僕たちは正義の味方

八洲博士

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 「なんだ、おまえは・・・・・いや。どうしたのかな、君たち?」
いかにも機嫌が悪そうなおじさんだったけど、私たちの格好を見て急に態度を変えた。
「外は寒いだろう。中に入って火に当たるといい。それで、ここに来たのは
君たちだけなのかい」
「私たちはお母さんと一緒に、天狗山にハイキングに来てたんです。それがいきなり景色が変わって、私たちだけがここにいたんです」
見た目の印象から、助けを求めても多分追い返されると思っていた私は心の中で反省しつつおじさんの評価を上方修正して自分たちの状況を簡単に説明した。勧められるままにベンチにすわるとすぐ目の前の焚き火のおかげで外に比べて断然暖かい。心も体も少しずつ落ち着きを取り戻してきていると実感したタイミングでおじさんが自己紹介を始めた。
「儂の名は武野良夫。職業は神の預言者。と言っても君たちには難しすぎるか。わかりやすく言うと神の使いをやっている」
あがめたてまつるがよいのじゃ、と呪文のような言葉を唱えながら目を細め
顔中にシワをつくってニコリと笑うおじいさんに、私は引いた。
ドン引きだった。
混乱した頭にぽつり、ぽつり、と言葉が浮かんでくる。
『オタク』ちょっと違う。
『キモイ』それはそうだけど。
『中二病』それだ。
たしか、大人になっても考え方が中学二年生のままって意味だっけ。小学六年生の私には中学二年生の考え方が子供っぽいとか言われてもわからないが。
将来の仕事で、男の子の次郎ちゃんがモンスターのハンターになりたいと言ったり女の子の雫ちゃんがプリキ○アになりたいと思うのと一緒だ、多分・・・。
子供の私たちには許される考え方(まだ小学生だよ)、だけど目の前のおじいさんはこの《世界》でたった一人の大人かもしれないのに。
焚き火に当れない、霧で湿った服が背中に、とてもとても冷たく感じた。
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