59 / 60
魔法教師、宮廷を出る
55話
しおりを挟む
現在に記録される最古の歴史よりも、大昔のお話。
創造主は、最初に作った星“エルディエン”に深い愛着があった。
創造主としてそこに存在し続けていた君主が、自らの意思で生み出し、己の思う美しい世界を詰め込んだ宝箱だから。
真っ白な星に、豊かさの象徴である茶色をエルディエンと言う球体に塗りたくった。その大地ははやがて、小さな新芽を覗かせた。
そして生まれた、豊穣の女神。
若葉色の大地に青々とした緑の色を足せば緑はやがて根を張り大きく育って、それはそれは立派な大樹へと変わった。光合成という現象に近いものにより、魔法の神が生まれ、魔力が大陸中に満ちた。
しかし、どうやら植物は水が無いと上手く育たない。だから創造主は、水源を大陸に追加した。水源は川を作り、大陸の半分に広がるほどの海を作った。
しかし、世界は静止画の様に動かない。ならばと創造主は昼と夜を作る。景色が変わる様を見るのはなんと面白い事かと満足げだが、それもやがては飽きてしまう。
そうだ、星を動かしてみようと風を作る。風はカラリとしていたり冷たかったりといろんな色を見せる。
そして、星が動き出した事で時間がうまれ、季節が誕生し、精霊が誕生し、様々な神がこの星によって生み出される。
そして、様々なかみのてにより生命が誕生した。
なんて言う昔話が子供達の寝物語として語られている。
まぁ、創造主様はこの世界が一番大事な宝物なんだよってのを教える為の物語。
人間を作ったのも、他の種族を作ったのも、魔法の概念を作ったのも、炎を作ったのも、創造主様が作り出した神様だ。
つまるところ、創造主様は自分の創造物以外微塵の興味もないから宝物の中にこの世界の種族は含まれてないのよ。
…と、だれも知らない様などうでも良い話は置いといて、
私は鉱山の街にある、お嬢様専用の別荘地にて紅茶を啜る。ミルクティーはあまり好んで飲まないけど、ロイヤルミルクティーって美味しい。今度からミルクティーはこれにしよ。
ふぅと一息ついてから、鉱山の一件について一通りの説明を始めた。
「_____って事で、ハニービーの件は解決した。魔物も寄ってこない様にはしたけど、これからは魔物に対しての対策はした方がいいと思う。
鉱山の魔法石に魔力を帯びなくなった理由として私の見解としては…ただ単純に、鉱山が寿命を迎えたんだと思う」
ある日突然に、魔力が消えた…と言う事が引っ掛かるけど…
「確認なんだけど、魔宝石が取れなくなる前に、品質の良い上質な魔法石が取れなかった?例えば、有する魔力が普通の魔法石より多く純度が高いもの…とか」
「ありました。
あぁそうです……あの石は、鉱山の魔法石の魔力を凝縮した様な、この世のものとは思えない魔宝石でした」
ぎゅっとドレスを握り、俯く姿。
「でした」と言うのは、何か訳があるのだろう。
「もしかして、盗まれたの?」
「……」
小さく、こくりと頷く。
「侯爵家の屋敷に移送中に……突然、無くなってしまいました。最後の魔法石を運んでいた馬車で、その石だけ…」
「見計ってた様な盗みかただね」
「その石のことはごく一部しか知らない極秘でした。だから、だからっ…!」
「密告者がいるって事?」
「っっ!!」
「それは多分無い。いや、ない訳じゃないけど、むしろそっちのがあり得る話だけど……お嬢様は、その誰かを疑って良いの?私は、“誰か”が情報を密告したんじゃなくて、最初からその魔法石が採れるのを知ってた“誰か”が盗んだんだと思うよ」
“誰か”が、鉱山に何らかの仕掛けをして、“誰か”が膨大な魔力を蓄えた魔法石を人為的に作り出した。
この仮説は、確信が持てなかったけど…そうとしか思えない。
この世界には魔法道具なんて言う便利なものもあるし、悪魔固有の魔力を奪う魔法もある。魔力を一点に集める魔法があってもおかしくない。
魔法は概念だから、出来ないと思ったことはできないけど、できるって思った事は、どうしてかできちゃうもんなんだよ。
まぁ、魔法神様が許す範囲の事だけだけど。
寿命が近かった鉱山の魔力が枯れる程、一点に集められた形を保った魔宝石をほしがる“誰か”が居たんだ。
何に使うのかは分からないけど、碌な事じゃないだろうねぇ。
「…他の鉱山でもおんなじ様な事が起きてたら大事になる予感」
ぼそりと呟いた言葉は、現実的じゃないけれど何だか現実味を帯びている。
いつも私達を見てた誰かは、何かを危惧していた。
それを阻止しようと動いているのは、何となくわかる。
神子も、何かをしようとしてる。
世界中の色んな所で、不穏な動きがある。
これは、私自身の感覚だから確証は無いけど…ただ本当に、嫌な予感がするんだ。
「まぁ兎に角、魔法石は取れなくなったけど鉱山はこれからも機能していくと思うよ」
「それは…良かったです」
「私が出来ることはここまで。力になれなくてごめんね」
「いえ、此方こそ…キラービーの討伐、感謝致します。報酬は追ってギルドから支給させて頂きます。それから、」
「私は、友人が困ってたから手を貸したんだよ」
どの口が言う…と言う視線を背後から受け、あははと苦笑いをこぼす。
ごめんって。言い訳するつもりはないけどあの時は仕方なかったんだってば。
「今後はお嬢様次第。頑張ってね」
「はい!」
「また何かあったら手を貸すよ」
「その時は宜しくお願いします。私も力になれる事があれば仰ってくださいね!」
「ん、宜しく」
絶対ですよ!と、ぎゅっと手を握られ分かった分かったと頷く。
うちの子が可愛い。
創造主は、最初に作った星“エルディエン”に深い愛着があった。
創造主としてそこに存在し続けていた君主が、自らの意思で生み出し、己の思う美しい世界を詰め込んだ宝箱だから。
真っ白な星に、豊かさの象徴である茶色をエルディエンと言う球体に塗りたくった。その大地ははやがて、小さな新芽を覗かせた。
そして生まれた、豊穣の女神。
若葉色の大地に青々とした緑の色を足せば緑はやがて根を張り大きく育って、それはそれは立派な大樹へと変わった。光合成という現象に近いものにより、魔法の神が生まれ、魔力が大陸中に満ちた。
しかし、どうやら植物は水が無いと上手く育たない。だから創造主は、水源を大陸に追加した。水源は川を作り、大陸の半分に広がるほどの海を作った。
しかし、世界は静止画の様に動かない。ならばと創造主は昼と夜を作る。景色が変わる様を見るのはなんと面白い事かと満足げだが、それもやがては飽きてしまう。
そうだ、星を動かしてみようと風を作る。風はカラリとしていたり冷たかったりといろんな色を見せる。
そして、星が動き出した事で時間がうまれ、季節が誕生し、精霊が誕生し、様々な神がこの星によって生み出される。
そして、様々なかみのてにより生命が誕生した。
なんて言う昔話が子供達の寝物語として語られている。
まぁ、創造主様はこの世界が一番大事な宝物なんだよってのを教える為の物語。
人間を作ったのも、他の種族を作ったのも、魔法の概念を作ったのも、炎を作ったのも、創造主様が作り出した神様だ。
つまるところ、創造主様は自分の創造物以外微塵の興味もないから宝物の中にこの世界の種族は含まれてないのよ。
…と、だれも知らない様などうでも良い話は置いといて、
私は鉱山の街にある、お嬢様専用の別荘地にて紅茶を啜る。ミルクティーはあまり好んで飲まないけど、ロイヤルミルクティーって美味しい。今度からミルクティーはこれにしよ。
ふぅと一息ついてから、鉱山の一件について一通りの説明を始めた。
「_____って事で、ハニービーの件は解決した。魔物も寄ってこない様にはしたけど、これからは魔物に対しての対策はした方がいいと思う。
鉱山の魔法石に魔力を帯びなくなった理由として私の見解としては…ただ単純に、鉱山が寿命を迎えたんだと思う」
ある日突然に、魔力が消えた…と言う事が引っ掛かるけど…
「確認なんだけど、魔宝石が取れなくなる前に、品質の良い上質な魔法石が取れなかった?例えば、有する魔力が普通の魔法石より多く純度が高いもの…とか」
「ありました。
あぁそうです……あの石は、鉱山の魔法石の魔力を凝縮した様な、この世のものとは思えない魔宝石でした」
ぎゅっとドレスを握り、俯く姿。
「でした」と言うのは、何か訳があるのだろう。
「もしかして、盗まれたの?」
「……」
小さく、こくりと頷く。
「侯爵家の屋敷に移送中に……突然、無くなってしまいました。最後の魔法石を運んでいた馬車で、その石だけ…」
「見計ってた様な盗みかただね」
「その石のことはごく一部しか知らない極秘でした。だから、だからっ…!」
「密告者がいるって事?」
「っっ!!」
「それは多分無い。いや、ない訳じゃないけど、むしろそっちのがあり得る話だけど……お嬢様は、その誰かを疑って良いの?私は、“誰か”が情報を密告したんじゃなくて、最初からその魔法石が採れるのを知ってた“誰か”が盗んだんだと思うよ」
“誰か”が、鉱山に何らかの仕掛けをして、“誰か”が膨大な魔力を蓄えた魔法石を人為的に作り出した。
この仮説は、確信が持てなかったけど…そうとしか思えない。
この世界には魔法道具なんて言う便利なものもあるし、悪魔固有の魔力を奪う魔法もある。魔力を一点に集める魔法があってもおかしくない。
魔法は概念だから、出来ないと思ったことはできないけど、できるって思った事は、どうしてかできちゃうもんなんだよ。
まぁ、魔法神様が許す範囲の事だけだけど。
寿命が近かった鉱山の魔力が枯れる程、一点に集められた形を保った魔宝石をほしがる“誰か”が居たんだ。
何に使うのかは分からないけど、碌な事じゃないだろうねぇ。
「…他の鉱山でもおんなじ様な事が起きてたら大事になる予感」
ぼそりと呟いた言葉は、現実的じゃないけれど何だか現実味を帯びている。
いつも私達を見てた誰かは、何かを危惧していた。
それを阻止しようと動いているのは、何となくわかる。
神子も、何かをしようとしてる。
世界中の色んな所で、不穏な動きがある。
これは、私自身の感覚だから確証は無いけど…ただ本当に、嫌な予感がするんだ。
「まぁ兎に角、魔法石は取れなくなったけど鉱山はこれからも機能していくと思うよ」
「それは…良かったです」
「私が出来ることはここまで。力になれなくてごめんね」
「いえ、此方こそ…キラービーの討伐、感謝致します。報酬は追ってギルドから支給させて頂きます。それから、」
「私は、友人が困ってたから手を貸したんだよ」
どの口が言う…と言う視線を背後から受け、あははと苦笑いをこぼす。
ごめんって。言い訳するつもりはないけどあの時は仕方なかったんだってば。
「今後はお嬢様次第。頑張ってね」
「はい!」
「また何かあったら手を貸すよ」
「その時は宜しくお願いします。私も力になれる事があれば仰ってくださいね!」
「ん、宜しく」
絶対ですよ!と、ぎゅっと手を握られ分かった分かったと頷く。
うちの子が可愛い。
10
お気に入りに追加
945
あなたにおすすめの小説

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

【完結】憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと
Debby
ファンタジー
【完結まで投稿済みです】
山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。
好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリスト。
やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。
転移先の条件としては『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。
そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。
更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。
これにはちゃんとした理由がある。必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ない。
もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。
──そして本当に転移してしまった星良は、頼もしい仲間(レアアイテムとモフモフと細マッチョ?)と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。
いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。
理想通りだったり思っていたのとちょっと違ったりするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。
あなたが異世界転移するなら、リストに何を書きますか?
----------
覗いて下さり、ありがとうございます!
10時19時投稿、全話予約投稿済みです。
5話くらいから話が動き出します?
✳(お読み下されば何のマークかはすぐに分かると思いますが)5話から出てくる話のタイトルの★は気にしないでください

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか
片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生!
悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした…
アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか?
痩せっぽっちの王女様奮闘記。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
転生少女、運の良さだけで生き抜きます!
足助右禄
ファンタジー
【9月10日を持ちまして完結致しました。特別編執筆中です】
ある日、災害に巻き込まれて命を落とした少女ミナは異世界の女神に出会い、転生をさせてもらう事になった。
女神はミナの体を創造して問う。
「要望はありますか?」
ミナは「運だけ良くしてほしい」と望んだ。
迂闊で残念な少女ミナが剣と魔法のファンタジー世界で様々な人に出会い、成長していく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる