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第9話 お好み焼き屋 たけもと
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『お好み焼き屋 たけもと』
爽太の家の玄関口にかかっている暖簾を正面に、爽太とアリスは立ち止まっていた。爽太は横にいるアリスにチラリと視線を向ける。アリスは満月のように目を丸くし、頭上にある暖簾を熱心に眺めていた。瞳はキラキラと輝いていて、興味津々といった様子。そんなアリスに、爽太は少し安心する。
良かった、なんだか楽しそうな感じで。
すると、アリスが爽太の方へ振り向いた。愛らしく小首を傾け、小さな口をそっと開く。
「お・み・き。たけもと?」
その言葉に、爽太は思わず目を見張る。つい笑い声が口からこぼれた。
「ぷっ! あははっ!」
なるほどなぁ。アリスは漢字が苦手で読めなんいだな。
「そうた?」
「あっ、いや、な、なんでもない、くくくっ……」
「? …………、おみき、たけもと?」
「つっ! ぶわっははははっ!!」
爽太の笑い声に何かを感じ取ったのか、アリスの目がスッと細くなった。表情は冷ややかになり、目元をピクピクとさせながら、爽太に睨みを利かせる。
「…………、そ・う・たッ」
「あっ……、いや、あの、な、何でもないです……、ごめんなさい」
アリスの重く低い声に、おもわずたじろぐ。
ちょっと笑い過ぎちゃったな……。
爽太が反省していると、アリスがおもむろに尋ねてきた。
「おこのみ・やき?」
「えっ?」
そう言うと、アリスは少し遠慮気味に暖簾を指刺した。『それで合っているかな?』とうかがうかのように。爽太は慌てて返答する。
「お、おうっ! あ、合ってる! オッケー! イエス! お好み焼き!」
アリスの表情がぱあっと明るくなる。頬はふっくらと膨らみ、口元が微笑む。愛らしい表情に、爽太の鼓動が大きく跳ねる。慌てて視線を外した。
「そうた?」
アリスが不思議そうに声をかけてくるが、緊張でそちらに向けない。体が妙に火照り、頭が上手く回らない。爽太は慌てて頭を振る。
ここで立ち止まっている場合ではない。
爽太はぎこちない手で、玄関の引き戸に手をかけた。
カラカラと乾いた音が響き、ソースのほのかな香りがふわっと出迎えてくれる。隣にいるアリスが、そわそわと少しはしゃいでいるのが横目でうかがえた。爽太は口元に苦笑を浮かべながらも、玄関をまたぎ店の中へ。アリスも、それに続く。
きゅっ。
爽太の服の袖をつまみながら。
なっ……。
爽太は片腕の袖にかかる小さな引力に、気持ちが大きく揺さぶられる。だが、どうすればいいかわからず、そのままアリスを引き連れ一緒に家に入っていた。するとちょうどそこには、爽太の母である絹江の姿。
「えっ?」
絹江が目を見開き、驚いた顔で爽太とアリスを見つめていた。爽太の全身が固まる。すると隣にいるアリスが、ぺこりと礼儀正しくお辞儀をした。
「あっ、あら。こ、こんにちは」
絹江が戸惑いながらもアリスと挨拶を交わす。そして、爽太に視線をよこす。一体どういうことなんだい? と問いかけるように。何をどう話すべきか。爽太は頭を悩ますも何も思い浮かばない。とりあえず、いつも口にしている言葉を、裏返った声で発した。
「たっ! たらひぃまっ!」
「お……、おかえり」
アリスが可笑しそうに見守る中、爽太と絹江は、互いに口元を引きつらせながら言葉を交わしたのだった。
爽太の家の玄関口にかかっている暖簾を正面に、爽太とアリスは立ち止まっていた。爽太は横にいるアリスにチラリと視線を向ける。アリスは満月のように目を丸くし、頭上にある暖簾を熱心に眺めていた。瞳はキラキラと輝いていて、興味津々といった様子。そんなアリスに、爽太は少し安心する。
良かった、なんだか楽しそうな感じで。
すると、アリスが爽太の方へ振り向いた。愛らしく小首を傾け、小さな口をそっと開く。
「お・み・き。たけもと?」
その言葉に、爽太は思わず目を見張る。つい笑い声が口からこぼれた。
「ぷっ! あははっ!」
なるほどなぁ。アリスは漢字が苦手で読めなんいだな。
「そうた?」
「あっ、いや、な、なんでもない、くくくっ……」
「? …………、おみき、たけもと?」
「つっ! ぶわっははははっ!!」
爽太の笑い声に何かを感じ取ったのか、アリスの目がスッと細くなった。表情は冷ややかになり、目元をピクピクとさせながら、爽太に睨みを利かせる。
「…………、そ・う・たッ」
「あっ……、いや、あの、な、何でもないです……、ごめんなさい」
アリスの重く低い声に、おもわずたじろぐ。
ちょっと笑い過ぎちゃったな……。
爽太が反省していると、アリスがおもむろに尋ねてきた。
「おこのみ・やき?」
「えっ?」
そう言うと、アリスは少し遠慮気味に暖簾を指刺した。『それで合っているかな?』とうかがうかのように。爽太は慌てて返答する。
「お、おうっ! あ、合ってる! オッケー! イエス! お好み焼き!」
アリスの表情がぱあっと明るくなる。頬はふっくらと膨らみ、口元が微笑む。愛らしい表情に、爽太の鼓動が大きく跳ねる。慌てて視線を外した。
「そうた?」
アリスが不思議そうに声をかけてくるが、緊張でそちらに向けない。体が妙に火照り、頭が上手く回らない。爽太は慌てて頭を振る。
ここで立ち止まっている場合ではない。
爽太はぎこちない手で、玄関の引き戸に手をかけた。
カラカラと乾いた音が響き、ソースのほのかな香りがふわっと出迎えてくれる。隣にいるアリスが、そわそわと少しはしゃいでいるのが横目でうかがえた。爽太は口元に苦笑を浮かべながらも、玄関をまたぎ店の中へ。アリスも、それに続く。
きゅっ。
爽太の服の袖をつまみながら。
なっ……。
爽太は片腕の袖にかかる小さな引力に、気持ちが大きく揺さぶられる。だが、どうすればいいかわからず、そのままアリスを引き連れ一緒に家に入っていた。するとちょうどそこには、爽太の母である絹江の姿。
「えっ?」
絹江が目を見開き、驚いた顔で爽太とアリスを見つめていた。爽太の全身が固まる。すると隣にいるアリスが、ぺこりと礼儀正しくお辞儀をした。
「あっ、あら。こ、こんにちは」
絹江が戸惑いながらもアリスと挨拶を交わす。そして、爽太に視線をよこす。一体どういうことなんだい? と問いかけるように。何をどう話すべきか。爽太は頭を悩ますも何も思い浮かばない。とりあえず、いつも口にしている言葉を、裏返った声で発した。
「たっ! たらひぃまっ!」
「お……、おかえり」
アリスが可笑しそうに見守る中、爽太と絹江は、互いに口元を引きつらせながら言葉を交わしたのだった。
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