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1学期編 ~期末試験~

第12話

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学園に向かい、いつものメンバーと話したりもしていたが、蒼雪はこの日の授業にはほとんど集中できていなかった。授業中に集中力を欠いて眠るということはなかったが、試験問題にはどんなものを出すのがよいのか、そう言ったことを考えていてばかりだった。

 千春と正悟は蒼雪の授業中の様子がいつもと違って集中していないように見えたので、減点されているのではないかとヒヤヒヤしていた。評価が下がったとしても自己責任としか言えないが、そうさせてしまっている一旦は自分たちのもあるかもしれないと思っているので、減点されてなければいいと彼らは思っていた。


 放課後になると、蒼雪はすぐに帰ろうとした。

「ちょっと待ってくれよ、蒼。一緒に帰ろ―ぜ?」
「正悟か。いいぞ。だがまだ仮の問題の作成を終えていないからな。明日の分を間に合わせようと思っているからそんなにかまってやれないぞ?」
「いいって、いいって。けど、問題を作り終えたら少しは俺に教えてくれ。白崎に教えてもらうのも助かるけど、ちょっと難しいってことがあるからよ。」
「そうなのか? まぁ千春の性格上頑張ろうとしえいるのはわかるから、わかり易い説明をするということ自体が課題のようだな。」
「かもな!」

 蒼雪は正悟と一緒に帰路についた。千春と舞依は夕飯などの食料品を買い込むために先に帰っていた。また、明日土曜日に問題案を解いてもらうということを考えると、昼食を10人分程度は用意しないといけないということもあり、冷蔵庫の備蓄では心許ないので買い込むのだ。

 
「じゃあな! 問題を作るのまかせっきりにしているのは申し訳ないけど、俺も自分の勉強をしないとヤバいから。」
「気にしなくていい。とりあえずお前は平均点を超えること目標にしろ。平均点ギリギリという位ではポイントもギリギリになるだろう?」
「まぁな…。けど、評価を上げるために頑張るよ。また明日。」


 正悟はそう言って自分の家へと帰っていった。蒼雪も正悟と別れ家に入った。


 蒼雪は帰宅後にやるべきことを手早く済ませると、自室に籠り翌日のための試験問題を作成することに着手した。作成途中で1階から千春が帰ってきた音が聞こえたので、そこで休憩の意味も込めてリビングに降りていった。


「おかえり。すまなかったな、買い物まで任せてしまって。」
「あら、ただいま。これぐらいかまわないわ。それに今日は舞依も一緒だったもの。」
「そうか。仕舞うのは俺も手伝うよ。」
「ありがとう。」

 蒼雪と千春は手分けして買ってきたものを冷蔵庫に入れたりしていった。

「調子はどう?」
「まぁ問題はない…かな。思ったよりペースはいい。」
「それならよかったわ。」
「千春の方こそどうだ?」
「私はまだまだね…。今回の試験範囲で覚えることも多いし、まだやっていない範囲も含めるととてもじゃないけれど時間を足りなく感じているわ。」
「そうか…。確かに範囲は広いからな。それでいて試験の問題が学生目線から作られたりもしているから余計に予想もし辛いな。」
「そうなのよね…。他のクラスはどういった人が作りそうかしら?」

 千春は一通り仕舞い終わったのでソファに腰掛けながら聞いてきた。蒼雪はキッチンで飲み物を用意しながらそれに答えた。

「少なくとも4組は瑞希たちだろうから基本的には王道を行くだろう。そこに皐月がどういった手を加えて来るか、というところだろう。1組はおそらく彼女だろう。」
「有栖院さんね。」
「おそらくな。彼女があのクラスのトップである以上彼女方が手掛ける可能性が高い。もしかしたら、彼女が作るのを面倒に思って他の人に任せる可能性もあるがな。」
「その可能性も否定はしないわ。まぁその人のことは直接に知っているわけではないから予測も難しいわね。」
「そうだな。だが、それは他のクラスにも言える。」
「そうね、私たちの欠点ともいえるところかしら?」

 蒼雪の淹れてくれた紅茶を飲みながら千春はそう言った。蒼雪たちは自分たちのグループともいえる近くに居る人のことは知ろうとし、助け合っている。しかし、彼ら以外の、他のクラスや親しいわけでもない人たちのことは知ろうとするわけでもなければ、関与しようともしない。
 
 人としては普通のことかもしれないが、学園生活をしていくうえで情報を入手できない言う点では問題点ともいえる。自分のクラスの限られた範囲のことしか知れないのではいずれ必要な情報を入手するのに遅れて後手に回って手遅れになるかもしれない。とりわけこの学園の制度は特殊なところが多いのでその可能性は十分あり得るだろう。


「確かにもう少し周囲に目を向けるべきなのだろうな…。」
「…今回は目を瞑るしかないわね。」
「そうだな。」
「それじゃあ、私は夕飯を作り始めるけれど、あなたは問題作成の続きかしら?」
「そうだな。これで少しは休憩できたわけだから部屋に戻るよ。夕飯の時間頃には降りてくる。」
「わかったわ。」


 千春は紅茶を飲み終えると、キッチンで夕飯の用意を始めた。蒼雪は今晩のメニューがシンプルなものが多いのでそこまで時間はかからなさそうに見えた。

 蒼雪はまだコーヒーは飲みかけだったのでそれを持ったまま部屋に戻った。数学、英語、国語、そして、化学の問題は作り終えることができていてので、残りの3科目の教科書と問題集を読み比べていた。
 
 しばらくして生物の重要になりそうなところを絞り込むことができたので、それをリストアップしていくと夕飯の時間が近づいていることに気が付いた。


(問題自体を作るのは夕飯の後にするか…。それにしても、やはり2日で7科目分も問題を作るというのは無理があったかもしれないな…。)

 蒼雪はため息をついて部屋を出た。


「お疲れさま。あと10分くらいでできそうよ。」
「ああ。テーブルの用意をしておく。」

 蒼雪はリビングに行くと、テーブルの用意を手伝った。それから間もなく千春は夕飯を作り終えた。

「「いただきます。」」


 蒼雪と千春は夕飯をゆっくりと食べながらこの時間の間は試験のことを忘れるようにした。2人とも試験のことばかり考えていて疲れてしまったので息抜きをしたかったのだ。今回の試験は範囲も広く、問題の作成や予想もしていかないといけない。各クラスでの情報戦も繰り広げられつつあるので休む暇がないともいえた。そんな中で心を落ち着けられるのはこういったリラックスできる時間しかないのだ。



 夕食を終えると結局2人は試験の話に戻った。

「今回の試験範囲は広いから私も教えてもらいたいところがあるのだけれど。」
「明日以降なら時間も作れるからその時からでいいか?」
「ええ、もちろんよ。けれど、あなた自身は本当にいいのかしら?」
「俺の勉強の心配なら問題ない。1学期の授業範囲は把握しているからその範囲までなら問題なくできる。そもそも高校程度の内容なら理解は済んでいる。試験の時はその範囲がどこまででどこを重点的に覚えていなければならないのかということを意識して復習をしているだけだからな。」

 蒼雪の発言に千春はあきれたようにして、ため息をついてから

「あなたのそう言うところは羨ましいわね。そのスペックの高さにも驚かされるわ。」
「そこまでスペックが高いとは思わないが…。」
「いいえ。十分すごいわよ?普通の高校1年生が高校の学習範囲をすべて理解しているなんてありえないわよ?」
「む…。」
「あなたらしいわね。まぁいいわ。それならあなたに甘えきりなのはどうかと思うけれど、あなたの足を引っ張らないように私も頑張るわ。」
「できることの協力はするから千春も頑張ってくれ。」


 蒼雪は試験問題は明日までには間に合うだろうと余裕ができたので片付けの手伝い派をしようとしたが、徹夜されて翌日の試験問題を解いてもらうこと、および勉強会で睡眠不足で集中力を切らされては困るということでさっさと問題を作り終えるように言われて仕方ないと思いながら自室に戻った。
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