形成級メイクで異世界転生してしまった〜まじか最高！〜

異世界転生はじまりはじまり

1話

私は吐けるもの全部吐き出して、その場を離れた。

散々な目にあった。人みたいな生物をこの手で殺めてしまった。
こちとら、穏やかなごく普通の町で生まれ育った平凡な人間だ。生き物の死を見た事も無いし、まして殺した事なんて一度もない。

鉄の匂いが鼻の奥にこびりついて離れない。
流石にこれ以上吐いたら喉が死ぬ。

「ほんとに…最悪」

神様が目の前に現れたら即座に悪態ついて思いつく限りの罵倒をしてやる。


あの白い空間にいた時、肉体をアップデートするとあった。身体能力が上がったんだ。
だから、石を投げただけで頭が破裂したし、ヒールを履いて走っていたのに追い付かれる事なくいつも以上に早く走れた。

アップデート…元いた場所とは、重力とか、何もかも違うんだと思う。だから、この世界に合わせた肉体にしたんだ。

「ゲホッ………疲れた」

さっきまで感じていた不快感とか、色んなもの、全部なくなった。精神も色々いじられたのかな。メンタル弱い方なのにもう平気だと思ってる。

冷静さを取り戻している。

あてもなく歩いていたら、小川を見つけた。
透明で綺麗な水。

「…うぅ」

川のせせらぎ、鳥の鳴き声、風の音。

ちょっぴり泣いた。

川の淵まで近づいて、膝をつく。手をつければ冷たい水の感触。飲めるか心配したのは最初だけで、喉の渇きを自覚する前に水を掬って喉の奥に流し込んでいた。

「っ…ﾝ……ｺﾞｸ」

おいしー、水ってこんな美味しいの？

お腹すいたよお母さん。お母さんのお味噌汁が飲みたいよ………？？

「………ん？？？」

水に反射して映る自分の姿を見た。
あんなに走って、髪だってボサボサだし、日に当たってるし、汗で身体中ベトベトなのに……メイク全然崩れてないじゃん。

試しにと、今朝コーラルピンクの口紅を塗った唇を親指で擦る。

「んんん？？？」

くるんと上向いた睫毛を摘んで引っ張る。

「いたっ！？」

睫毛が根本から一本抜けた。マスカラ塗ってたのに、地睫みたいじゃん。
………ん？

水で顔を洗う。

……メイクも、アイプチも…全然取れないんだけど？

てか、アイプチどこ行った？？？？

昨日の2時間かけて行ったスキンケアの成果か、肌も素晴らしい潤いを保ってる。

「え？つまり整形級ナチュラルメイクが、スッピンになったって事？？？？」

何それ最高じゃん。

「てか、なんか若返ってない？？？」

やや幼くなった顔を見て、マジか…と頭を抱えた。
神様に幾ら積めばいい??

…取り敢えず拝んどこ。

頭の中に浮かんでいた罵詈雑言が賞賛の嵐に変わったとだけ言っておこう。

 ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆

＿＿＿＿あてもなく歩いて多分2～3時間は経ったはずだ。
流石に日が傾きかけてるし、足が限界だと悲鳴を上げている。ヒールは森の中歩いてたら早い段階で折れたから捨てた。裸足で歩いてたらパンストは破けたし、足の裏痛い。

「もぅやだぁ～、人里どこよぉ」

森の中が暗くなるほど、辺りが静かになってきて、フクロウの鳴き声がどこからかする。

「うぇー疲れたぁ～～、へなちょこ体力のパンピーにこれはきついってぇ～～」

普通に泣いた。
こっち来てから泣いてばっかだわ私。

「もう無理、本当に……つかれた…」

ぐらりと体が傾く。
やばい…倒れると感じた頃には、意識が落ちた。



ｼﾞｼﾞ ｼﾞｼﾞｼﾞ


ｳｨﾝ《繭村奏の肉体が、この世界“エルディエン”と100%接続が完了しました。

これより、スキルの習得ダウンロードを開始します。

繭村奏の適性を診断

現在の所持スキル
変装
変声
話術
礼儀作法
火事場の馬鹿力
SPF50＋＋＋


職業適性…『魔法薬師』『役者』
戦闘職適性…『魔法使い』
魔法適性…極

続いてスキルを付与します。

魔力操作を習得
調合を習得
毒耐性を習得
下級魔法を習得
杖術を習得

レアスキル
鑑定眼を習得
自動迎撃を習得


続いてアイテムを贈与します。

アイテム
書物『薬の全て』を取得
調合道具一式を取得
武器『白木の杖』を取得、装備します
“金銀財宝が入った宝箱”を取得
暗器一式を取得

魔法アイテム
魔法道具マジックアイテム “収納リング”を取得、装備します
魔法衣服マジッククロウズ “物理攻撃軽減”が付与された仕立ての良い服を取得、装備します
魔法衣服マジッククロウズ “認識阻害” が付与された上質なローブを取得、装備します

聖遺物
”知識の宝庫”を取得

装備品を除く取得アイテムを全て収納リングに移動しました。

ダウンロードを終了しました。

繭村奏の覚醒を促します》