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転生美少女、迷子を送り届ける

16話

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さて!

迷子の少年を無事お家まで帰す事をお願えされたけど、すぐじゃなくて良いよね!と思って連れ回す算段を企てる魔法使いマユラ、16歳です!

現在ヒペリオン帝国、又の名を太陽帝国の辺境の町、アスピタ(盾と言う意味らしい)に着いた私たち一向。

ちょっと凄い覚醒遺伝子持ち大剣士のヴァルフゴール、
全国指名手配される暗殺者アサシンのアンタレス、
ラブリーキュートな第一皇子セリニオス、
相棒耳飾りの皆は知らない先生シル、
チートな人外魔法使い兼冒険者の私!

いやぁ、凄い。ある意味凄いぞこの一行。

目の端に見えた物に視線を向ける。
何アレ!

「あ、あの食べ物何!?買ってくる!」
「ぼ、僕も!」
「待て世間知らず共」
「買い物は後。ギルドで素材を換金してからにしよう?」

首根っこ掴まれる。私猫じゃないんだけど。

ぶらんと持ち上げられて、気分は子猫だ。ん?そんな可愛いもんじゃないか。

「分かったぁ」
「本当は中までついて行ってあげたいけど、僕は指名手配的な理由で入れないから、ちびっ子の面倒見とくよー」
「ちびっ子って言うな」
「チビ助?」
「チビ助じゃない!」

ギャイギャイ騒ぎ始める。
アンタレスは煽らないと気が済まないのかな??

「じゃあ行くぞー」
「ヴァルフゴールは入れるんだ」
「これでも一応元冒険者だ」
「ランクは?」
「あー……Cだったか?」
「じゃあ凄い方だ」

Cって、ベテランの中では下のイメージがある。一人前?みたいな。
年齢として例えるなら成人?まだまだひよっ子って呼ばれるやつ。

私も早くSランクとか行きたい。

「お前が規格外なだけだからな。常人がCまだ行けたら万々歳だ。
何でお前がまだC止まりなんだ」
「ヴァルフゴールは常人じゃないよ。ヴァルフゴールは強くなる。絶対」

あのステータスで常人とかそれこそありえないよ。
確かに今はデバブとか、血の覚醒がまだなのもあって弱いけど、十分強くなる。

「お前のその自信は何処からくる」
「見る目はあります」
「へーへー、信じてやるよ」

手っ取り早く換金を済ませて、ギルドを出る。
私を見てから見出そうとした冒険者は、私の後についてきたヴァルフゴールを見て辞めた。

見るからに体格に恵まれて、大柄で強そうで、大剣もブンブン振り回す人間なのに、自己評価が低いよね。

「その大剣、新調とかする?」
「まだ使えるから、大丈夫だ」
「でもボロボロだよ?」

そう、この大剣見た目がかなりボロボロなのだ。刃こぼれしていたのは見かねて直した。よくあれで今まで戦ったよ。
てかもう切れ味悪すぎて鈍器として使用してたよね君?

「大事な従者2号にそんな物持たせられません」
「じゃあ、俺と契約した後に新しいのくれ」
「今じゃなくて良いの?」
「ああ」

お願いされたなら仕方ないよね。
渋々頷いて、一応壊れない様に付与をかけておいた。
あー、こんなガラクタに付与なんて勿体無い!

魔剣とか作れるかな?作ろうかな!?

(シル、魔剣ってつくれる?)
『核となるAランク以上の純度の高い魔石を用意して下さい』
(無い!)
『話はそこからです』
(冷たい!)
『今作るのは危険という事ですよ』
(どうして?)
『普通の魔石で作ろうとして主の魔力に耐えかねて魔石が大爆発を起こす未来が見えました』
(物騒!)

やっぱり辞めておこう!
こういうのはプロに任せるべきだね。

うんうんと頷きながら、また変なこと考えてたなって顔で見られるのを華麗にスルーを決め込む。

「お待たせー」
「ん、どのくらいで売れたの?」
「それが凄いよー」

こそっと耳打ちする。
お金の話って外でしない方がいいからね。誰が聞いてるか分からないもん。
ご近所さんとかすぐ言いふらすから怖いよね。

「何と大金貨五枚と金貨九枚。口座に入れたから今あるのは金貨五枚だけだね。後ランクがCまで上がった!」
「結構行ったね。Cランク?おめでとう。まだCなんだ」

何でヴァルフゴールとおんなじこと言うの?
私自体Sランクとかあっても良いと思ってるけど、そこまでこの二人に強い魔法とか色々は見せてないんだけど?

「色々足りないだろうから、取り敢えずはい、お小遣い」
「えー、僕一応お金持ちなんだけど…」
「経費ですー。ヴァルフゴールも受け取ったんだから要らないとは言わせない」
「生憎俺はお前と違ってほぼ無一文なんでな」
「威張る事じゃないよ」

旅ってほら、色々大変じゃん?
まず、人数分の食料の調達。水は魔法で出すからいらないよ。甘味とかもいるよねー。
服は数日分用意する。同じ服で何日も過ごすとか正気の沙汰じゃない。下着は毎日変えて一日置きでいいから体を洗ってくれ頼む。
後娯楽用?荷馬車の中暇すぎるし、セリくんの遊べるものあった方がいいと思う。
荷馬車を引く馬にはちゃんといい鞍と手綱を購入した。後君たちの美味しいご飯も買ったから頑張って歩いてね。

後は私の目についたものを買っていく浪費と、セリくんのわたあめが食べたい欲望を叶えて終わった。
箱詰めにされた普通の白いわたあめが銅貨六枚(6000ベル)とか、砂糖がどれだけ貴重か物語ってるね。
あと、この町に大浴場があった!ここに永住したいと考えるほど衝撃だった。ありがとうアスピタ!!

久々の湯船を堪能して、宿に一泊素泊まりする事にする。

あ、二人部屋をニ部屋借りて、私(+シル)とセリくん、ヴァルフゴールとアンタレスと言う分かれ方だ。
大部屋はあったけど、流石に私もそこまで馬鹿じゃないから選ばなかったよ。

そこまで世間知らずじゃなくて安心したと心から安堵されたよ。

乙女として屈辱!

「セリくん、お話ししてあげよっか」
「うん、お話しして!」
「どんなお話にしようかな…」

王道のシンデレラとか白雪姫?男の子だから、もっと冒険の話とかの方がいいから…

あ、あれにしよう。

「____ある所に、好奇心旺盛で元気で明るい10歳の男の子がいました。
男の子は今日、旅の相棒を連れて旅に出る大事な日に寝坊をしてしまいました……」

やっぱり皆んな好きだよね。
十人中九人のキッズは絶対好き。間違いない。

うとうとと瞼を閉じるのに抗う姿を見て、頭を撫でる。

ニコリと微笑めば、安心した様にふにゃりと笑う。

「まだ、ねたくないのに…」

「おやすみセリくん。

いい夢を」

額にキスを落とせば、夢の国に旅立った。
毛布を深くかけてあげて、サラリと髪を撫でてから窓辺へと移動した。

空に月が二つ浮かんでるのを見れば、やっぱり異世界なんだなーって毎回思う。

窓の淵に腰を下ろし、月明かりを頼りに『薬の全て』を読み進める。

今の所薬を作れるって言う実感はないけど知識は身についてる。

ゆっくり覚えていこう。


この知識でまず、化粧水作りからスタートだ!!!

_____野望はまだまだ先の話。



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