水族館の鈴木くん

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続・鈴木くんのせいなんだからっ!

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 お姉ちゃんに鈴木くんのことでからかわれてから時間が経ち、今は夜の7時半過ぎ。もう晩ご飯は食べた。そのあとは、自分の部屋のベットでゴロゴロとくつろいでいる、つもり……。いつも通りの私の時間なのだけど、

『鈴木くんと何かあったのぉ~??』

 「つっ……!」

 お姉ちゃんに言われたこと思い出したら、顔が……、また熱くなる。

「ううっ! わ、私らしくないっ……!」

 自分につい言い聞かせてしまった。でも、ほんとうのことだから!

「な、なんで私が、男子のことで、は、恥ずかしがらなきゃいけないのよっ!」

 恥ずかしがったり、照れたりするのは、男子の方なのっ! だって私は可愛い小悪魔系のイケてる女子なんだからっ! 主導権は私! なのに……、

『今週の土曜日、水族館行こっ!』

 鈴木くんのこと思い出したら、

「はうっ……、ううっ~……!」

 恥ずかしさに耐えられない。

 枕に顔を思わず埋める。少しひんやりとした肌触りが、今はすごく心地いい。でも、それも一瞬のこと。すぐ、顔の熱さが戻ってしまう。

 鈴木くんのせい。

 教室での鈴木くんは、い、いつもぬぼーっとしてて、でもたまに穏やかな笑みを浮かべたり、あと小動物みたいな平和な顔したり、それから、えっと~……、わ、私の席の隣にいる、ただのモブ男子だったのに……!

 枕から少しだけ、ほてった顔を上げた。

「い、いきなりあんなこと言うなんて思わないもん……!」

 2人で水族館行こう、ってさ。……それって、

 デート……??

「なっ、ないないないっ!! 鈴木くんとデート!? そんなわけない!!」

 鈴木くんは全然そんなつもりじゃなかったもん! だって、水族館に誘ってきたとき、すっごく嬉しそうに笑っていて。ほんと真っ直ぐっで。

「だ、だから、で、デー、なんとかじゃないのっ! ただ純粋に、私と水族館に行きたいだけ! ……、そう、イルカの写メ一緒に取るだけなのっ」

 で、でもね。

 鈴木くんが、私を水族館に誘った後、何かに気づいたように、ハッとしちゃって。そしたら鈴木くん、

「顔、すっごく赤くなって……」

 それってさ、つまり、そういうことだよね? 鈴木くんも、その、で、で、デートって思った。

 カアアアアアア。

 っと、私の頬と耳が熱くなる、そんな言葉がピッタリな気がした。

「わわわっ!?!? だ、ダメダメ!! なんで恥ずかしがるのっ! わ・た・しっ!!」

 私らしくないっ!! 

「男子とので、デートなんて、いつものことじゃない!」

 そう! 相手が鈴木くんていう、いつもとはタイプの違う男子な、だけっ!!

「すーはー、すーはー、落ち着いて、華。私の方が上なんだから」

 高校で、イケてる男子達とデートを何回経験したことか。そして、なんか残念なところが多くて、フッたことも何度あることか。

「ふふっ……、いい機会じゃない。たまには、おとなしめモブ系の、水族館が大好きな鈴木くんと、デート楽しもうじゃない」

 主導権は私が握るのっ。ふふっ……、ちょっと余裕でできたかも。

「明日は、鈴木くんに声かけるんだから! 昨日の水族館のことなんだけど、って」

 きっと慌てるだろうなぁ、ふふっ、かわいい。断られると思っちゃうのかな。

「ふふっ……、安心して鈴木くん。そこは、誘ってくれたお礼として、一回は一緒にーーー」

 ピコン!

「ひゃっ! な、なに!?」

 私のスマホから着信音。こんな夜に誰から?? あっ、

「玲奈(れな)からかな」

 うん、きっとそう。だって……、お昼休み、私のいつもと違う様子に、興味津々だったから。

「ほんとしつこいんだから、何にも教えないよっ、と!?!?」

 チャットアプリを起動した。そこに表示された普通のご挨拶に、玲奈じゃないことは、すぐにわかった。

 なんてことない普通の文だった、なのにね、

『こんばんは、一条さん。鈴木です』

「す、鈴木くんっ!?!?!?」

 一呼吸おいた鼓動が大きく脈打ち、私の全身にまた、熱さが戻った。
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