形成級メイクで異世界転生してしまった〜まじか最高!〜

ななこ

文字の大きさ
上 下
41 / 60
魔法教師、トラブルを呼ぶ

38話

しおりを挟む
社交会と言っても、それほど堅苦しさはない。
今日はどちらかと言えばパーティーみたいな感じ。主役のセリくんのデビュタントだから、「自分の娘を婚約者にどうですか?」的な展開が多いと思う。

私はまぁ…悪くは見られない…はず。

名目上セリくんの恩人であり、今はセリくんの魔法教師を務める人間だし、陛下からの評価も高い。
あぁ、後、つい先日冒険者ランクがBに上がった。最短記録を更新し続けてると言う事で、その手の情報に詳しい人には一目置かれてる。
リノンさんとか。

平民だし、何処の馬の骨とも分からない人間に反感を抱く貴族は一定数居るだろうけど、まぁ予想してるし、心配ない。

「マユラ…ストベリーのジュースです。どうぞ」
「わ、ありがとうございます。ノーシスさん」
「いえ、お酒は飲まれますか?」
「…うーん、アルコールの風味があまり得意ではなくてそれ程飲まないんです」

16歳。この世界に未成年飲酒禁止の法律は無いが、飲むのは気が引ける。それ程お酒が得意じゃ無いのもあるけど……未成年でも飲んで良いけど、流石に子供は飲ませない方がいいって言う風習はある。
依存症って怖いしね。

子供達も参加する場だから、ジュースの種類も豊富だ。
ストベリーのジュースも酸っぱくって甘くって美味しい。見た目は飾り付けられたカクテルっぽくてSNS映えしそう。

「おいし」

ふぅと一息付いたところで、周りを見渡した。
人だかりが出来てる所の中心には、セリくんが居る。
周りを囲む皆々は着飾り、彩り、見栄を張る。

見栄は少し違うか。…うーん、家紋の権威を見せてる?
我が娘こそは!って言う人達が多い。

確かに、貴族のご令嬢達は皆見目麗しい。
隅々まで手入れが行き届いている装いは華々しい。しかし次期皇帝の婚約者の席に座る為躍起になってる様は、見所がある。

こう言うのはフィクションじゃ無いんだなと実感した。
ほら、貞淑が美と捉えられてるならこの行動はあり得ない訳だし?

「…ん?」

視線を外し、テラスの方へと移動させれば“赤”が目に入る。

顔立ちは良く見えないが、その髪は熟れた林檎の様に赤い。装いはこの場の令嬢の誰よりも質素。悪く言えば地味。
でも、ドレスの生地は高級なシルク素材、豪華なロココ調の刺繍が施され少し大人っぽいが中々に優美だ。
そして、彼女の髪に良く映える躑躅型の銀細工の髪飾り。

装いはとても彼女によく似合ってる。

似合ってるけれど……

「…勿体無い」

ドレスも髪飾りも、スラリとした体型で、細身で、豪華な髪を持つ彼女によく似合っているのに、その表情や自信なさげな雰囲気のせいでその魅力は半減されてる。

肌にやや赤みが帯びてるのは、アルコールのせいでは無く恐らく日焼けだろう。
鼻から広がるそばかすは愛嬌があるものだけど、その暗い顔には似合わない。

「勿体無い」

もう一度呟いた。

そして、ふと“良い事”を思いついてはしたないと思いながら口に手を当てニヤリと笑う。

社交界の注目の的に宣伝して貰うのも良い案だと思ってたけど、それってその人の名前をだけで、私の商品の効果は、アピール出来ない。
元々美人な人気者が美しくなるより、自信無さげな子が美しくなる方が第三者にとっても魅力的なものだ。

中々に、良い案だと思わない?

私ってば天才かも。


 ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆


セリくんのファーストダンスの相手は、同じ歳くらいの女の子。薄桃色の髪の可愛らしいその子は、伯爵家の末娘らしい。
同色のやや濃い瞳がセリくんに釘付けなところを見るに、“恋に落ちた女の子”らしい。

「あの娘は中堅の伯爵家」「家柄は悪く無いが家格がやや低い」「ファーストダンスは無難な相手を選んだ様だ……」
「これなら家の娘も候補として名が上がる」

聞こえてるぞ狸共。

コソコソ会話するのが耳に入り、内容が内容なだけに会話に横入りして「テメェの娘如きには無理だ」と中指立てたい衝動にかられる。
心境は溺愛する弟が悪い大人に虫をつけられそうになってるのを知った姉である。

セリくんが数ある申し出の中からあの子を選んだのだ。
どの子よりも秀でた何かがあったのだ。それかどの子よりも“良い子”だったか。

「ごきげんよう」
「ごきげんよう、ちょっとお話ししたいのだけれど良いかしら?」

「ご機嫌麗しゅう、お嬢様方。
お初にお目にかかります。お話ですね、是非」

来た来た。

予想通り、全体の注目がセリくん達のダンスに行ってる中でのこのとやら。
ワクワクしながら、会場の端っこに案内される。
休憩所のようなところで仕切りが置いてある為、あの内側に入って仕舞えば誰の目にも止まらないだろう。

「本日は如何なさいましたか?」
「ふふふ、そう急がなくてもよろしいではありませんか」
「平民の方はせっかちね」
「平民はその日その日で精一杯生きる身分ですもの」

くすくすとお上品に笑うお嬢様方三名。
左にくすんだチョコレートの髪のご令嬢、右にストロベリーブロンドのご令嬢、真ん中に巻毛の白金髪プラチナブロンドのご令嬢。

中々に粒揃いの美少女達だ。特に真ん中の子が悪役令嬢っぽくて苛烈な棘のついた薔薇の様な美しさがある。

「申し訳ございませんお嬢様。そうですね、では自己紹介から。

わたくしはセリニオス第一皇子殿下の魔法教師を勤めております、マユラと申します。
下賤な身分ゆえ、家名はございません。
平民の私めにお声をおかけ下さり恐縮至極に存じます」

男性の礼を尽くせば、私はこの場に置いて敵意はないことも伝えられて、教師らしさを醸し出せる。
セリくんのお披露目なのだ。流石に問題ごとは避けたい。

ノーシスさんは、他の貴族のお方と談笑中だし、自分で何事も無く対処するなら手っ取り早く仕立てに出て、お嬢様方を立てれば良い。

「あら、何処の恥知らずがこの場にいたのかと思えば…中々弁えてるじゃ無い」
「そうですね、平民にしてはですが」

入りはまずまずと言ったところかな。
なるほど、真ん中のお嬢様がこの中で一番身分が高いのね。
そう言えば、このストロベリーブロンドの子はあの桃色の髪のお嬢様に少し似てる。姉妹かな?

「私は、伯爵の娘、ローズマリー・エニシアと申します。お会い出来て光栄ですわ。マユラさん」
「同じくヴィーシャ・リーヴァスですわ。セリニオス皇子殿下と踊ってるニーチェの姉にあたりますの。
私の隣にいらっしゃるのが、クレーネー侯爵令嬢カーネリアン様ですわ」

「カーネリアン・クレーネーです。以後お見知り置きを。マユラ

…さん」

きゅっと紫の目が細まる。
…なんか、見るからに警戒心剥き出しというか、思い違いでなければちょっと嫌われてる?

「それで貴女…ノーシス様とはどう言うご関係なの?」

あー、ノーシスさんか。

「貴女!○○様とどう言う関係なの!?」はこう言う場に置いてテンプレだよねぇ。
誰の事で言われるんだろう?って思ってたけど…ノーシスさんね。

どう言う関係?…どう言う関係だろう?

……顎に指を当てて少し考えてから、クレーネー御令嬢を見る。

「ただの付き添い人です。ノイモン卿が私に紹介して下さいました。
同じ魔法使い同士と言う事なのだと思いますが、それ以上でもそれ以下でもございません」

この回答が、正解。

「そう」

私の返答に満足そうに頷いた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

神様 なかなか転生が成功しないのですが大丈夫ですか

佐藤醤油
ファンタジー
 主人公を神様が転生させたが上手くいかない。  最初は生まれる前に死亡。次は生まれた直後に親に捨てられ死亡。ネズミにかじられ死亡。毒キノコを食べて死亡。何度も何度も転生を繰り返すのだが成功しない。 「神様、もう少し暮らしぶりの良いところに転生できないのですか」  そうして転生を続け、ようやく王家に生まれる事ができた。  さあ、この転生は成功するのか?  注:ギャグ小説ではありません。 最後まで投稿して公開設定もしたので、完結にしたら公開前に完結になった。 なんで?  坊、投稿サイトは公開まで完結にならないのに。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

処理中です...