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第5話 黒の女神は運が良い
しおりを挟む「蒼君は私の物、蒼君は私の物、蒼君の嫁わ私だけだ絶対に渡さない」
私は1人、小声でそう呟いた
もっとアタックしないと……でも恥ずかしぃ
自分のことは自分が1番理解しているつもりです、私は絶好のアタックチャンスを、恥ずかしいという感情に邪魔され、そのチャンスを無駄にすると思います
でも、アタックしないと、許嫁の関係も崩れるかもしれないし――
私は周りが見えなくなるほど熟考した
しかし、タイミングが悪かったです
「キャっ」
「大丈夫かい嬢ちゃん」
私は知らない大人の足につまずき、転んでしまいました
右肘にゲガを負ったものの、軽い怪我だったのが不幸中の幸いです
「へぇ」
「っ!」
私は咄嗟にスカートを押さえました
理由は簡単です、前の男性に見られたと思うから
恥ずかしいよぉ、まだ蒼君にも見られた事も、見せた事もないのにぃ、私の初めてがこんな下品な男性に取られるなんて
私の目尻には涙が少し浮かんでいます
「どうしたの」
白々しいですね
どうせ女子高生のパンツが見れて興奮している癖に
「な、何でもない…です…」
「そう?てか、怪我してない?」
「大丈夫…です」
「嘘はいいって、綺麗な白いセーラー服が赤に染まってるけど」
「は、離してください、何ともありませんから」
私は男性に腕を握られました
もしこれが蒼君やこの人のように興奮しないひとだったら、流石に人見知りな私でも感謝してそのまま立ち上がるでしょう
ですが、相手が相手です、腕を振り払うのは全国の女子がするでしょう
「嫌がらなくていいって、絆創膏持ってくるからさ」
「ちょ」
まずい、腕を見られる
私は咄嗟に抑えようとしましたが、脳裏に嫌な記憶が出て来ました
『キッショい腕だなぁ』
「押さえずに見せてよ……は?」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
助けて、なんて大声で言えたら一瞬で解決したんだろうけど、私はその4文字を大声で発することができなかった
嫌だ
嫌だ
嫌だ
嫌だ
嫌だ
思い出したくなかったのに…
私は、一生思い出したくない記憶がフラッシュバックしてきました
◆◆◆
『こいつの腕、まじで気持ち悪いよな』
気持ち悪くなんかない
『それな、見てるこっちが吐き気するよね』
貴方達がしたんじゃん
『でもそれ、私達がしたから自業自得なんだよね』
『確かにな』
『『『『ハハハ』』』』
だったらやめてよぉ
私を虐めないで
『にしても、先生達もバカだよな』
『それな、こんな傷をただの転んでできた傷って理解するところね』
『あの程度の頭でいいんだったら、俺でも教員免許取れるんじゃね』
『確かにな』
『……あ、そうそう、この学校に、お前の味方は誰もいないから、安心して私達にいじめられてね』
『そんな……』
私の希望を打ち砕くには、大きすぎる言葉でした
私の味方はいないの?私の生きる意味は何なの?、蒼君が言ってたことはもしかして嘘だったの?
◆◆◆
私は、男性が、腕の傷に目を奪われる隙になんとか腕を引き離すことに成功し、逃げ出しました。
「待てってば」
どうしよう、とりあえず逃げ出しことには成功したけど、追いつかれるのは時間の問題かな……だったら
私はスマホで110番に電話しスピーカーで話を開始しました
「事故ですか?事件です…」
「おい、いい加減止まれよ」
よし、このまま行けば、向こうが勝手になにかしてくれるはず
後は時間を稼ぐだけ
「はぁ、はぁはぁ、っあ、はぁはぁ」
「遅いんだよ」
「え?」
振り返ると、私の肩に男性の腕がありました
「俺達を怒らせた罪はでかいぞ、ついてこい」
「イヤ!離して!」
「無理に決まってるだろ」
私は精一杯、暴れました。
しかし、力の差は歴然、たとえ、どんなに叩いたりしても、男性はその手を離すことはありませんでした
蒼君、助けてくださいよ
もう終わった、私はそう思いました。
しかし、神様は私に味方してくれました
「そこの男、女子から離れなさーい」
「嘘だろ」
電話して数分――警察の登場で、立場が逆転しました。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
「はい、少し怪我しただけです」
「そうかいそうかい」
似ている言葉でも、警察が言うと、何か、安心感が違うな
私は、警察方が家まで送ると言ったので、お言葉に甘えて、家まで送ってもらいました
「ありがとうございました」
「いいよー、当然のことしただけだから」
「嬢ちゃん、今度からしっかり気をつけるんだよ」
「はい」
「嬢ちゃんは可愛いから、特にだよ」
「はは、私は、別に可愛くないですよ」
「そうかそうか、そんじゃ、もう電話することが無いように」
そして、警察さん達はパトカーで走り去ってしまいました。
今日は、蒼君の家に行くのはやめようかな、やっぱりさっきのことがあったし
「ただいまぁー」
「あれ、澪、蒼君のところに行かなくていいの?」
「うん、今日、蒼君の家には行かなよ」
やっぱり、疑われるよね
ほぼ、毎日、蒼君の家に行って、帰ってくるのは夜だもんね
「じゃぁ、部屋で勉強してくるから、夜ご飯になったら教えてね」
「はいはーい」
そこから私は勉強に集中し、お母さんの夜ご飯ができたので、1階に降りるついでに、スマホを見ました。
そこには、蒼君からの不在着信が画面を埋め尽くしていました
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