限は関わろうとしないのだが──ここで次の問題と重なってくる。そう、レオナルドだ。



 教室の席はほぼほぼ自由で、初めて教室に入った時にはだいたいの人が端に座っていたわ。だから仕方なく開いていた真ん中で、できるだけマリカと離れている席に座ったのだけれど、右隣にレオナルドが座ったことが問題でもあるわ。

 私はもうレオナルドがいるという生活に慣れて────ないわよ!?──じゃなくて、まぁ、その、それがいつも通りだと思ってたから、隣に座ったのを気にしなかっただけ、うん、そうよ。ああっ、だからそうじゃなくて、確かゲームでのレオナルドはマリカに一番ぐいぐい近づいてくるキャラで、席もマリカの隣か後ろだったはずだったの。そのせいかマリカは隣のレオナルドを羨ましそうにこちらを睨んでくるし。



 でもそれはあまり問題じゃない。先程と同じで睨んでくるのは無視を決め込もうと思っているし、レオナルドが隣なのはいつものことだし、左隣にはミリアがいるもの。授業中はあまり問題ない。

 レオナルドはマリカのせいで人の目を気にしている私を気遣ってくれるのか、教室ではほとんど口説いてこない。

 口説いてくるのは休み時間か昼休み。ミリアがいても気にしないの。ミリアは後ろでニヤニヤしているのだけど。どういうことよっ!



 ああまた話が逸れちゃった! 問題はレオナルドが口説いてくるのはことよ!

 まずレオナルドは、私が婚約者を探していると知っているせいか、他の男と二人きりとか会話しないようにしてくる。歩くときはまるで婚約者同士のようにエスコートしてくるしっ、ふいに私のこと愛称で呼んでくるのっ、本当やめてほしいわ! しかも気軽に挨拶するみたいに好きだとか可愛いだとか言ってくるのっ、恥ずか──じゃなくて迷惑して────あれ、エイミー聞いてるの!?







「本当仲がいいですね、お二人は」



 私とエイミーは今後に向けての作戦会議をしている。私はベッドに寝転がり、エイミーは椅子に座っている(座らせた)。

 紅茶を優雅に啜り、涼しげな笑顔で答えるエイミーに、私はガバリと起き上がって枕をバンバンと叩く。



「なっ、さっきの話聞いて無かったの!? 私は迷惑してるのよ!」

「でも話している顔は嬉しそうでしたよ? 顔を真っ赤にさせて…初々しいですね」

「そ、そ、そんな顔してないわ! エイミーの見間違いでしょっ」

「はぁ」

「何よそのやる気のない返事は! ううっ、とにかく、私が言いたいのは、この問題をどうにかしないといけないってことよ!」

「どうにか…と言われましても……先程の話、レオナルド様の話が多かったので」

「なっ、そこまで多くないわよっ。だいたいっ──」

「───うーん、どうにか、ですか……そういえばお嬢様の前世のげーむ?とやらに出てくる攻略対象者がどなたなのかを教えていただけないでしょうか」



 エイミーには平穏な学園生活を送るための協力をお願いしている。そのため、私の前世のことを含め、ゲームのざっくりとしたことを教えている。と言っても入学したあとにだが。



「さりげなく話を逸らしたわね……まあいいわ。攻略対象者は全部で五人。レオナルドと、エドワードと、名前は忘れたけど保健室の色気先生、ツンデレ魔術師見習い。それから来年、2年生になって出てくる後輩のワンコキャラ。こんな感じだったかしら? 今ヒロインが頑張っているのはエドワードとツンデレ貴族ね」



 まだいたような気もするが、覚えてないので省略する。というかリメイクや続編もあった気がするからそっちと混ざってるのか?



「なるほど……私の方でも注意してみますが、今のところはまだ何もしなくてもいいのでは?」

「うーん……それもそうか…」

「お嬢様にはレオナルド様がいますし、危ない目には合わないんじゃないでょうか」

「そうね……ってどういうことよそれっ!」

「お嬢様にはレオナルド様がついている、ということですよ。もうめんどう──ではなくて婚約しているようなものですし」

「ちょっと、今めんどくさいって言おうとしなかった? 主に向かって失礼よ?」

「気になるのはそこですか。だいたい、私が仕えてる主人は公爵です。お嬢様ではありませんよ」

「それはそうだけどさぁ………ん? あっ、エイミー、貴女さっきあいつと婚約してるようなものって言った?」

「気づくの遅くないですか? …はぁ…」

「ため息…!? エイミー、貴女、あいつが関わってから私に対してドライになってない?」

「気のせいです」

「……ほんとに?」

「はい。気のせいです」

「…ほんとにほんとに?」

「はい。気のせいですのでさっさと寝る用意をしましょうか」



 そう言って私をベッドから引きずり降ろすみたいに引っ張り、お風呂へと連行される。



「ちょっと、私は主じゃなくても仕えてるんでしょっ? ならもっと優しくしてよ!」

「お嬢様は優しくするとダメになるでしょう。ダメになるのはレオナルド様だけでお願いします」

「ちょっ、それはどういう意味!?」

「さぁさぁお嬢様、湯あみしましょうねー」



 エイミーはまるでわがままな子供をあやすように、でも少し乱暴に私をあっという間に綺麗にさせ、着替えさせると「おやすみなさいませ」と言い部屋を出ていった。





 先程の出来事でなんだか疲れた私はベッドに倒れ込んだ。

「…そういえば明日は生徒会のレクレーションがあったな……なにやるんだろ……」

 明日の午後、生徒会が主催するレクレーションが予定されている。入学して半年。さすがにもう学園生活に慣れたであろうことと、定期的に先輩方の交流も兼ねて開催されると先生が言っていた。

 同時に、ヒロインとのイベントもあるということも思い出した。それがなんなのかどうしても思い出せなくて、もどかしくて、忘れるように目を閉じ、気がついた時には私の意識はブラックアウトしていた─。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さようなら、あなたとはもうお別れです

四季
恋愛
十八の誕生日、親から告げられたアセインという青年と婚約した。 幸せになれると思っていた。 そう夢みていたのだ。 しかし、婚約から三ヶ月ほどが経った頃、異変が起こり始める。

男子から聖女と言われている同級生に彼氏を奪われた。その後、彼氏が・・・

ほったげな
恋愛
私には婚約もしている彼氏がいる。しかし、男子からは聖女と言われ、女子からは嫌われている同級生に彼氏と奪われてしまった。婚約破棄して、彼のことは忘れたのだが、彼氏の友人とばったり会ってしまう。その友人が話す彼氏の近況が衝撃的で……!?

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

君を一生離さない。

しらす
恋愛
最初は君の笑顔が見たかった、ただそれだけだったはずなのに─いつの間にか僕は君に囚われ、君は僕に囚われていた──。 これは僕が君に出会ったときから始まった物語。 小説家になろう様でも投稿しています。 気が向けばリジー目線もあげます。

夫は帰ってこないので、別の人を愛することにしました。

ララ
恋愛
帰らない夫、悲しむ娘。 私の思い描いた幸せはそこにはなかった。 だから私は……

もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!

甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

処理中です...