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1学期編 ~期末試験~

第21話

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 蒼雪はここで何か考えられることはないか、思いついたことを瑞希に聞くことにした。

「今からできるのは連中に賠償や謝罪を求めるよりも問題の作り直しだろうな。まだ提出までも時間はあるが作成者側にモチベーションはあるか?」
「うん、それは大丈夫。けど、それが変な方に走らないか不安、かな…?」
「試験の問題を難しくしすぎるということね?」
「ええ、他のクラス、例えばあなたたちのクラスにその問題が行く可能性があるにもかかわらずいうことよ。」
「そして、そうなると平均点が低くなり結果的に問題作成者組の評価が下がる。」
「そう、それも気を付けないといけないんだ。」

 瑞希と皐月は千春の意見に同意する形で今回の件で試験問題を不適切な難易度にする可能性もあることを告げた。そうなってくると、ここでも不利益を被ってくるのは4組で2組に対してのみやり返すということは難しい。4組は誰かのために怒る人が多いようでなんとかして、2組の鼻を明かしたいと考えてしまったようだ。

「まずは4組が落ち着くのが優先だな。」
「新庄の言う通りだろう。ここで熱くなってもやれることは少なく、また、試験の評価がマイナスになる結果のみしか得られない。そうなると、2組の思うつぼだろう。」
「はい…。」


 蒼雪と諸伏会長に落ち着くように言われて、瑞希と皐月も頭を冷やしていた。

「それに、おそらくここで動じない方が何度か同じ行為をされる可能性もあるが、相手にしていないと思わせることができるだろう。相手にしなければ自分たちの実力を発揮できるはずだ。」
「うん、そうかもしれないね。」
「相手にどうやり返すかばかり考えていては視野が狭まってしまうということね…。冷静さを欠いていたわ。」
「仕方ないわ。それだけのことをされたのだもの。」

 蒼雪の考えは、こんなことでは動じないというクラスのまとまりを見せつけて、いつも通りの力を発揮できれば同じやり方をしてくる可能性は低いというものだ。結果ができるまでは執拗にやってくるかもしれないが、それ以降は手法を変えるかもしれないしターゲットを変えてくるかもしれない。そこは予想が出できないので確約はできなかった。

 瑞希と皐月も頭を冷やして冷静になれたことで、やるべきことは2組への仕返しではなく、今まで通りの勉強だと考えることができた。


「話はまとまったようだな。」
「はい。時間を割いていただきありがとうございました。」
「私たちも冷静でなかったのでこのようなことに巻き込んでしまい、申し訳ありません。」
「この学園の会長を務める身として生徒の相談に乗るのは仕事の一つだ。また何かあれば話を聞こう。そして、こんな手法をもし本当にしてくるのなら用心することだ。証拠が出てくればこちらに提出してくれ。それをもってこちらで話し合いの場を設けて適正な処罰を下すことを確約する。」
「ありがとうございます。」


 話し合いが終わると、会長は鍵を開けて俺たちに気をつけて帰るように促した。王は終始話を聞いているだけで発言はなかったが、何か考えはあったのか蒼雪を含め彼女らもわからなかった。部屋を出る際に会長は蒼雪にも気を付けるように促してきたので素直に返事をしていた。


「では、俺たちは仕事をして帰るからここまでだ。気を付けることだ。」
「ええ、そうさせてもらいます。ありがとうございました。」
「あ、ありがとうございました!」

 蒼雪と瑞希が代表してお礼を述べて4人で帰ることにした。時間も遅くなったのでそこまでの学生は残っていなかったが、念のため、校門を出たところで解散をした。

「今日はありがとうね。こんなことに時間をもらっちゃって。」
「いや、気にしなくていい。俺たちも同じ被害を受ける可能性もあったことだ。」
「そうね。あなたたちにこれ以上の被害が出ないことを願うわ。」
「ありがとう。お互い気を付けましょう。」

 そこで2人、2人に分かれた帰宅をした。蒼雪と千春は自分たちもターゲットにされる可能性もあると思い周囲の警戒をしながら帰宅をした。また、以前とは逆位人目に付く道を選ぶようにした。


 家に帰る途中、食材が少なかったが今から買い物に行って夕飯を作ると時間がいつもより遅くなるので買い物は翌日にすることでこの日はコンビニのもので済ませるということになった。コンビニには何人かの生徒がおり、2組の生徒と思われる3人組もいた。

「ねえ、あれって…。」
「ああ、おそらく2組の連中だ。」
「警戒は必要かしら?」
「いや、ここでは気が付かないふりをしておこう。」

 蒼雪と千春は小声でどうするか手早く意思決定をして買い物を済ませた。幸いなことに絡まれることはなかったが、怪しい話をしていたことだけが察することができた。


「ねえ、先程の会話…。」
「ああ。おそらくな。」



「おい、今度は誰をターゲットにする?」
「そんな直接的に言うなよ、気づかれるだろ?」
「悪い。けど、虎徹さんも面白いこと考えるよな。動揺させ、自滅させて自分たちのポイントを増やす手段を考えるなんて。」
「な!次のステップにももうじき…。」
「しっ!あまり余計なことを言うな。」


 蒼雪たちが近くにいることに気が付いた連中はそこで話をやめてそそくさと店を出ていったのだ。この会話では何か計画をしていることしかつかめなかったが、やはり彼が動き始めたということだけは確かなようだった。蒼雪は既にロックオンされているが、最初に狙ってくるのではなく、じっくりと狩りをしていくようだった。

「今回のターゲットは4組を徹底的に狙うということかしら?」
「もしかしたらな。だが、それが答えとも限らない。情報がない以上俺たちは後手に回るしかない。1つ1つ対処していくしかないだろう。」
「そうね。」

 蒼雪たちも買い物を済ませてからコンビニを出てそのまま帰宅をした。家に着くと、レンジで温めて夕飯を済ませると2人はそれぞれの部屋で問題を作成して風呂上りに進捗状況の報告をしあった。

「どうかしら?」
「…ふむ。………いいんじゃないか? どれも俺が作った問題を基にしているようにも見えるがそれでも調節はしてあるように思える。」
「下手に私が手を加えようと思うと要素を増やしすぎてしまったのよ。どうすればいいのかわからず近くにあった見本を真似てしまったわ。」
「そういうことか。」

 蒼雪は千春に任せた問題を自分のパソコンに取り込み、自分の作成した問題と差し替えた。次に蒼雪が作為した問題を千春が確認をしたが、予習をしていない範囲だったのでうまく評価できないと言っていたが、おそらく問題ないということで数科目の第2案が出来上がった。まだ終わっていない科目もあるが、その科目は翌日には仕上がりそうだった。

「この問題はまた解いてもらうのかしら?」
「その予定だ。」
「問題の問題を教えろとしつこく言ってくる人もいたけれど、その人たちに不公平といわれないかしら?」
「そうならないように君島に文句を言わせるなと言ってある。」
「初めて彼が可哀そうだと思ったわ。」
「俺に押し付けたのだからそれぐらいの苦労をしてもらってもいいだろう。」

 蒼雪はそういうと、パソコンを閉じてこの日の作業は終わりということにした。進捗状況の話し合いも終えたので千春も自室に戻り、蒼雪も自室に戻ってそのまま休むことにした。

 試験問題については終わりそうな目途は立っているので今度は勉強会を開いて彼らの勉強を見ることに着手しないといけないと考えた。おそらく各自で勉強をしているといっても、教えている舞依や響真はどこかで音を上げるだろう。正悟も頑張っているのだろうが如何せん勉強への集中力が低い。詩音もわかろうとしているが、朝のようなこともあるから響真は似た問題に対して繰り返し同じ説明をしているのだろう。

 蒼雪はそんなことを考えていたが、彼らが泣きついてきてからその先を対応しようと思考をやめて眠りについた。
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