恋の微熱に溺れて…

和泉 花奈

文字の大きさ
上 下
37 / 57
10度:抑えきれない欲求

37話

しおりを挟む
「あるね。京香もそうでしょ?」

迷いなく私は優希の問いに答えた。

「うん。そうだね。私もそう思う」

二人で微笑み合いながら、頭の中でたった一人をお互いに思い浮かべた。
そんなタイミングで、デザートが運ばれてきた。

「それじゃ、デザートを食べますか」

「そうだね。食べよう」

デザートを食べたら、優希との楽しい時間が終わってしまう。
寂しいけれど、今日はとても楽しかった。またいつか…。
でも今はデザートを堪能することにした。まずは一口、口に含んだ。

「デザートも美味しいね」

あまり甘すぎなくて、ちょうど良い味。本当に美味しい…。

「うん。美味しいね」

あまりの美味しさに、手が止まらない。気がついたら、あっという間になくなっていた。
名残り惜しいが、もう優希とはお別れの時間だ。

「…そろそろ帰ろっか」

優希から先に言ってくれた。優希とお別れするのは寂しいが、今はそれ以上に会いたい人がいる。

「そうだね。帰ろっか」

私がそう言った瞬間、お互いに帰り支度を始めた。
すぐさま帰り支度を済ませて、レジまで伝票を持って行った。それぞれ個別でお会計し、お店を出た。

「京香、今日はありがとう。また遊ぼうね」

もちろん、私もまた優希と会いたい。なるべく間を置かずに早く…。

「うん。また遊ぼうね」

「それじゃ、またね。バイバイ」

「うん。またね。バイバイ」

あとでもう一度、改めてお礼を言おう。今日、一緒に過ごして楽しかったから。
その気持ちを胸に抱きつつ、私は今、会いたい人の元へとまっすぐに向かった。


           *


いきなり連絡もなしに来てしまった…。
嫌がられたらどうしよう。ちゃんと連絡しておけばよかった。何も考えずにここまで来るとは思わなかった。
でももう来てしまったので、ここで黙って帰るわけにはいかない。勇気を出して、インターフォンを押した。
“ピンポーン”…というよく聞き慣れたチャイムの音が鳴った。すると、すぐにインターフォン越しに慧くんの声が聞こえた。

『はい…』

「私です。京香です…」

驚いたと思う。今日は友達と予定があると断ったのに、サプライズでお家に訪れたから。

『京香さん。来てくれたんですね。今、開けますので、少しだけ待っててください』

そう言ってすぐに玄関の扉を開けてくれた。扉が開いた瞬間、私はすぐに慧くんに抱きついた。

「京香…さん……?!」

慧くんは驚いていた。出会い頭に急に抱きつかれたら、誰しも驚きを隠せないのは当然だ。

「友達と遊んでたんだけど、友達にも彼氏がいてさ。二人で彼氏について話してたら、慧くんに会いたくなっちゃって。それで突然だけど会いに来たの」

一言連絡をしてから来ればいいのに、連絡もせずに来てしまったので、非常識だと思われたかもしれない。
そんな常識を忘れてしまうくらい、慧くんに会いたいという衝動が抑えきれなかった。

「そうだったんですね。会いに来てくれて嬉しいです」

優しく抱きしめ返してくれた。私は更に強く抱きついた。

「京香さん…。俺、今、京香さんが欲しいです」

慧くんの熱い体温が伝わってくる。私はその熱を味わいたい。首を縦に頷いた。

「京香さん……」

熱い目で私を見つめ、まずは優しい触れるだけのキスをした。
そのまま次第にキスが深くなっていき、私は彼のキスに溺れた。

彼のキスに溺れているうちに、彼の手が私の身体に優しく触れていく。もう何も考えられなくなっていき、ひたすら彼の熱に浮かされていく。
こんな玄関で…なんていう考えは終わった後、冷静になってから思うもの。その渦中にいる時は場所なんて目に入らない。
ひたすら求め合うのみ。気がついたらベッドの上にいた。
ベッドの上での方が互いの想いをたくさんぶつけ合えるので、ぶつけ合った。
どうしてこんなにも狂おしく求めてしまうのだろうか。欲しくて欲しくてたまらない。
この熱が冷めるのはきっとかなり遠い未来であろう。暫くの間はこの熱を手放せないと思う。

「慧くん、もっと……っ」

自分から強請って欲してしまう。止まらない欲求は、あなたを狂おしく求めてしまう。

「俺ももっと京香さんが欲しいです」

彼も飢えた獣の目で見つめてくる。互いに止まらない欲求に抑えが効かなくなっている。

「じゃ、もっと抱いて…」

今日は積極的に自分から求めていく。そんな私に驚きつつも、慧くんは応えてくれる。

「いいですよ。俺に抱かれて下さい」

その言葉が嬉しくて。私は慧くんの腕の中で抱かれた。優しい温かい愛に包まれながら…。

「ごめんなさい。まだ足りないです。俺ももっといいですか?」

今度は慧くんがおかわりを要求してきた。今度は私が応えた。

「いいよ。私ももっと欲しい」

私達はお互いの熱を堪能した。熱が冷めるまでずっと…。


           *


どうやら疲れてそのまま眠ってしまったみたいだ。気がついたら外がもう真っ暗だ。
まさか時間を忘れるほど、求め合ってしまうなんて。自分にこんな日が訪れるとは思ってもみなかった。

「…ん……、おはよう」

寝ぼけ眼な状態で、慧くんが目を覚ました。そんな姿が可愛くて。思わず笑みが溢れた。

「おはよう。まだ眠い?」

「うん。眠い。京香さんは…?」

「私もちょっと眠いけど、お腹空いちゃった…」

無我夢中になるまで求め合っていたせいか、体力を消費したのでお腹が空いた。
今はお腹を満たすことしか考えられないくらい、お腹が空いている。

「そうですね、俺もお腹が空きました。一旦、起きますか」

ベッドから起き上がり、二人でキッチンへと向かった。

「残り物の食材で簡単なのを作りますけど、それでもいいですか?」

慧くんだって疲れているはずなのに、率先して料理をしてくれる。
突然押し掛けてきた身で、文句なんて言えない。
それに慧くんの手料理が食べられるだけで、私は嬉しい。

「うん、大丈夫だよ。私も手伝うね」

ただ黙って待ってるのは嫌なので、私も手伝うことにした。

「ありがとうございます。こうやって一緒に料理をするのは二度目ですね」

慧くんに言われて気づく。確かにこれが二度目だと。
普段は外食か中食が多い。仕事終わりで会うこともあるし、お休みの日は外へ出かけることもある。

「そうだね。二度目だね」

「いいですね、こういうのも。新婚さんみたいな感じで」

新婚さん…。少なからずとも、彼は私とそういう未来を考えていると捉えてもいいのだろうか。
それにこうやって一緒に料理をするのも悪くない。結構楽しいから。
たまにはお家デートをしてみるのもアリかもしれない。彼の手料理も食べられるし、一緒に料理をすることもできるから。

「そう…ですね。そうなるといいけど」

恥ずかしくて、照れてしまった。
気づいて欲しい。私はあなたとそうなる未来を考えていることを。

「そんな未来が訪れたら、毎日京香さんと一緒に居られるので、幸せですね」

彼の言葉は破壊力満点だ。私を壊すつもりなのだろうか。無自覚で言っていないと信じたい。その言葉には意図がちゃんとあると。

「そ、そんなの、私もだし…」

可愛い反応ができたらいいのに。どうしてこんなにも下手クソなのだろうか。
可愛気があったら良かったのにな。恋愛に不慣れな私は、未だに慣れないことだらけだ。

「可愛い。もう今すぐにでもうちに嫁いでください」

これはプロポーズ?まだちゃんとしたプロポーズは先ってこと?
彼の真意が分からないまま、私は彼の掌の上で転がされているのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた――― ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。 それは同棲の話が出ていた矢先だった。 凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。 ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。 実は彼、厄介な事に大の女嫌いで―― 元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

処理中です...