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ぬる暑い中庭にて② 我バストを想う
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「今日も暑いですねっ」
小走りでこっちに来た結衣《ゆい》ちゃんは、少し息を乱しながら笑う。右手で胸元辺りの半袖の白シャツをつまみ、パタパタと風を送る仕草がなんともエロ可愛い。バストが小ぶりなのにこの破壊力。これで中一なのだから末恐ろしいぜ………。おっと、今はそんなことよりも。
「隣座る?」
俺がベンチの端によると、「どうもです」と結衣ちゃんは嬉しそうに隣に腰掛けた。
「ふぅー。ここ結構涼しいですねっ」
「そうそう、木陰で風もよく通るから」
結衣ちゃんの明るい栗色の髪がふわっとゆれる。
「あ~、確かに。でも、なまぬるい………」
「それが良いのよ」
「え~、なんでですか。涼しい方が良いですよ」
結衣ちゃんは可笑しそうに言うと、手に持っていた紙パックのジュースにストローを刺した。い、いちご牛乳??
「どうしたんです??」
「あっ、いや、なんか珍しいの飲むなぁって」
「これですか?」
結衣ちゃんがいちご牛乳を見せてくれた。俺は頷き、「そうそう」と答える。
「甘さでよけいに喉乾かない?」
「う~ん、そうですね………、あっ、それが良いんですよ~」
「ええっー? なにそれ?」
俺の戸惑いに、結衣ちゃんはイタズラ気に笑う。
「飲んで、すぐ喉が乾いて、また飲んでの繰り返し。やめられない………、止められない………、いちご牛乳ですっ、ふふっ」
「こわ! いちご牛乳中毒!?」
「はい! 休日はスーパーやコンビニで買い占めします」
「狂気!!」
「結衣のお部屋は『いちご牛乳』の柄です」
「落ちつかない!!」
「ドアには『いちご牛乳』のネームプレートを付けています」
「もはや自分自身が!?」
恐ろしい、◯魂の銀さんよりも重症だ。『いちご牛乳』の掛け軸がまともにさえ思える。
「結衣ちゃんも、いちごギューニャーだったんだな………」
「えっ? なんですそれ? きみ悪いんで通報しますね」
「待て待て! 最後にその仕打ちはないだろ!」
ここにきてまさかの裏切りだった。恐ろしい娘!
「ぷふっ、冗談ですよ、冗談。アニメオリジナルのやつですよね、それ。ふふっ」
おっ、知っていたか。銀さんの意味不明な屁理屈が良い味だしてんだよね。また見たくなってくるぜ。
「あっ、それと、さっき私が言ったのも冗談ですからねっ」
と、結衣ちゃんは楽しそうに笑いながらストローを勢いよく吸い込んだ。
「うーん! 甘くて美味しいっ。ふぅー」
「でも好きなんだねぇ、いちご牛乳」
「はいっ、自販機やコンビニで見かけたらつい買っちゃいます。せんぱいはオレンジが好きなんですか?」
「ん? ん~、ほんとは炭酸系の飲み物が好きなんだけど、学校の自販機に無いからさ。なんとなく、オレンジばっか選んじゃうんだよね」
そう言って、俺はオレンジジュースを眺める。まあ、美味しいから良いんだけどさ。
「ふーん、じゃあ、いちご牛乳はどうですか?」
「ははっ、それは無い無い。あっ」
結衣ちゃんの不意な提案に、素直な声が出てしまった。まずいことしたかな………?
「い、今のはなんというか冗談で」
「ウソです。結衣には分かります。ふーん、そうですか、そんなに嫌ですか」
むくーっ、と両頬をふくらませていた。とても不満気な表情だ。うむ………、どうしたものか。可愛い顔が台無しだぜぇ、と言ってみる? いや、余計に怒られるな。
「なんで嫌なんですかッ?」
「あ~………、いや、その、甘すぎてさ、余計に喉渇くから………」
「その甘さが良いんですよッ! 渇きとか気にならないですッ! それにいちご味なのでわりとスッキリした後味ですよ」
「そ、そうかなぁ」
「ですです、なんで交換しましょうよ」
結衣ちゃんが、俺にいちご牛乳を差し出した。
「えっ? オレンジジュースと?」
「はい、それしかないじゃないですか」
グイグイと、俺が持っているオレンジジュースにいちご牛乳を押しつける結衣ちゃん。ちょ、ちょいちょい、そんな無理やりだとさらに飲む気がなくなる。人の嫌がるものを押し付けてはダメだぞ、とは言いにくい。さて、どう断ったら………、ん?
俺は結衣ちゃんの持っているいちご牛乳を見る。
ストローがささっている。それは飲んだから。誰が? 結衣ちゃんしかいない。それを交換、それって………、間接キス!?
「せんぱい、早く交換してくださいよ」
「へっ!? いや、ちょっとマズいと思うのだが!?」
「マズくないですよッ!! 美味しいですッ!!」
「そ、そうじゃなくて………!?」
ご立腹な結衣ちゃんに、つい声が小さくなる。どうしよ、俺が気にしすぎているのか!? てか結衣ちゃん気づかないの!? もうここははっきりと、『俺と間接キスになるぜ、可愛いベイビー』と言うべきか、って言えるかぁ!!
「むむぅ、せんぱいは意地でも交換しないつもりですね………」
意地とかじゃなくて気まずいの!! はやく気づいて、間接キスに! 結衣ちゃん!!
「…………、あっ!!」
おっ!! 気づいてくれた! んん?
結衣ちゃんはなぜか俺の後ろを指差した。そして、
「春奈せんぱいです!」
「いいっ!? ま、まじで!?」
なんでこんなタイミングで!?
昨日のビンタされた恐怖も思い出しながら、俺は慌てて後ろを振り返った。そこに、春奈の姿はなかった。てか、誰もいない??
「すきあり!!」
結衣ちゃんのイタズラな声音と同時に、俺の片手が軽くなる。慌てて隣に視線を戻すと、結衣ちゃんはベンチから立ち上がって駆け出していた。
「ゆ、結衣ちゃん!!」
俺から少し離れてから、振り返った結衣ちゃん。小さな口元は楽しげに微笑んでいる。淡い唇がそっと開いた。
「いただきますねっ」
「えっ?? あっ!」
結衣ちゃんが片手に持っているオレンジジュース。お、俺の!!
「隣に置いときましたからー!」
一瞬なんのことかと思ったが、俺はハッとして、さっきまで結衣ちゃんが座っていたとこに目をやる。そこには、いちご牛乳が置かれていた。ま、まんまとしてやられた!
「爽太せんぱ~い!」
ぐぐっ、はいはい、なんでしょう。
俺は悔しく思いながらも、結衣ちゃんに目を向ける。
明るい栗色の髪に、小さな顔立ちに映えるボブカットの彼女。くりっとした可愛い目つきはどこかキラキラしていて、いつも面白いことを探している好奇心に満ちている。
この子にターゲットにされた獲物(男子)はことごとく彼女の魔の手に落ちていく(勝手に惚れて、告白して、無惨に振られる)と聞いている。
「ちゃんと、いちご牛乳飲んでくださいよっ! では、さらばですっ!」
そういって、駆け足で去っていく結衣ちゃん。ぱっと見は明るくてフランクな女子、だがその裏の顔は小悪魔系なのだ。
ほんと恐ろしくも超かわいい後輩だ。
結衣ちゃんが去った後の中庭は、ときおり吹く風に揺れる青葉の音が心地よく響いていた。俺の気持ちもなんだか落ち着く。
さて、どうしたものか。
俺はいちご牛乳を手に取る。ひんやりとまだ冷たい。飲むなら冷たいうちだ。
刺さったままのストローを見ると、じんわり変な焦りが込み上げてくる。こらこら、気にしすぎだ。放課後、部室で結衣ちゃんに感想を聞かれるかもしれないなら。
俺はストローを勢いよく吸い込んだ。
あっまい、すごく甘い。
ストローから口を離す。口のなかに広がる、牛乳といちごのやわらかな甘味が喉をせかす。
「またすぐ飲みたくなるなっ」
またストローをくわえて、あまあまの世界へ。うん、美味しい。たまには、いちご牛乳もありかもしれん。
夏の木漏れ日のなか、ひとり平和にのんびりと。いちご牛乳を片手に、ふと思った。今度は、一緒にいちご牛乳を飲むのも良いな。
いつになるかは、わからないけど。明日かも知れないし、1週間後か、はては1ヶ月後、もしかしたら1年後にとか。そのとき、ふと思った。
「1年後………、結衣ちゃん、バストアップしてんのかな」
いちご牛乳の効果を期待したい。がんばれ、結衣ちゃん!
昼休み終了前の予鈴が、中庭に響いた。おわっ!? ゆっくりしすぎた!
いちご牛乳を飲み干し、ゴミ箱へ。結衣ちゃんのバストに想いをはせつつ、自分の教室へ、クールに戻るぜっ!!
「こらっー!! 廊下を走るなっ!」
「はうっ! す、すいませんっ!」
通りすがりの先生にめっちゃ怒られましたとさ。天罰かな、とほほ………泣(ノД`)。
小走りでこっちに来た結衣《ゆい》ちゃんは、少し息を乱しながら笑う。右手で胸元辺りの半袖の白シャツをつまみ、パタパタと風を送る仕草がなんともエロ可愛い。バストが小ぶりなのにこの破壊力。これで中一なのだから末恐ろしいぜ………。おっと、今はそんなことよりも。
「隣座る?」
俺がベンチの端によると、「どうもです」と結衣ちゃんは嬉しそうに隣に腰掛けた。
「ふぅー。ここ結構涼しいですねっ」
「そうそう、木陰で風もよく通るから」
結衣ちゃんの明るい栗色の髪がふわっとゆれる。
「あ~、確かに。でも、なまぬるい………」
「それが良いのよ」
「え~、なんでですか。涼しい方が良いですよ」
結衣ちゃんは可笑しそうに言うと、手に持っていた紙パックのジュースにストローを刺した。い、いちご牛乳??
「どうしたんです??」
「あっ、いや、なんか珍しいの飲むなぁって」
「これですか?」
結衣ちゃんがいちご牛乳を見せてくれた。俺は頷き、「そうそう」と答える。
「甘さでよけいに喉乾かない?」
「う~ん、そうですね………、あっ、それが良いんですよ~」
「ええっー? なにそれ?」
俺の戸惑いに、結衣ちゃんはイタズラ気に笑う。
「飲んで、すぐ喉が乾いて、また飲んでの繰り返し。やめられない………、止められない………、いちご牛乳ですっ、ふふっ」
「こわ! いちご牛乳中毒!?」
「はい! 休日はスーパーやコンビニで買い占めします」
「狂気!!」
「結衣のお部屋は『いちご牛乳』の柄です」
「落ちつかない!!」
「ドアには『いちご牛乳』のネームプレートを付けています」
「もはや自分自身が!?」
恐ろしい、◯魂の銀さんよりも重症だ。『いちご牛乳』の掛け軸がまともにさえ思える。
「結衣ちゃんも、いちごギューニャーだったんだな………」
「えっ? なんですそれ? きみ悪いんで通報しますね」
「待て待て! 最後にその仕打ちはないだろ!」
ここにきてまさかの裏切りだった。恐ろしい娘!
「ぷふっ、冗談ですよ、冗談。アニメオリジナルのやつですよね、それ。ふふっ」
おっ、知っていたか。銀さんの意味不明な屁理屈が良い味だしてんだよね。また見たくなってくるぜ。
「あっ、それと、さっき私が言ったのも冗談ですからねっ」
と、結衣ちゃんは楽しそうに笑いながらストローを勢いよく吸い込んだ。
「うーん! 甘くて美味しいっ。ふぅー」
「でも好きなんだねぇ、いちご牛乳」
「はいっ、自販機やコンビニで見かけたらつい買っちゃいます。せんぱいはオレンジが好きなんですか?」
「ん? ん~、ほんとは炭酸系の飲み物が好きなんだけど、学校の自販機に無いからさ。なんとなく、オレンジばっか選んじゃうんだよね」
そう言って、俺はオレンジジュースを眺める。まあ、美味しいから良いんだけどさ。
「ふーん、じゃあ、いちご牛乳はどうですか?」
「ははっ、それは無い無い。あっ」
結衣ちゃんの不意な提案に、素直な声が出てしまった。まずいことしたかな………?
「い、今のはなんというか冗談で」
「ウソです。結衣には分かります。ふーん、そうですか、そんなに嫌ですか」
むくーっ、と両頬をふくらませていた。とても不満気な表情だ。うむ………、どうしたものか。可愛い顔が台無しだぜぇ、と言ってみる? いや、余計に怒られるな。
「なんで嫌なんですかッ?」
「あ~………、いや、その、甘すぎてさ、余計に喉渇くから………」
「その甘さが良いんですよッ! 渇きとか気にならないですッ! それにいちご味なのでわりとスッキリした後味ですよ」
「そ、そうかなぁ」
「ですです、なんで交換しましょうよ」
結衣ちゃんが、俺にいちご牛乳を差し出した。
「えっ? オレンジジュースと?」
「はい、それしかないじゃないですか」
グイグイと、俺が持っているオレンジジュースにいちご牛乳を押しつける結衣ちゃん。ちょ、ちょいちょい、そんな無理やりだとさらに飲む気がなくなる。人の嫌がるものを押し付けてはダメだぞ、とは言いにくい。さて、どう断ったら………、ん?
俺は結衣ちゃんの持っているいちご牛乳を見る。
ストローがささっている。それは飲んだから。誰が? 結衣ちゃんしかいない。それを交換、それって………、間接キス!?
「せんぱい、早く交換してくださいよ」
「へっ!? いや、ちょっとマズいと思うのだが!?」
「マズくないですよッ!! 美味しいですッ!!」
「そ、そうじゃなくて………!?」
ご立腹な結衣ちゃんに、つい声が小さくなる。どうしよ、俺が気にしすぎているのか!? てか結衣ちゃん気づかないの!? もうここははっきりと、『俺と間接キスになるぜ、可愛いベイビー』と言うべきか、って言えるかぁ!!
「むむぅ、せんぱいは意地でも交換しないつもりですね………」
意地とかじゃなくて気まずいの!! はやく気づいて、間接キスに! 結衣ちゃん!!
「…………、あっ!!」
おっ!! 気づいてくれた! んん?
結衣ちゃんはなぜか俺の後ろを指差した。そして、
「春奈せんぱいです!」
「いいっ!? ま、まじで!?」
なんでこんなタイミングで!?
昨日のビンタされた恐怖も思い出しながら、俺は慌てて後ろを振り返った。そこに、春奈の姿はなかった。てか、誰もいない??
「すきあり!!」
結衣ちゃんのイタズラな声音と同時に、俺の片手が軽くなる。慌てて隣に視線を戻すと、結衣ちゃんはベンチから立ち上がって駆け出していた。
「ゆ、結衣ちゃん!!」
俺から少し離れてから、振り返った結衣ちゃん。小さな口元は楽しげに微笑んでいる。淡い唇がそっと開いた。
「いただきますねっ」
「えっ?? あっ!」
結衣ちゃんが片手に持っているオレンジジュース。お、俺の!!
「隣に置いときましたからー!」
一瞬なんのことかと思ったが、俺はハッとして、さっきまで結衣ちゃんが座っていたとこに目をやる。そこには、いちご牛乳が置かれていた。ま、まんまとしてやられた!
「爽太せんぱ~い!」
ぐぐっ、はいはい、なんでしょう。
俺は悔しく思いながらも、結衣ちゃんに目を向ける。
明るい栗色の髪に、小さな顔立ちに映えるボブカットの彼女。くりっとした可愛い目つきはどこかキラキラしていて、いつも面白いことを探している好奇心に満ちている。
この子にターゲットにされた獲物(男子)はことごとく彼女の魔の手に落ちていく(勝手に惚れて、告白して、無惨に振られる)と聞いている。
「ちゃんと、いちご牛乳飲んでくださいよっ! では、さらばですっ!」
そういって、駆け足で去っていく結衣ちゃん。ぱっと見は明るくてフランクな女子、だがその裏の顔は小悪魔系なのだ。
ほんと恐ろしくも超かわいい後輩だ。
結衣ちゃんが去った後の中庭は、ときおり吹く風に揺れる青葉の音が心地よく響いていた。俺の気持ちもなんだか落ち着く。
さて、どうしたものか。
俺はいちご牛乳を手に取る。ひんやりとまだ冷たい。飲むなら冷たいうちだ。
刺さったままのストローを見ると、じんわり変な焦りが込み上げてくる。こらこら、気にしすぎだ。放課後、部室で結衣ちゃんに感想を聞かれるかもしれないなら。
俺はストローを勢いよく吸い込んだ。
あっまい、すごく甘い。
ストローから口を離す。口のなかに広がる、牛乳といちごのやわらかな甘味が喉をせかす。
「またすぐ飲みたくなるなっ」
またストローをくわえて、あまあまの世界へ。うん、美味しい。たまには、いちご牛乳もありかもしれん。
夏の木漏れ日のなか、ひとり平和にのんびりと。いちご牛乳を片手に、ふと思った。今度は、一緒にいちご牛乳を飲むのも良いな。
いつになるかは、わからないけど。明日かも知れないし、1週間後か、はては1ヶ月後、もしかしたら1年後にとか。そのとき、ふと思った。
「1年後………、結衣ちゃん、バストアップしてんのかな」
いちご牛乳の効果を期待したい。がんばれ、結衣ちゃん!
昼休み終了前の予鈴が、中庭に響いた。おわっ!? ゆっくりしすぎた!
いちご牛乳を飲み干し、ゴミ箱へ。結衣ちゃんのバストに想いをはせつつ、自分の教室へ、クールに戻るぜっ!!
「こらっー!! 廊下を走るなっ!」
「はうっ! す、すいませんっ!」
通りすがりの先生にめっちゃ怒られましたとさ。天罰かな、とほほ………泣(ノД`)。
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