婚約者を奪われて前世の記憶を思い出したので色々と何か企みます

まや

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Part1 第一章

第九話 町に吸血鬼が来た理由

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 私はノアに紅茶をいれて話を続けた。

「あって間もない男によくそんな事を言えるな。馬鹿なのか」

 確かに私は突拍子も無いことを言ってしまった。そこは謝らないとならない。
 それに私だって案がなくてこんな事を言ったのではない。破滅を回避するためだ。

 本来、このノアは主人公のエレナに惚れてしまう。お人好し過ぎる性格に惹かれていつの間にか恋に落ちる設定だ。
 だがエレナには王子と言う婚約者がいる。それに自分は吸血鬼だ。その気持ちに抑えが効かなくなり暴走してしまう。そしてエレナはノアを殺してしまうーー。
 最初のルートはそうだ。なぜ最初かと言うと二回ルートを回ることによって解禁される面倒な所があるからだ。二回目のルートによってノアはエレナによって暴走が止まり結ばれる運命ーー。

 だがエレナは酷すぎるではないだろうか。私から婚約者を奪っておきながらノアと結ばれるなど、レオナルドの立場が可哀想だ。
 だからノアには私に惚れてもらい破滅を防いで貰おうと思った。

 だが惚れてもらおうと思って惚れられる訳でもない。ならせめて私が宣言して意識してもらってそこをつくしかない。
 それに私はレオナルドの件で失敗している。正直、上手くいく気がしない。

「目的は何だ」

「目的はノアが私に恋に落ちてもらう。ただそれだけですよ」

「信用ならん。俺はどこかに行くぞ」

 ノアは席を立ち上がり玄関へ向かった。だがこのまま帰らせるわけにはいかない。

「ドアが開かない。何か仕掛けでもしたのか」

「小細工をしただけですよ。ですがノアはドアを壊して出るでしょうね」

「流石に新居に対してそんな不粋なことはしない」

「意外と…優しいのですね。もっと冷酷な吸血鬼かと思いました」

「あのな、俺をなんだと思っている。それに…アメリアと言ったか? お前は婚約者に振られて血迷っているだけだろう」

 確かにそうかもしれない。だが私が生き残るにはこれしかない。
 それに私が思っている疑問を問いかけてみた。

「私は確かに血迷っているだけかもしれません。ですがこの事は間に受けてもらいたいです。それにノア、貴方はなぜここに降りてきたのですか」

「買い物だ」

 ノアは吸血鬼だ。ただの買い物にわざわざ降りてくるわけがない。それに吸血鬼は太陽が苦手。尚更、日中に買い物に行くわけがない。ならわざわざ買い物に来る理由はただ一つーー。

「人間の吸血でもしに来たのですか。わざわざ吸血鬼が日に当たる時間に降りてくるとは思えません」

「……アメリア。貴様はただの馬鹿では無いみたいだな。そうだ。吸血をしに来た。これは勿論お互いが承諾した吸血だ。でないと人間が文句を言ってくる」

 この町には吸血鬼に吸血してもいいと言う人間がいるという訳か。ノアはお金を払って吸血でもしているのだろうか。ここら辺に住んでいる人達は少しお金に困っている人が多い。
 なら吸血鬼に吸血されてもいいからお金をくれと言う人が数人いても可笑しくはないだろう。

 それと私はこれからの事を質問してみた。この事を聞くためにノアを引き止めたのだ。

「ノアはネルソン王国に行く予定はありますか」

 ゲームではネルソン王国に行く事によって主人公エレナに恋に落ちる。だからネルソン王国に行くか聞かなければならない。
 この事によってエレナの攻略状況を確かめる。それが私の一番の目的だ。

「特にない。わざわざ住んでいるところから遠い場所き行く予定なんてない。何故聞く」

「……いいえ。少々気になっただけですわ。私の故郷がネルソン王国ですので」

 ノアがネルソン王国に行かないーー。それは今までの人生の中で一番嬉しかったことでもある。要はエレナはまだ攻略出来ていないキャラがいるという訳だ。
 でもだからと言って油断は出来ない。それにノアに私に恋に落ちてもらうと言ってしまった。その責任は最後まで取らないといけない。保険は大事だ。私に惚れてもらいネルソン王国に行ってエレナに惚れてもらうのは阻止しなければ。

「そうか。ではもう用事は無いだろう。俺は帰らせてもらう」

「ノア、また会いましょうね」

「断る」

 バタンとドアが閉まる音が聞こえた。

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