形成級メイクで異世界転生してしまった〜まじか最高!〜

ななこ

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魔法教師、トラブルを呼ぶ

43話

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エリカお嬢様の肌悩みとしては、まずはそばかす。それから、日焼けによる肌の赤みって所かな。
日焼けしない様に過ごすのが貴族令嬢の嗜みと言うか、美容方法の一つではあるんだけど、お嬢様は赤髪だし色素も薄いと思うから普通の方法だけじゃ紫外線予防としては弱い。

日焼けしたら冷やして保湿、って言う知識もないだろうし……。

「私の作るものの原材料は主に、ハーブティー使われる薬草が主ですので、ご安心ください。
お嬢様に使用して頂きたいのは、こちらの美白美容液です。洗顔後に使用して下さい。用法容量はお嬢様の侍女に説明しておきます」

ラッピングしておいたスキンケア用品を幾つか渡して、一緒に毎日飲んで欲しいと数種のハーブティーを渡す。

「お嬢様は日頃どの様な生活をされているか、質問してもよろしいですか?」
「え?…、ええ」
「まず1日の水分量、白湯はどのくらい飲まれますか?」
「…朝と夜にコップ一杯分くらいよ」
「そうですか。
これは私の知識なのですが、実はコップ一杯にレモの果汁を垂らして飲めば、美白効果が得られます。
レモにはシミやそばかすを作るメラニンと呼ばれる色素の生産を抑制するビタミンCが豊富に含まれている為、白く若々しいハリのある肌を保つ効果があるんです」
「そ、そうなの!?」
「初めて聞いたわ!」

食いついた食いついた。

お嬢様や夫人の他に、部屋の端に控える使用人までぐっと関心を寄せる気配。

「ですので、お嬢様には私のお渡ししたハーブティーの他に、朝と夜…どちらかにレモ水を飲んで頂きたいのです。
そうですね、飲みにくい様でしたら蜂蜜を入れて頂いて…。

それから、毎日鏡を見て笑顔を作って下さい。笑顔は脳の記憶力や自律神経、それから…幸福感を感じるエンドロフィンと呼ばれるホルモンが分泌されます」
「……マユラさんの言っている事は、なんだかとても難しいですわね??」

「つまり、幸せな気分になれます!
メイクが上手く行った日、おしゃれなドレスを着た日、綺麗に髪を結った日、鏡の中で笑って見て下さい」
「それだけで良いのですか?」

にっこり微笑みお嬢様の手を握る。

驚いた様に目を見開きながらも、その手を解く事はしない。

「美しくなりたいと願うなら、まずはご自身が自信を持たないと始まらないのですよ?

私にエリカお嬢様を今よりもっと美しく飾らせて下さい」
「………本当に、わたくしもっ…お、お母様の様に綺麗になれるのですか?」
「勿論です」

その為に、私が来ました。

自信を持つ人間の言葉は時に、何の魔力を込めなくとも魔法になる。

頼れる誰かが居れば、物事を行動に移すことができるだろう?私はその頼れる誰かになれば良い。

かつての私が望んだ存在。

欲しい言葉をかけ、寄り添い、支える人物のなり方は、私が一番よく知ってる。

「これから宜しくお願いしますね、エリカお嬢様」
「っ!

はいっ!!」


 ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆ 


「はい、ワン・ツー、ワン・ツー

マユラ様、もっと足運びをしなやかに」

ワン、ツー、ワン、ツー

やや風が冷たくなって、服装も秋物に変わってきた今日この頃。

私は何故かエリカお嬢様と、淑女のレッスンを受けていた。

遠い目をしながら、手拍子に合わせて足を動かす。


何してるかって?
……ダンスレッスン。

「ドレスって、こんなに…重いのですね」

クルリとターンを回ればドレスの重みで重心が崩れる。世のご令嬢の体幹は凄い。

「私も、練習する意味っ…ありますか??」
「今日だけです、今日だけ」

思わず嘘だぁ。と声を出してしまうくらいには疲弊困憊だ。

「私はいつもの服で十分」
「そのドレスも似合ってますよ?」
「そんなこと言っても何も出ませんよ」
「人からの賛美は素直に受け取る事よ」

エリカお嬢様とも、だいぶ仲良くなったと思う。
同年という事もあって友人の様に接してくれて、心を開いてくれてる。お嬢様はだいぶ明るくなられたし、見紛う程綺麗になられた。

元々、美しい人だったけど。

「お店の開店まで順調?」

不意にそう聞いてきて、少し考える。

「店の名前が思い浮かばないのです」
「あら、自分の名前を店の名前にするのが一般的でしょう?」
「意味のある名前にしたいのですよ」

そうだ。
店を開く場所はもう決まってる。商品も絞ってる。けれど、店名が中々思いつかない。

「お二人とも、ダンスに集中されませんと脚がほつれますわよ」
「ごめんなさい先生」
「すみません」

ドレスを着てのダンスは思ったより凄く大変で、でも凄く面白い。

「ふふ、くふ」

そう言えば近頃は座り仕事とかばかりだし、こんなにキツイ運動してなかったなぁ。

今の私、凄く充実してる気がする。

やりたい事をやって、一緒にいたいと思える人たちと一緒に居れて、私のスキルを買ってくれる人が沢山出来て、おかしな事を楽しんで、何だか前よりずっと楽しいと思える。


「どうしました?」

不思議そうな顔をして、小さく笑い出した彼女に笑みを向けた。

「いえ、何でもないです」

ああ…幸せだ。






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