1 / 35
転校生
しおりを挟む
アリス。
黒板にそう書かれた名前。
竹本爽太は、イギリスから転校して来た美少女に、目が釘付けだった。
外国人らしい整った目鼻立ちに、キレイな金色の髪。
同じ10歳とは思えない美し過ぎる容姿に、爽太を含めた4年1組の全員がアリスをだまって見つめていた。
「じゃあアリスちゃんは、爽太くんの隣の席に座ってもらおうかしらね」
担任の藤井教諭の優し気な声。アリスは藤井教諭にスッと顔を向けた。どこか不思議そうな顔。すると藤井教諭は微笑みながら正面を向き、声を張った。
「爽太くん」
「!? はっ、はい!!」
ガタッ!
国語の授業で読みを当てられた時みたいに思わず立ち上がってしまった。しかも大きな返事をして。
クスクスクス。
周りから聞こえる笑い声に、爽太はハッとする。
慌てて周りを見ると、クラスの全員が爽太を見て笑いを必死に堪えていた。
爽太の顔が真っ赤になる。クラスの全員にキッと鋭い視線を送りつけると、皆まずいとばかりにそそくさと前を向く。
爽太の視線もそれにつられて前を向くと、その先にはアリスのニコッとした可愛い顔があった。
爽太の胸が高鳴る。
藤井教諭が、アリスの背中をそっと優しく押した。
アリスが笑顔いっぱいで、爽太の方に向かって、席と席の間を歩いてくる。
水色のワンピースに白の薄いカーディガンを羽織り、頭には黒のリボンが飾られたその姿。不思議の国に迷い込んだ少女を重ねてしまう。誤って本から飛び出し、日本の小学校に迷い込んでしまったかのようだった。
冒険を楽しむかのような軽い足取りで、アリスは爽太の隣の席に辿り着いた。凍ったかのようにピクリとも動かない爽太。アリスは少し可笑しそうに見つめる。
すると急にアリスの瞳が猫のように大きく見開いた。愛らしい小さな鼻をクンクンと動かしながら。
その変わりように爽太が目を見張った瞬間だった。
アリスは好奇心いっぱいの瞳で、爽太へグイッと自分の顔を近づけた。
「わわっ!?」
情けない声と共に、爽太は尻もちをつくような形で自分の椅子に座った。
同時に、アリスもスッと自分の席に着く。なおもアリスは丸い瞳を輝かせ、爽太に顔を近づけ、小さな鼻をクンクンと揺らす。
爽太の心臓がバクバクと大きな音を立てる。クラスがざわざわと騒ぎ出すなか、アリスはこそっと、爽太にだけ聞こえるように告げた。
「It smells good(良い匂い)」
「へっ?」
爽太の腑抜けた声に、アリスはクンクンと鼻を揺らしながら笑ったのだった。
黒板にそう書かれた名前。
竹本爽太は、イギリスから転校して来た美少女に、目が釘付けだった。
外国人らしい整った目鼻立ちに、キレイな金色の髪。
同じ10歳とは思えない美し過ぎる容姿に、爽太を含めた4年1組の全員がアリスをだまって見つめていた。
「じゃあアリスちゃんは、爽太くんの隣の席に座ってもらおうかしらね」
担任の藤井教諭の優し気な声。アリスは藤井教諭にスッと顔を向けた。どこか不思議そうな顔。すると藤井教諭は微笑みながら正面を向き、声を張った。
「爽太くん」
「!? はっ、はい!!」
ガタッ!
国語の授業で読みを当てられた時みたいに思わず立ち上がってしまった。しかも大きな返事をして。
クスクスクス。
周りから聞こえる笑い声に、爽太はハッとする。
慌てて周りを見ると、クラスの全員が爽太を見て笑いを必死に堪えていた。
爽太の顔が真っ赤になる。クラスの全員にキッと鋭い視線を送りつけると、皆まずいとばかりにそそくさと前を向く。
爽太の視線もそれにつられて前を向くと、その先にはアリスのニコッとした可愛い顔があった。
爽太の胸が高鳴る。
藤井教諭が、アリスの背中をそっと優しく押した。
アリスが笑顔いっぱいで、爽太の方に向かって、席と席の間を歩いてくる。
水色のワンピースに白の薄いカーディガンを羽織り、頭には黒のリボンが飾られたその姿。不思議の国に迷い込んだ少女を重ねてしまう。誤って本から飛び出し、日本の小学校に迷い込んでしまったかのようだった。
冒険を楽しむかのような軽い足取りで、アリスは爽太の隣の席に辿り着いた。凍ったかのようにピクリとも動かない爽太。アリスは少し可笑しそうに見つめる。
すると急にアリスの瞳が猫のように大きく見開いた。愛らしい小さな鼻をクンクンと動かしながら。
その変わりように爽太が目を見張った瞬間だった。
アリスは好奇心いっぱいの瞳で、爽太へグイッと自分の顔を近づけた。
「わわっ!?」
情けない声と共に、爽太は尻もちをつくような形で自分の椅子に座った。
同時に、アリスもスッと自分の席に着く。なおもアリスは丸い瞳を輝かせ、爽太に顔を近づけ、小さな鼻をクンクンと揺らす。
爽太の心臓がバクバクと大きな音を立てる。クラスがざわざわと騒ぎ出すなか、アリスはこそっと、爽太にだけ聞こえるように告げた。
「It smells good(良い匂い)」
「へっ?」
爽太の腑抜けた声に、アリスはクンクンと鼻を揺らしながら笑ったのだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる