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第3話 朝練

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ピピ、ピピ、ピピ

「ん……朝か」

おれは普段より5倍近く重い瞳を開け、適当にご飯を食べ、家を出た。

澪が、転校初期の頃は一緒に行きたいなどほざいていたが、あの美貌だ――もし、おれと一緒に登校したならば、変に注目され、人見知りが発動するだろう
それはそれでダルい
だから、一緒に登下校をすることは滅多にない

「よ」
「よ」

おれは、大体、康太郎と一緒に電車で登校し、朝練に一緒に向かう


「今週末、練習試合だな」
「そうだっけ?」
「おいおい、忘れたのか」
「結構ガチで忘れてた」

監督が確か言っていたような記憶が脳の奥底に埋まっていた

練習試合か……どうせあんまりプレイタイムはもらえないだろうなぁ…とりあえず、ミスはしないようにしよう


おれ達が通う、桜島高校は鹿児島中央駅から、徒歩10分のところにあり、近くにコンビニやスーパーがあり、よく高校生が行きそうなファストフード店も揃っており、立地的には最高だ

7月20日
もうすぐ夏休み――この言葉のお陰で、なんとか学校に行けている、電車に20分揺られ鹿児島中央に着き、そこから10分歩いき、おれらが通う、高校桜島高校に着いた

「じゃあ、リバウンドよろしく」
「はいはい」

おれが入っている部活動、それは、バスケ部だ
バスケ部って聞くと、陽キャのイメージが出てくるが、自分でも言うのはあれだけど……陽キャでもなく、陰キャでもない、そうおれは自負している
実際、おれはアニメ、ゲームも好きだ

「お疲れぇ」
「「お疲れ様です」」

桜島高校の男子バスケットボール部には、先輩にあったら、絶対、お疲れ様です、そう言わないと殺される決まりがある

祐介ゆうすけさん、いつも、朝練1番に来ているよな」
「それな、家と近いとは言え、いつも、一番最初に来るって凄いことだと思う、おれだったら、最後ら辺に来ると思う」
「はは、確かに」
「それと、新キャプテンとしての意地?みたいなのもあるんじゃない」
「それもあり得るな」

伊東いとう祐介ゆうすけ
今の3年生達が抜け、桜島高校男子バスケットボール部の新キャプテンになった
この人は勝負どころでの強さを評価され、キャプテンに任命されたんだと思う

おれは、康太郎と適当に雑談をしながら、シューティングをし、徐々に他の部員も来ていた

「今週末…24日には、3年生が引退してから初の練習試合だから、ミスする覚悟で、各々、色々試してみましょう」
「「「「「はい!」」」」」」
「そうそう、今日は、ランだから」
「まじか」
「まじ」

副キャプテンの島津しまず宗汰そうた
身長190センチという、圧倒的な高さで活躍し、その巨体からは、想像もつかない足の速さでマッチアップする他校の巨人達を置き去りにすることもよくある

「だから、部活はじめは、正門集合で」

全国のスポーツマンにとって、簡単に致命傷を与えれる言葉、ラン、これを聞いて気持ちがどん底にならないほうがおかしいと思う
まぁ、強くなるには必要なことなんだけどさぁ

「最近はランメニューのお陰で体力も着いてきたと思うから、前より速く走るように…じゃあ、今日も1日居眠りせずすごしましょう」
「「「「「はい!」」」」」

居眠りはしないと思うけど……ランかぁー

おれは憂鬱な気分になりながら自分の教室に入った

「あ、蒼」
「あー、どうせ宿題だろ?」
「流石、相棒、わかってんじゃん」
「誰が相棒だ」

おれに朝から相棒っと言っているこいつは川上かわかみ久則ひさのり
相棒とか、勝手に言ってるけど、実際中学から同じバスケ部として一緒に戦って来たし、自分でも言うのはあれだけど、こいつとおれの連携プレイで窮地を救った事もあったから、相棒って言われるのも仕方ないのかもしれない

「てか、今日の制服、なんかキモいね」
「おっとぉ?それは聞き捨てならないのだよ、蒼君、おれのファッションセンスを侮辱しているのかい?」
「侮辱はしてないさ」

今日の久則の制服は、普段の真っ白のよくある制服と違い、少し青っぽい白色だった

「多分だけど、うちの高校だけだよな」
「オリジナル制服?」
「そう」

桜島高校の校訓は独創性
この校訓の意味を簡単に言えば、オリジナルを大切にしよう、ということ
だから、制服も、基本的な形は同じだが、色を自由に変えられるし、袖の長さも自由に変えられる
その上、桜島高校は独創性を大切にしているので、校則がほぼ無い

「…話は変わるけど、今日の部活って何すんの?」
「ラン」
「ははっ…そんな下手な冗談はやめろよ」

久則は引きっつた笑みを浮かべていたので、おれはトドメをさし、久則を絶望の表情に塗り替えしてあげた

「まじでラン」
「終わったぁ」

おれと久則が宿題を写しながら喋っていると、生徒たちの話しを遮るように教室のドアが勢いよく開いた
おれの知っている限り、こんな勢いでドアをぶち開ける人は1人だけしか知らない、てか、世界に1人しかいないと思う

「おっはよう、皆!武ちゃんの降臨だぞー」

武田たけだ陽斗はると

おれのクラス1年4組の担任であり、数学の先生である
最初は、こんな先生から数学を習うのかぁっと正直、評価はマイナスからのスタートだったが、いざ授業が始まると、速い、おもろい、わかりやすい
という、高校生にとって、夢に出てくるような先生だった
唯一の欠点と言えば、この明るさだった

「早いって」
「それな、いつもならもうちょい遅いと思うんだけど…とりあえず、早く写し終われよ」
「はいはい」

久則は急いで、自分のクラスに戻るため、先生にバレないよう、後ろのドアから教室を出た。

いい加減、家でやってこればいいのに

そんなことを思いながら、頬杖を付き、桜島をぼんやりと眺めていた。

今日も桜島は噴火してるね、方角は、国分とかかな









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