5 / 12
【小ネタ】いつかのバレンタイン。
しおりを挟む
ほぼ会話文のみ。「St Valentines Day」よりも前の話(多分)。
悪友時代。
+ + + + + +
「お、イイもの食ってんじゃん。一個くれ」
「なんで」
「ほら今日バレンタインだし。それチョコだし」
「えー……」
「お前そんなあからさまにイヤそうな顔すんなよ」
「だって自分用に買ったんだよこれ。高いけど奮発して。もったいないからやだ」
「もったいないってお前。ホワイトデーに三倍返しするからいいだろ」
「今、ここで、自分のために買った物をやるのがヤだ」
「いーだろ一個だけ。一口」
「しつこい」
「お前は頑固だよな」
「食べ物の恨みは恐ろしいって言うし」
「それこっちの台詞じゃね?」
「とにかくヤだ。至福の一時を邪魔するな。っていうか似たようなのなら探せばあるっしょ、その中身溢れそうな紙袋の中に」
「探すのがメンドい。今食いたい。俺の目につくところでお前が食ってるのが悪い」
「何その暴論」
「今チョコ食いたい気分なんだよ。血糖値上げたいんだよ」
「それなら別にこれじゃなくてもいいよね」
「包装解くのがメンドい。解いて中身がチョコじゃなかったらテンション下がるし」
「メンドいのはアンタだっての、この我侭大王。……あーもう仕方ないな。一個だけだから」
「よっしゃ。刺すやつ貸して」
「ハイハイどーぞ」
「イタダキマス」
「味わって食え」
「あ、うまい。普通に。――ところでさ」
「普通にって何。イラッときたから三十倍返しにしなよホワイトデー。……何?」
「これ間接キスじゃね?」
「口つけてないから違うと思うけど」
「そういやそうか」
「ってか思ってもそういうの言わないでくれる。どこでどう捻じ曲がった噂になるか分かんないから」
「そりゃ悪かった」
「誠意が全く感じられないんだけどその言い方。まぁアンタに誠意なんてものが備わってるとも思ってないけど」
「散々な言われようだな俺。大体合ってるけど」
「本人が認めるのってどうなの――って待て何二個目食べてんの!」
「あ、悪ィ。つい」
「ついで済むかこの馬鹿」
「ンな怒んなって」
「食べ物の恨みは恐ろしいんだよ」
「わかったわかった。同じの買ってきてやっから」
「今行けすぐ行け速攻買ってこい」
「物理的に無理だろそれ。まぁ一時間くらいで戻ってくるから待ってろよ。あとこれ参考に持ってくから」
「え、ちょっ――」
「んじゃなー。イイコで待ってろよ」
「……ホントに持って行きやがったあの馬鹿。参考とか必要ない気がするんだけど――まあここで言っても仕方ないか」
『同じの』以外にも大量にチョコを買い込んできたあいつに呆れ返るハメになるのはきっかり一時間後のこと。
こいつに自分の常識は通用しないんだな、と諦めの境地に達するのは、さらに一ヶ月後のことだった。
悪友時代。
+ + + + + +
「お、イイもの食ってんじゃん。一個くれ」
「なんで」
「ほら今日バレンタインだし。それチョコだし」
「えー……」
「お前そんなあからさまにイヤそうな顔すんなよ」
「だって自分用に買ったんだよこれ。高いけど奮発して。もったいないからやだ」
「もったいないってお前。ホワイトデーに三倍返しするからいいだろ」
「今、ここで、自分のために買った物をやるのがヤだ」
「いーだろ一個だけ。一口」
「しつこい」
「お前は頑固だよな」
「食べ物の恨みは恐ろしいって言うし」
「それこっちの台詞じゃね?」
「とにかくヤだ。至福の一時を邪魔するな。っていうか似たようなのなら探せばあるっしょ、その中身溢れそうな紙袋の中に」
「探すのがメンドい。今食いたい。俺の目につくところでお前が食ってるのが悪い」
「何その暴論」
「今チョコ食いたい気分なんだよ。血糖値上げたいんだよ」
「それなら別にこれじゃなくてもいいよね」
「包装解くのがメンドい。解いて中身がチョコじゃなかったらテンション下がるし」
「メンドいのはアンタだっての、この我侭大王。……あーもう仕方ないな。一個だけだから」
「よっしゃ。刺すやつ貸して」
「ハイハイどーぞ」
「イタダキマス」
「味わって食え」
「あ、うまい。普通に。――ところでさ」
「普通にって何。イラッときたから三十倍返しにしなよホワイトデー。……何?」
「これ間接キスじゃね?」
「口つけてないから違うと思うけど」
「そういやそうか」
「ってか思ってもそういうの言わないでくれる。どこでどう捻じ曲がった噂になるか分かんないから」
「そりゃ悪かった」
「誠意が全く感じられないんだけどその言い方。まぁアンタに誠意なんてものが備わってるとも思ってないけど」
「散々な言われようだな俺。大体合ってるけど」
「本人が認めるのってどうなの――って待て何二個目食べてんの!」
「あ、悪ィ。つい」
「ついで済むかこの馬鹿」
「ンな怒んなって」
「食べ物の恨みは恐ろしいんだよ」
「わかったわかった。同じの買ってきてやっから」
「今行けすぐ行け速攻買ってこい」
「物理的に無理だろそれ。まぁ一時間くらいで戻ってくるから待ってろよ。あとこれ参考に持ってくから」
「え、ちょっ――」
「んじゃなー。イイコで待ってろよ」
「……ホントに持って行きやがったあの馬鹿。参考とか必要ない気がするんだけど――まあここで言っても仕方ないか」
『同じの』以外にも大量にチョコを買い込んできたあいつに呆れ返るハメになるのはきっかり一時間後のこと。
こいつに自分の常識は通用しないんだな、と諦めの境地に達するのは、さらに一ヶ月後のことだった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる