天使飼い始めました。

冬見

文字の大きさ
上 下
7 / 10

7話 幼馴染の来訪 3

しおりを挟む
俺は、昨日家に帰ったら天使がいたこと、謎の電話がかかってきてその天使を育てろと言われたこと、世界滅亡を阻止しなくてはいけないこと、を琴葉に話した。
意外にも琴葉は茶化すことなく聞いてくれた。
「なるほどねぇ。それは色々と大変だったね」
「信じてくれるのか?」
「だって、ハルくんいつになく真剣に話すんだもん。それに、エルちゃんが天使かどうかは私にはわからないけど、なんか変なことが起きてるってことは確かっぽいしね」
「琴葉・・・・!」
俺のいうことをすんなり受け入れてくれた琴葉に、今度は俺が泣きそうになってしまう。
彼女は立ち上がると、腕をまくった。
「よーし、お姉ちゃん手伝っちゃうぞー!」
気合入ってるな。頼もしい限りだ。
「エルちゃん、でいいんだよね?私は琴葉。ハルくんのお姉ちゃんやってるんだ。よろしくね!」
「勝手に姉をやるな」
琴葉は俺のツッコミを無視してエルに握手の手を差し出すが、エルは俺の背中に隠れてしまった。
「あぅ・・・・」
「あれ、私怖がられてる?」
琴葉は苦笑する。
「あー、人見知りしてるだけだ、きっと」
「・・・・ハルくんには懐いてる」
琴葉は俺の背中に隠れるエルを指差す。俺にだって別に懐いてるわけじゃないと思うが、どうやら納得がいかない様子だった。
「俺も最初は怖がられてたさ。ちゃんと距離を考えて接すれば、徐々に慣れていくんじゃないか?」
「そう、だよね。この世界に来たばっかで、まだ色々不安だもんね・・・・」
琴葉はしんみりした顔をしたかと思うと、いきなりエルに飛びかかって抱きしめた。
「これからはお姉ちゃんが面倒見てあげるからねぇぇ~~!」
「んむむむ・・・・!?苦しいです・・・!」
「距離を考えろって言ったよな!?」
こいつ、一体何を聞いていたんだ。俺は二人を引き離す。
「だってエルちゃん天使みたいに可愛いんだもん!
「天使だからな!正真正銘の!」
「こんな天使みたいな娘が天使なわけないでしょ!」
「おかしなこと言ってるぞお前!」
興奮する琴葉をなだめる。
「エルちゃん~~怖がらないで?優しいお姉ちゃんだよ?すっごい優しいよ?」
優しいをそんなに念押しされると逆に怪しいぞ。
エルは俺の背中に隠れながら、肩越しに返答する。
「・・・・食べ物くれたら懐きます」
「お前もお前でやたら図々しいな」
エルの食に対する執着はなんなんだ一体。天界で断食でもしてたんか。
「じゃあ今度お菓子作ってこよっか!料理はハルくんみたいにできないけど、お菓子は作れるんだ~」
「お菓子・・・・琴葉お姉ちゃんめちゃいい人です・・・・!」
ちょろい。ちょろすぎる。もうお姉ちゃん呼びになってる。まあ確かに、琴葉の作るお菓子は美味しい。
琴葉はエルの急な手のひら返しに感極まったのか、またもやエルに駆け寄り抱きしめた。
「う~~~~、エルちゃんきゃわすぎる・・・・!永遠にお菓子食べさせてあげるからね」
「微妙に怖いこと言うな。あとすぐ抱きしめるのやめろって、エルも困ってるだろ・・・・」
「・・・・悪くない、です」
「えええ!?」
見れば、エルも琴葉の背中にそっと手を回していた。どこか満足げな表情で、琴葉の抱擁を受け入れるエル。なんだこれ・・・・なんだこれ!?混ざるか!?俺は必死に自分の腕を抑えた。
「戯れるのはそこらへんにしといてさ、とにかく服だ!服を買いに行こう。そのために琴葉を呼んだんだよ」
「それはいいけどさ・・・・」
琴葉は名残惜しそうに、エルの体を離す。
「心配だなぁ、エルちゃんとハルくん2人で暮らすわけでしょ。一つ屋根の下で」
「何か言いたげだな」
琴葉は目を見開いて言った。
「それはえっちだよ!!!」
「直球だなおい・・・・」
「こんなワンルームでこんな可愛い子と一緒に暮らすなんて、全方位えっち空間だよ!」
「落ち着け、何言ってるかわからんぞ」
琴葉は息を荒げ、肩を上下させていた。
「確かにエルは可愛いかもしれんが、色気はないだろ。それにお前には見えてないかも知れんが、俺からしたら天使感すごくてちょっと神々しいんだよ!」
やけに白い肌やら銀色の髪やらが、現実離れした羽と光の輪っかによって神々しく仕上がっているのだ。初めてその姿を目にした時、思わず『天使』と呟いてしまうほどに。
「そ、そうなんだ・・・・」
琴葉は少し気圧されていた。
「けどまぁ、男の俺だけじゃ難しい場面も多々あるのは事実。だからお前もちょくちょく来てくれよ。風呂とか入ったことないだろうし、色々面倒見て欲しいんだ」
「ふーん。しょうがないなぁ」
琴葉はわかりやすくにやにやする。普段俺が琴葉に頼ることなんて滅多にないから嬉しいんだろう。
「よし、まずはミッションその1だ!エルの服を調達するぞ!」
「「おー!」」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。

春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。 それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。 にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。

処理中です...