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第14話 黒の女神のファッションショー

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「電車来たけど、落ち着いた?」
「はい、……せっかくの買い物を台無しにしてすいません」

澪は、少し、俯きながら言った

そりゃあそうだよな、自分が誘ったのに、自分のせいで、時間を無駄にしたんだもんな
後ろめたいんだろう

澪の心の中はなんとなく察する事ができた

「今回の事は仕方ない事だよ、気を取り直して、とりあえず電車に乗ろう?」

おれは微笑みながら優しい声色で言った
少しでも澪の不安要素を取り除きたいから

「そうですね」

そして、澪はもう一回、おれの右腕に抱きついた

そして、電車の中

澪は少しだけ震えていた

やっぱる、短時間では、完璧に安心させるのは出来なかったか

「澪、おれがついてるから」
「……はい」

澪はおれの腕を強く掴んだ

しかし、ここは電車の中
話し声が聞こえない方が珍しい

『絶対こっちの方が』
『にわかかよ』
「はぁ、っ、はぁ」

おれの隣には苦しそうな嫁がいる

澪も、関係ない会話ってのは理解しているんだろう
でも、心の奥底に根づいたトラウマは、些細な事で発動する

「澪」

おれは、安心させるために、澪の耳元で呼んだ

澪はおれの方を見たが、苦しそうだ
その顔を見たら、おれも少しだけ胸が痛んできた。
しかし、ここで、嫁を救わないと、夫として最悪だろう

おれは、澪を自分の胸に抱き寄せ、髪を撫でた
おれの手は、髪の毛によって止まることは無く、下に行ってはまた上から、繰り返し撫でた
優しく撫でた
安心させるために撫でた

「蒼君」

澪は自分の顔を擦り付けている

その姿に可愛いと思ったが、状況が状況
そんな事を思っている暇はない

1、2分、おれはずっと澪を撫で続け、澪も顔をなすり続けた
撫で続けたお陰でか、澪は、電車内での話し声には聞く耳も立たなくなった

「次は、鹿児島中央、鹿児島中央――」
「澪」
「なんですかぁ?」

うん、寝ちゃってた

普通に40kgぐらいだろうか?
女子に体重の話は良くない事ぐらい、全国の男子は知っているだろう、でもね、一駅ずっと、40kgが胸に寄りかかってるんだよ?こんなの、一種の筋トレじゃん

おれは、早く、重りから開放されたいがため、まだ、駅自体には着いてないが、起こした

「まだついてないですよぉ?」
「もう着く」
「はぁい」

澪は、軽く伸び、1つ大きなあくびをした
正直、開放されたことが、めちゃくちゃ嬉しい

そして、おれらは、中央駅、を抜け、ア◯ューに入った

「最初は服?」
「はい、服屋に行きます」

そして、服屋のある、3階に向かった

「アクセサリーだったら、奢るよ」
「本当ですか?」

澪の身体能力からは考えられない速さで反転し、目を煌めかせて、おれを見つめた

いつも、澪にはお世話になってるんだし、こんぐらいはしてあげないとな

「うん、いいよ」
「やったぁー」

15歳とは考えられない喜び方だが、その姿が、なんとも可愛らしい
こんな姿をみれて、目の保養になった。
練習試合、頑張ってよかったな

◆◆◆

やっぱり、女子って、ファッションに時間かけるよな

澪は、少し意気込んでいて、試着室へ次々と服を持ち込んでいた。普段の彼女からは想像もつかないくらいで、なんだか楽しそうに見えた。

どこが楽しいのか?男のおれには到底理解できないな

そんなことを思いながら、澪のファッションショーを見ていた

澪が一着目の服を着て試着室から出てくると、それは普段見慣れない可愛らしいブラウスにふんわりとしたスカートの組み合わせだった。白とピンクの優しい色合いで、どこか新鮮な感じがする。おれが無意識に見入っていると、澪は少し照れくさそうに目を伏せた。

「…どうですか、蒼君?」

その表情がやけに可愛くて、つい

「可愛らしくて似合ってるよ」

素直に感想を口にしてしまった。すると、澪は目を見開いて、顔を赤らめながら少しだけうつむいた。

「そ、そうですか…ありがとうございます」

それから、また何着か試着して出てくるたびに、おれの感想を求めてくれる。次は少し落ち着いたデザインのワンピースで、肩のラインがきれいに見えるシンプルな黒のデザインだ。普段とはまた違った大人っぽい雰囲気があって、思わず見惚れてしまった。

「すごく大人っぽい感じで、いつもと違う感じが出てて、似合ってるよ」

そう言うと、澪は顔を少し横に向けて、目をそらしながら頬を染めているのがわかる。

「蒼君、そういうこと言うの、ちょっと恥ずかしいです…」

なんて呟いて、そっと視線をおれに戻した。

その後も澪は何度も試着室と店内を行ったり来たりして、そのたびに新しい服を着ては出てくる。普段の清楚な服も、少しカジュアルな格好も、なんでも似合う彼女を見ていると、ついどの服も「似合ってる」と感想を言わずにはいられなかった。

最後に、澪が少し意を決したように試着室から現れた。鮮やかなブルーのワンピースで、彼女の淡い瞳や柔らかな雰囲気にぴったりだった。

「…これはどうでしょうか?」

なんて控えめに聞いてくるけど、その仕草にすら見惚れてしまって

「本当に全部似合うよ、どれもよく似合ってる」

と、もう正直に言うしかなかった。

澪の顔には、少し、不満の表情が見えた

「蒼君…その、これは、自信があるので…もっと詳しく感想がほしい…なんて」
「あー、ごめん、くわしく言うよ」

そして、も一回澪を眺めた

「澪の淡い蒼の瞳と、その、綺麗な黒髪とマッチしていて、今日着た服の中で、1番似合ってると思う」
「……じゃあ、今日はこれを買います」
「じゃあ、後はアクセサリーだね」
「はい」

澪は軽い足取りでアクセサリー売り場に向かった
女子からしたら、とっても楽しいのだろう
おれからしても、澪のファッションショーを見れたおかげで英気を養えたので、今日来るのは正解だったと思う



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