日常のヒトコマ

空月

文字の大きさ
上 下
12 / 12

【小ネタ】とある外出自粛の春のこと。

しおりを挟む
時事ネタ。会話文のみ。
読めばわかると思いますが、1話後。もうガンガンに1話後。悪友以上恋人未満時代。だいぶ恋人に近づいてるんじゃないかな?って頃かも。


+ + + + + + 



「――で。なんでこの外出自粛の風潮の中で拉致ったのか説明はあるか」

「もちろんある。不要不急の外出自粛ってことはお前と会えないだろ」

「そうだね、不要不急の用事はアンタにないからね」

「お前はそう言うと思った。でもそれじゃ俺がお前に会いたいこの気持ちをどうすりゃいいのかと考えて、いっそ同じ敷地に住めば不要でも不急でも外出せずに会えるなと」

「……ばっっっっっかじゃないの?」

「お前俺を罵倒するとき思い切り罵倒するよな」

「いやだって……もうどこから突っ込めばいいかわかんないくらいバカのバカ理論で……」

「俺がお前の家に行くのも考えたけど、まずお前は『不要不急の外出するとか世論を知らないの? バカなの?』って言うと思った」

「まあ言うだろうね」

「次にお前の家でソーシャルディスタンスも三密避けるのも無理そうだなって思った」

「若干頷きたくないけどまあ快適に三密を避けてソーシャルディスタンスを確保できるかと言ったらできないな」

「んでもって一回ならともかく二回目以降はお前の俺への心証がダダ下がりしていくだけだろうなとも思った」

「不要不急の外出を重ねたらそうだな」

「だから拉致った」

「一足飛びに結論出すのやめろ」

「俺がお前に会いたいほどにはお前は俺に会いたくも心配してもいないかもしれないけど、俺は会いたいし心配だから目の届くところにいてほしかったから拉致った」

「……同意をとれ、同意を」

「万が一同意をとれなかった場合俺が我慢するわけだろ。無理だから最初から拉致ったほうが早いと思って」

「……バカのバカ理論に甘い顔をしすぎたか……」

「なんだかんだ言ってお前最近俺に甘くなってきたもんな」

「わかっててやってるところが腹立つ」

「このご時世、プロポーズした相手の安否が心配になるのは普通だろ?」

「そこで取る手段が普通じゃないでしょアンタは。……何なのこのだだっ広い部屋とパソコン機器とヘッドセット」

「ソーシャルディスタンスを確保しつつ顔見て話せるように」

「ソーシャルディスタンス確保しててもふつうに会話はできるっての」

「表情の仔細がわかんなくてさみしいだろ」

「同意を求めるな」

「まーこれは念のためだけど。もしなんかあった時に『プロポーズした人』と『プロポーズされた人』程度の関係じゃ何にもできないだろ。じゃあ物理的に距離を縮めとくしかないなと」

「……これがアンタが真剣に考えてのことだってわかってしまう自分の理解力が優秀すぎてにくい」

「愛だな」

「腐れ縁の成果」

「何でもいいから、自分の家だと思ってくつろげよ。前も来た家だし慣れたろ」

「慣れるかこんな家。……でもまあこれで自分ちに戻ってもまたどうせアンタが拉致しに来るんでしょ」

「まあな」

「ドヤ顔すんな。……だったら大人しく世話になる。不要不急の外出重ねたくないし」

「愛?」

「バカも休み休み言え」



+ + + + + +


有難いご心配のお言葉とともに「人の行き来が制限される状況を2人だったらどう乗り越えるのか」とのリクエストをいただいたので、書いてみました。

レンの頭には拉致しかないのかというくらい拉致ネタを書いてしまっていますが、今回の拉致はわりと暗黙の同意があったものと思われます。同意をとれとか言われてるけど。
ちなみに悪友時代だと拉致まではしないけど、主人公の元にテレビ会議とかできそうな機器が届いたりするんじゃないでしょうか。ちょっと会えないことにしんみりしてた主人公は一気に脱力するに違いない。

リクエストありがとうございました!楽しんでいただければ幸いです。

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

亡くなった王太子妃

沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。 侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。 王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。 なぜなら彼女は死んでしまったのだから。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

形だけの正妃

杉本凪咲
恋愛
第二王子の正妃に選ばれた伯爵令嬢ローズ。 しかし数日後、側妃として王宮にやってきたオレンダに、王子は夢中になってしまう。 ローズは形だけの正妃となるが……

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

処理中です...