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疑問

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「なっ⁉ ゆ、勇者⁉」

 あの紅蓮色の髪の少女が⁉ 小柄で中高生のような子が⁉ 嘘だろ⁉ いやでも巨大な鬼を一瞬にして葬り去ったあの豪炎。納得できないことはない。いやむしろ勇者に相応しい力だよな。
俺は焼け焦げた地面を見つめ、体がまた震える。あまりに強大な勇者の力に。
そして、ふとある事を思い出し、俺はもう一度恐る恐る確認する。

「あ、あの、アリーチェさん」
「はい?」
「俺が転生した後って、な、何をするんでしたっけ?」
「勇者一行の教育係りですね。……あっ、だ、大丈夫ですよ村上様‼ 今のは悪い魔物だったので、力を振るっていたわけで‼」

 アリーチェさんが何かまずい事に気付いたかのような慌てて弁明をする。だが俺は言わねばならない。

「転生は、その無しで……お願いします」
「えええええ⁉ 困ります‼ 転生してください‼」
「いやいやいや⁉ こんなのみたら一気に気持ち変わりますから‼ 俺に勇者の教育係は荷が重すぎますって‼」
「そこは、特別に村上様には絶大な力を授けますので!」
「えっ? そ、そうなの?」

 俺の心の隙にアリーチェさんが食いつく。

「そうなんです! しかも勇者達でさえ持ってない力です!」
「おおおおっ……!」
「勇者達にはきっと尊敬される力ですね~、素敵な人♡、って慕ってくれますよ。あっ! あと勇者達はみんな、可愛いい女の子達ばかりですよ~」
「おおおおおっ!」

確かにあの少女、可愛らしかったような。しかも勇者達はそんな子ばかり……。

「転生しま……、あっ、あぶねえ⁉ やっぱ俺には無理ですよ‼」

 巨大な火球が記憶をよぎり、踏みとどまった。すると、アリーチェさんが縋るように話してくる。

「ちゃんと力を授けますので~‼ そ、それに勇者達はうら若き乙女ですよ‼ こ、こんなビッグチャンスはめったにないですよっ! さ、サア、テンセイ、テンセイスルヨ」
「急に胡散臭く⁉ あなたほんとに女神様⁉ いや俺には無理ですって‼ 俺の他に変わりはいくらでも、適任者はいるでしょ‼ あっ」

 俺はふいにでたその言葉に、ある疑問が浮かんだ。そもそも、アリーチェさんに、勇者の教育係をお願いされた時、なぜ真っ先にそれに気付かなかったんだろう。

 俺は落ち込んでいるアリーチェさんに、その疑問を口にする。

「何で……、俺じゃないとダメなんですか?」
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