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お出迎え(1)
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時計の針が、もうすぐ午後12時30分になろうとしていた。自宅の玄関付近で待機している爽太の顔が強ばる。緊張して落ち着きがなく、しきりに玄関の引き戸と、腕時計に目を向けていた。
今日は約束の土曜日。高木と細谷、そして、アリスと一緒に、水族館へ遊びに行くのだ。
ピンポン。
「来た……っ!!」
来客を知らせる家のチャイムが鳴り、爽太は慌てて反応した。玄関の引き戸を凝視する。鼓動は大きくなり、息も荒い。お、落ち着け、落ち着けって!
爽太は自分にそう言い聞かすと、ぎこちない足取りで玄関に進み、少し震える手で引き戸を開けた。
「あっ、爽太くん」
目の前には細谷がいた。優し気な笑みを浮かべ、小さく手を振っている。
「お、おう」
爽太はぎこちなく笑うと、玄関から外に出た。
快晴。綺麗な青空にはふんわりとした大きい雲が浮かんでいる。辺り一帯は、初夏らしい陽射しがさんさんと降り注いでいた。
「今日、暑いなっ」
爽太は片手を頭上に上げ、陽の光を少し防ぎながら呟いた。
細谷が苦笑する。
「うんっ。高木さんみたいに帽子を被ってこればよかったよ」
そう言って、細谷が顔を横に向けた。爽太が片手で陽射しを遮っている方向に、チラリと人影が見える。ああ、細谷と一緒だったのか。別々に来ると思ってた。
「迎えに来たわよっ」
少し強気な声が聞こえ、爽太はそちらに顔を向けた。
ベージュのキャスケット帽子を浅く被った、高木がいた。明るい栗色の髪にとても似合っている。
突然、爽太の瞳が丸く見開いた。
あれ? 高木、スカート履いてんじゃん。
普段学校では、パンツ姿しか見た事がない。すごく珍しい光景に、思わず目を見張る。
水色の膝丈デニムスカートについ目がいく。膝下からは、すらっと伸びる健康的な白い足。思わずドキッとした。慌てて目線を上に持っていく。トップスには、白色の七分袖カットソーを合わせている。ゆったりとした身頃。特に肩先から肘にかけては、フリルのようにふわっとしている。さらに右手首は、淡いピンク色の小ぶりなシュシュで飾られていた。全体的にシンプルな装いながらも、可愛らしい雰囲気。
こ、こういう恰好とかもすんだな……。
高木と目が合った。
「なにっ?」
「へっ!? いや! その……、なんかいつもと、恰好が違うというか」
高木が表情をムッとさせる。
「変って言いたいのっ?」
「いやいやっ……!? そ、そうじゃねえよ。そ、その……、良いと思うぞ。え~っと、特にスカートとか」
「なっ……!? ど、どこ見て……っ。こ、この変態……っ!」
高木が急に目を吊り上げた。顔を赤くし、小刻みに震える。右手は拳を握っていた。し、しまった!? お、俺は何を言って!? てか殴られるッ!!
すると突然、細谷が声を張った。
「た、高木さんの今日の服装!! とても似合ってるよねっ!!」
「ほ、細谷くん!?」
「す、すごく似合っていて、僕も良いなあって思う!」
「へっ!? いや、そ、そんなこと――、…………、そ、そう……?」
「うんっ! か、可愛いなあって思うよっ」
「かっ!? かわ――!? うぅ……、うぅ~……っ」
急にそわそわし出す高木。両手を胸のあたりでもじもじさせながら、顔が俯く。耳がとても赤い。表情は見て取れないが、たぶん恥ずかしがっているのだと思う。
「そ、爽太くんも同じ事思ってたんだよねっ!! ねっ!?」
「へっ!?」
突然、細谷にそう言われ戸惑う爽太。細谷が目線で何かを訴えている。爽太はハッとした。ほ、細谷! お前、俺のことをフォローしてっ!! さ、さすが!! 頼りになるぅ!!
「そ、そうそう!! 俺もそう思ってたんだ! た、高木! 超似合ってる! か、可愛いぞっ!」
「あっ、そ」
高木の反応は超冷たかった。下げずんだ瞳だった。
ええっ~……。細谷のときと反応が全然違う……。まあ俺がスカートとか、って言ったのが悪いんだけども……。てか、高木、細谷の前ではちょっと態度変えるよなあ……。なに? なんか弱みでも握られてんの? いや、そんな事無いか。
「じゃあ、3人揃ったし、そろそろ行かなくちゃね。爽太くん」
すると、細谷が穏やかな声で呼びかけた。場が和む。ふと、高木が小さく息をついたのが見えた。そして、表情を明るくし、口を開く。
「そうねっ。じゃあ爽太、道案内頼むわよ」
爽太の両肩が小さく跳ねる。覚悟を決めてはいたが、いざそう言われると緊張が走る。だが、行かなくてはいけない。アリスの家に。
「お、おう! じゃ、じゃあ……、行くぞ。ア、アリスの……、いひぇに!!」
爽太は盛大に噛んだ。
シーンと静まる周囲。
細谷が苦笑を浮かべる。
高木が、小声で言った。
「ださっ……」
「うっ!? い、行くぞ! お、遅れんなよ!!」
爽太は顔を赤くしながら声を張る。前を行く爽太の後を、細谷と高木がついて行った。
今日は約束の土曜日。高木と細谷、そして、アリスと一緒に、水族館へ遊びに行くのだ。
ピンポン。
「来た……っ!!」
来客を知らせる家のチャイムが鳴り、爽太は慌てて反応した。玄関の引き戸を凝視する。鼓動は大きくなり、息も荒い。お、落ち着け、落ち着けって!
爽太は自分にそう言い聞かすと、ぎこちない足取りで玄関に進み、少し震える手で引き戸を開けた。
「あっ、爽太くん」
目の前には細谷がいた。優し気な笑みを浮かべ、小さく手を振っている。
「お、おう」
爽太はぎこちなく笑うと、玄関から外に出た。
快晴。綺麗な青空にはふんわりとした大きい雲が浮かんでいる。辺り一帯は、初夏らしい陽射しがさんさんと降り注いでいた。
「今日、暑いなっ」
爽太は片手を頭上に上げ、陽の光を少し防ぎながら呟いた。
細谷が苦笑する。
「うんっ。高木さんみたいに帽子を被ってこればよかったよ」
そう言って、細谷が顔を横に向けた。爽太が片手で陽射しを遮っている方向に、チラリと人影が見える。ああ、細谷と一緒だったのか。別々に来ると思ってた。
「迎えに来たわよっ」
少し強気な声が聞こえ、爽太はそちらに顔を向けた。
ベージュのキャスケット帽子を浅く被った、高木がいた。明るい栗色の髪にとても似合っている。
突然、爽太の瞳が丸く見開いた。
あれ? 高木、スカート履いてんじゃん。
普段学校では、パンツ姿しか見た事がない。すごく珍しい光景に、思わず目を見張る。
水色の膝丈デニムスカートについ目がいく。膝下からは、すらっと伸びる健康的な白い足。思わずドキッとした。慌てて目線を上に持っていく。トップスには、白色の七分袖カットソーを合わせている。ゆったりとした身頃。特に肩先から肘にかけては、フリルのようにふわっとしている。さらに右手首は、淡いピンク色の小ぶりなシュシュで飾られていた。全体的にシンプルな装いながらも、可愛らしい雰囲気。
こ、こういう恰好とかもすんだな……。
高木と目が合った。
「なにっ?」
「へっ!? いや! その……、なんかいつもと、恰好が違うというか」
高木が表情をムッとさせる。
「変って言いたいのっ?」
「いやいやっ……!? そ、そうじゃねえよ。そ、その……、良いと思うぞ。え~っと、特にスカートとか」
「なっ……!? ど、どこ見て……っ。こ、この変態……っ!」
高木が急に目を吊り上げた。顔を赤くし、小刻みに震える。右手は拳を握っていた。し、しまった!? お、俺は何を言って!? てか殴られるッ!!
すると突然、細谷が声を張った。
「た、高木さんの今日の服装!! とても似合ってるよねっ!!」
「ほ、細谷くん!?」
「す、すごく似合っていて、僕も良いなあって思う!」
「へっ!? いや、そ、そんなこと――、…………、そ、そう……?」
「うんっ! か、可愛いなあって思うよっ」
「かっ!? かわ――!? うぅ……、うぅ~……っ」
急にそわそわし出す高木。両手を胸のあたりでもじもじさせながら、顔が俯く。耳がとても赤い。表情は見て取れないが、たぶん恥ずかしがっているのだと思う。
「そ、爽太くんも同じ事思ってたんだよねっ!! ねっ!?」
「へっ!?」
突然、細谷にそう言われ戸惑う爽太。細谷が目線で何かを訴えている。爽太はハッとした。ほ、細谷! お前、俺のことをフォローしてっ!! さ、さすが!! 頼りになるぅ!!
「そ、そうそう!! 俺もそう思ってたんだ! た、高木! 超似合ってる! か、可愛いぞっ!」
「あっ、そ」
高木の反応は超冷たかった。下げずんだ瞳だった。
ええっ~……。細谷のときと反応が全然違う……。まあ俺がスカートとか、って言ったのが悪いんだけども……。てか、高木、細谷の前ではちょっと態度変えるよなあ……。なに? なんか弱みでも握られてんの? いや、そんな事無いか。
「じゃあ、3人揃ったし、そろそろ行かなくちゃね。爽太くん」
すると、細谷が穏やかな声で呼びかけた。場が和む。ふと、高木が小さく息をついたのが見えた。そして、表情を明るくし、口を開く。
「そうねっ。じゃあ爽太、道案内頼むわよ」
爽太の両肩が小さく跳ねる。覚悟を決めてはいたが、いざそう言われると緊張が走る。だが、行かなくてはいけない。アリスの家に。
「お、おう! じゃ、じゃあ……、行くぞ。ア、アリスの……、いひぇに!!」
爽太は盛大に噛んだ。
シーンと静まる周囲。
細谷が苦笑を浮かべる。
高木が、小声で言った。
「ださっ……」
「うっ!? い、行くぞ! お、遅れんなよ!!」
爽太は顔を赤くしながら声を張る。前を行く爽太の後を、細谷と高木がついて行った。
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