形成級メイクで異世界転生してしまった〜まじか最高!〜

ななこ

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転生美少女、先生をしようと思う

32話

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「陛下!お考え直しください!!
我が太陽帝国は魔法の最先端国家なのですぞ!?セリニオス皇子の魔法教師に経歴のない一端の冒険者の小娘ですと!?

経歴も身分もある適任者は他におります!」

皇帝陛下にある事を頼もうと思って公務室に足を向けてみれば中から荒ぶった声。

……どうやら、私の事を言っているらしい。

こうなる事はまぁ予想してたね。
そう、この帝国は一応魔法の最先端を名乗る国なのだ。
皇子の魔法教師にただのCランク冒険者が務まるわけが無い。要はそう言いたいのかな?

言い分はわかるが、陛下自身がそれを認めているにも拘らずの発言はあまりにも無謀だと私は思う。
苛立ちを隠して、公務室の豪華なドアをノックした。

「誰だ」
「マユラで御座います。陛下」
「入れ」
「失礼します」

中から護衛の人に重厚なドアを開けて貰い、入室する。
背筋を伸ばし、胸を張り、気品を見せ、あどけなさを隠す。

「太陽帝国の君主にご挨拶申し上げます。こんにちは、ノイモン卿。

そして…ごきげんよう。セリニオス殿下の魔法教師を勤めておりますマユラと申します、初めまして。
お名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」

堂々と見せろ。
それが私の評価に繋がる。

私の方へと体を向けた相手は、一度瞬きしてからじっくり上から下まで蛇の様に観察し、嘲笑う様にフッと笑う。

「スネイク伯爵家の当主、ヤナウ・スネイクだ。貴殿が魔法教師か、丁度いい。
今すぐ、辞退しろ」

ピクリ、片眉を上げたのはスネイク伯爵の後ろで、広い公務机を挟む向こうに座る、黄金の髪の持ち主。言わずもがな陛下である。
ノイモン卿も、きらりと眼鏡を光らせた。

「お断りします」

二人の何かを発しようとする言葉を紡ぐ前に、声を出した。

「お前には相応しく無いと言っておるのだ!!」
「私ほど、殿下の魔法教師に相応しい人材は他におりません」
「ハッ、どうだかな!」

「それを今、証明して差し上げます」

口で言ってもわからないなら、見せた方が早いだろう。
度肝を抜かれる様な、繊細で、膨大で、美しい魔法を……

「な、何だこれは!?!?」

咲かせるのは月華の花、漂わせるのは美しい水龍、吹雪かせるは氷の息吹。

飛び交うのは、氷の精霊。


“カナデ”

“カナデじゃないよマユラだよ”

“キレイ”

“まりょくおいしい”

“すいりゅうだ”


此処に、精霊が見える人、声が聞こえる人がいなくて良かった。でもそれ以上に、精霊の映る光景を見れない人達に、「こんなに美しいものなのに見れないなんて…」と、少し哀れに思う。

「何と……」

伯爵の息を呑む言葉が聞こえた。

「ご理解頂けましたでしょうか?殿下は、水や氷魔法に強い適性がございます。そして、膨大な魔力も備えております。
魔力暴走が起こった際に止められるのは、帝国一番の魔法の使い手は殿下に勝る魔力の持ち主。つまり、私でございます。
これは自惚ではなく事実。

先程の発言、撤回して下さいますよね?」
「……っっ」
「見苦しいぞ伯爵」
「も、申し訳ございません。撤回…致します」

伯爵は、そう言って俯いたのち逃げる様に部屋を出た。
ちょっといじめすぎたかな?

ぱちんと指を鳴らし、魔法を消した。
精霊も一緒にいなくなったけど帰ったのかな?

「誠に美しい光景であったぞ」
「恐れ入ります」
「やはり其方に任せて正解であったな」
「本当に素晴らしい魔法でした。私もある程度の使い手だと自負していたのですが、まだ赤子だった事を実感しました」

ノイモン卿はねぇ、確かに魔力は普通くらいだもんね。アンタレスよりちょい下?風魔法に適性があるけど、割と満遍なく色んな魔法が使えるっぽい。

まあ私には劣るけど。

「ノイモン先生の魔法は、理屈っぽいですよね?多分」
「それはどう言う意味ですか?」
「うーん、魔法使いには感覚派と理論派って言う大きく分けて二つの性質があるんです。とことん使い続けて慣れるタイプと、とことん考え抜いて慣れるタイプ。ノイモン先生は後者です」

前者と後者に分かれるだけで、魔法使いのタイプがかなり異なる。
面白い事に、肉体強化魔法しか使えない脳筋魔法使いまでいるらしい。いや、魔法使いと言っていいのか?武道家?

「原理をとことん追求するタイプ。あれです、火が燃える原理は空気中の酸素を燃やして…的なこと考える」
「……まぁ、そうですね」
「余はどうだ?」
「陛下は…感覚と言うより、直感でこうだって分かるんですよね?多分。
セリくんも多分そんな感じです。此処まで似てる親子中々いませんよ」
「……そうか」

空気がホワンとした。
何この生き物ちょっと可愛いとか思っちゃったよ屈辱。セリくんが大人になったらこんな顔になるのかな?こんな冷徹仮面に?……ないな。

「それで、何の用だ?」
「あ、そうでした。

薬草を育ててる温室に入る許可と、薬室を自由に使用していい許可を下さい」
「?そんな事で許可を?」
「陛下の許可を貰わないと、温室にも薬室にも一歩も入らせないって責任者の方に言われてしまって…」

あのハゲ、私が薬師だって言っても全然信じない。
さっきの蛇伯爵よりむかつくからね?お前みたいなガキが?って露骨に馬鹿にした顔してたからね?

まぁ、取り敢えず最上級ハイランク魔法薬ポーション大量生産して見せびらかしてやる。
どんなにクレクレされても絶対あげない。

「数少ない魔法薬師でもある…と」
「本当に貴女とんでもないですね」
「許可してくれます?」
「面白そうだな、許可する。一泡吹かせてやれ」

割とこの人ノリいいよね。

「ありがとうございます。それだけなので、失礼しますね」
「変わりと言っては何ですが、騎士団に魔法薬ポーションを幾つか卸してくださいね。そうそう、傷薬も少なかったですね…お願いします」

眼鏡割れろインテリ。
こいつ私の事パシリか何かと勘違いしてる?
輝かんばかりの真っ黒さだ。あ、真っ黒はどこまで行っても真っ黒だった、素晴らしいね。

「はぁ…まぁ良いですよ。高く買い取って下さいねー」
「物によります」

最高品質に決まってるだろ。私だぞ??

「お仕事中すみませんでした。失礼しますね」

簡単な証書も書いて貰った。
いやぁ、温室の出入りと薬使用の許可取るためだけに皇帝の証書書いて貰うとかつくづく馬鹿げた話だ。あのハゲ首飛ばしたいのかな?

ふふんと鼻歌を奏でながら、所々に花で彩った廊下をスキップした。

「あのハゲクビだねぇ~」

私知らね。


 ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆


「な、なにっ!?!?もう一度言ってみろ小娘」
「だから、陛下からの証書だって言ってるでしょ?早く薬室貸せよ。テメェは出てけよ」
「………チッ、荒らすなよ!」

舌打ちを吐きながらどこかへ歩いていくのを中指立てで見送った。
こいつ無職にしてやろうかな…薬室のノブを開けながら中の光景を目に入れた。

……は?

「あのハゲジジイ、ヤブ?」

散らかった調合具、貴重であろう書物、部屋の端に積もった埃、見るも無惨な薬草の残骸。

あ?
あいつ藪医者ならぬ藪薬師だろ。

は?あんなのが宮廷に雇われる薬師?

「こりゃ、陛下に報告しないとなぁ」

窓を開け開き部屋全体に清潔クリーンをかけながら、ハゲの行末に笑みを浮かべた。

私が入ってきた薬室の扉の真正面にはもう一つ、別の扉がある。
これが、温室へ繋がるドアかな。
此処の惨劇からして、碌なものじゃなさそう。

「ほーらやっぱり」

枯れてはいないが、最高にヘタらせて育っている。
どうして根っこ生やして育つ植物がこんなに元気ない訳?

「藪どころか無能?」

水やりゃ勝手に育つ生命力の強い植物が瀕死とか逆にどうやるの?

「ま、丁度いっか。
活性アクティビティ” “成長グロー”」

魔法での強制成長は実は、高品質の魔法薬ポーションを作る近道だったりする。
魔法薬ポーション”とは、まぁ種類によって様々な効果をもたらす水薬だと思ってくれれば良い。
失った魔力を瞬時に回復させる魔力魔法薬マナポーション、怪我を治す事ができる治癒魔法薬ヒールポーション、体力回復ができる回復魔法薬リカバリーポーション等々etc。

元気に育った多種類の薬草を摘み、再び種を蒔いておく。あのハゲクビにして貰うから元気に育っておくれ。
せめてもの情けで“成長促進”の魔法をかけておこう。二週間くらいで育つでしょ。





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