恋の微熱に溺れて…

和泉 花奈

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12度:初めてのクリスマス

47話

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「後でケーキも食べましょうね」

「そうだね。あとで食べようね」

「さて次は何を食べましょうか…?」

それぞれ食べたい料理を取り、好きなだけ食べた。
美味しいものを食べて満足したので、次はいよいよ…。

「お待たせしました、ケーキを用意しました」

待望のケーキを食べられると思うだけで、口の中は涎で溢れ返っている。早くケーキに食らいつきたい。

「それじゃいただきましょう。いただきます」

「いただきます…」

フォークで一口サイズにケーキを切る。そのまま口元へと運んでいき、口の中に放り込む。
口の中に含んだ瞬間、一瞬でケーキの美味しさの虜になった。
ちなみにケーキは苺のショートケーキ。甘過ぎない生クリームで。スポンジもふんわりしていて。しっとりしている。

「…美味しい。こんなに美味しいケーキを食べたのは初めて」

大袈裟な表現かもしれないが、私にはそれぐらい美味しいと思った。
美味しいものを食べて感動するとはこういうことなのかもしれない。

「俺もここのケーキは初めて食べたんですけど、めちゃくちゃ美味しいですね」

ってきり食べたことがあるのだとばかり思っていた。慧くん家の最寄り駅の近くにあるケーキ屋さんだから。

「そうなの?慧くんは食べたことがあるのかと思ってたよ」

「ずっと気になってたんです。いつも通る道にあるケーキ屋さんだったので。ただなかなかケーキを食べる機会がなくて。それこそ誕生日とか特別な時じゃないと食べる機会ってないじゃないですか。だからクリスマスというこの機会に是非食べてみたいなと思い、今回思いきって注文してみました」

慧くんの言う通り、特別な時じゃないとケーキは滅多に食べる機会はない。
だからこそ、特別な時には特別なものを食べたい。その特別なものを選ぶことが難しいが…。
難しい中で自分にとっての特別を見つけられた時、幸福感に満ち溢れる。
その特別を分けてもらえたことが嬉しかった。一緒に幸福感を味わえたから。

「そうだったんだね。一緒に食べることができて嬉しい。ありがとう」

「いえいえ。こちらこそです。また食べましょうね。違うケーキも食べてみたいので」

確かに他のケーキも気になるので食べてみたい。近所にあるので、お休みの日のおやつタイムに食べてみるのもいいかもしれない。

「そうだね。違うケーキも食べてみたいからまた食べようね」

「はい!是非。京香さんと一緒に食べたいです」

どんなケーキがあるのか想像するだけで、今後の楽しみが増えた。
それだけで嬉しかった。これからも慧くんと一緒に楽しみが増えたら良いなと思った。

「私も慧くんと食べたい。一緒に食べるともっと美味しく感じる」

ケーキだけじゃなく、他にも色んなものを一緒に食べたり、色んなことを共に過ごしたい。
慧くんと一緒にしてみたいことで溢れている。慧くんもそうだといいな。

「…京香さん、ごめんなさい。そんなふうに言われると俺…、」

気づかないうちに変なことを言ってしまったのだろうか。もしかして不快な思いをさせてしまったとか?
自覚がないので余計に焦る。もし不快な思いをさせてしまっているのだとしたら謝りたい。

「ごめんね。変なこと言っちゃったかな?」

「いえ、そんなことはないです。誤解させてしまってすみません。京香さんは他意がないことは分かっているんですけど、京香さんの言い方がエロく聞こえてしまって。ちょっとそういう気分になってしまって…」

意図しない形で言葉が伝わってしまったみたいだ。それを知った途端、急に恥ずかしさが込み上げてきた。

「そう…だったんだ。ごめんね。変な感じにしちゃって…」

「いえ。こちらこそすみません。心のうちに秘めておくべきだったのに、つい口走ってしまって…」

一気に雰囲気が変わった。料理を楽しむ空気じゃない。これはもう恋人としての甘い時間を楽しみたい気持ちに切り替わった。

「だ、大丈夫だよ。私もそういう気分になっちゃった…」

ずっと期待していた。今日という日を一緒に過ごすことが決まった時点で。
そのために色々と準備してきた。恋人としての甘い時間を盛り上げるために…。
寧ろ今からが本番だ。ずっと楽しみにしていた時間がいよいよ始まる。

「俺、今日は我慢できないですよ?いつも以上に京香さんを求めちゃうと思いますけど…」

いつも以上に…。それって長い夜になるってことかな?
想像しただけで心臓の高鳴りが加速した。だって今から初めて聖なる夜という素敵な時間を過ごすから。
あれやこれやと想像ばかりが膨らむ。それだけで私の心の中は忙しかった。

「いいよ。私も慧くんが欲しい。慧くんとたくさん求め合いたい…」

大胆なことを口走ったなと思う。いつもの自分なら絶対にできない。
でも今日は違う。聖なる夜だからこそ、心も解放されて大胆になれたのかもしれない。

「…京香さん。キスしてもいいですか?」

確認なんてしなくても、慧くんならキスしても構わない。
だけどちゃんと確認してくれる彼の気遣いと優しさが心に染み渡り、心も身体も解されていく。

「いいよ。キスして…」

お互いの顔がゆっくりと近づき、優しく唇が触れ合う。
そして次第にキスが深くなっていき、どんどんキスに夢中になっていく。

「…慧くん」

身体が熱い。止められない欲望に身体が渇望している。

「そんな潤んだ瞳で見つめられると、もっと京香さんをいじめたくなっちゃいます」

どんなふうにいじめてくれるのか、期待してしまっている自分がいる。
彼以外の人にいじめられても嬉しくなんかない。彼だからこそ嬉しいのであった。

「もっといじめてくれていいよ。いつもみたいに慧くんの優しい手で触って…」

慧くんの手を掴み、自分の身体に触れさせる。触れてもいいよと身体でも伝えるために。

「こうですか?合ってますか?」

彼は掴んだ私の手を優しく掴み、もう片方の手で私の身体に優しく触れた。
まずは髪に触れ、そのまま手はどんどん下へと降りていき、私の触れて欲しいところに触れてくれた。
触れられた瞬間、一気に身体が熱を帯びた。好きな人に触れられたら心も身体も一気に反応してしまう。

「あ、合ってます…」

「それじゃもっと深いところまで触れてもいいですか?」

ダメなんてことはない。慧くんならどこだって触ってもらって構わない。

「もっと触って欲しいからいいよ。私も触ってもいい?」

我慢できなかった。私も彼に触れてみたくなった。

「いいですよ。触れてください」

ゆっくり手を伸ばし、彼の髪に触れた。
そのまま手をどんどん下へ降ろしていき、顔、肩、腕、足…に触れた。

「京香さんに触ってもらえて嬉しいです。同時にもっと触って欲しいって思ってます」

彼の目が一気に雄の目に変わった。これはスイッチが入った合図だ。
彼のスイッチが入った目が好きだ。もっとこの目を見たいと思ってしまうくらいに…。

「私も同じ気持ちだよ。もっと慧くんと触れ合っていたいって思うもん」

触れてほしいという気持ちと同時に、触れたいという気持ちも溢れる。
好きだからこそ溢れる想いが止まらない。だからこそもっと…欲しくなってしまう。

「好きな人が相手なら尚更です。どんどん欲張りになって、好きな人の全てを欲しいと思ってしまう…」

恋愛感情が伴うと人は冷静ではいられなくなり、感情に左右されてしまう。
こんなにも心が揺さぶられることなんてない。それぐらい恋愛感情は人を変えてしまう恐ろしさもある。
でも同時に誰かに愛し愛される幸せを知ることができる。心も身体もどちらでも感じることができるので本当に幸せだ。

「だから俺に京香さんの全てをください。とても大事にするので…」

もう充分すぎるくらい大事にされている。それなのにこれ以上大事にされたら、慧くんなしでは生きていけなくなりそうだ。

「慧くんにあげる。その代わり私も慧くんを大事にする」

お互いに見つめ合い、再びキスをした。そのまま服を脱がされ、下着だけにされた。
慧くんは器用だ。私の服を脱がしながら自分の服も脱いだ。
お互いに下着だけの姿になった。恥ずかしいが、もっと彼と深く繋がりたい気持ちの方が強かった。

「京香さん、下着も脱がしますね」

何も身に纏わずに、生まれたままの姿になる。
まるで心まで裸にされた気分で。何もかも見透かされている感覚に陥る。

「何度見ても綺麗な身体ですね。ドキドキしちゃいます…」

綺麗かどうかは分からないが、好きな人にそう言ってもらえるのは嬉しい。
でも見られるのは恥ずかしい。このドキドキ感が二人の愛を深くしてくれる。

「私もドキドキしちゃう。恥ずかしいし、慧くんがずっとかっこ良すぎて」

常に慧くんはかっこいいが、スイッチが入った慧くんは色気が増して更にかっこいい。
そんな慧くんに翻弄されっぱなしだ。今夜もずっと翻弄されるに違いない。

「そんなこと言われてしまったら、もっとドキドキさせたくなっちゃいます」

どんなふうにドキドキさせられてしまうのだろうか。期待してしまう。

「そんなことされたら、ずっと慧くんが欲しくなっちゃうよ…」

すると慧くんが抱きしめてくれた。強い力で思いっきり。

「欲しがってください。その方が嬉しいです」

彼の目が更に熱い視線へと変わった。彼もきっともう我慢できないのであろう。
そんな彼の熱い視線に私は欲情してる。私ももう我慢できなかった。

「…お願い。もう触って。一番触ってほしいところに…」

恥なんてもうない。今は欲望に素直になっていた。
そんな私を慧くんは優しく受け止めてくれた。

「そこまでお願いされて触らないなんていうイジワルはしません。ちゃんと触ってあげますね」

それから慧くんはちゃんと私の触ってほしいところに触ってくれた。
それだけで嬉しくて。たくさん慧くんを求めた。求めた分、慧くんも私を求めてくれた。
そのままどんどん深いところまでお互いに求め合い、気がついたら一つに繋がっていた。
何が何だか分からないまま、色んな場所でお互いに求め合い、繋がった。
時間を忘れるほど求め合うことなんて初めてで。さすがにお互いに疲れて。倒れ込むように眠りに落ちた。
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