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無理やり転校編
意外と世間は狭かったりする
しおりを挟む「ああ、1限が終わったね」
「2限って何だったっけ?」
「特殊授業ですよ。……確か今日は新しい講師が来るはずですが」
「特殊授業? そんなのもあるわけこの学校」
「この学校っつーか、特別クラス限定だけどな」
「予定だと芸術家でしたよね、カンナ」
「そうだよ。資料によれば結構若い男だったはずだけど……」
「……それって、そこ……教室の前に居る人、じゃ……」
「へぇ……って、あ、」
「? どうしたの――」
「女神っ!!」
「!?」
「……お久しぶりです、浅見さん」
「女神、女神、本当に女神? 僕が幻視しているわけではないよね?」
「夢でも幻でもないですよ。……それより、何度も言っていますが、女神という呼称はやめてください。私もドン引きですが周りもドン引きですから」
「でも、女神は女神だよ。それより、どうしてここにいるの? 女神は公立の学校に行ったと聞いていたのだけど」
「ちょっとした事情がありまして。浅見さんこそどうしてここに?」
「僕のパトロンの関係で、ここの『特別クラス』っていうのに話をしに来たんだ。ええと、確か『特殊授業』講師ということになるのかな」
「……なるほど。あなたにそんな物が務まるのかという疑問はともかく、事情はわかりました」
「女神それちょっと酷い……でもそういうとこが好きっ!」
「色んな意味で問題な発言は控えてください浅見さん。本当に変わってませんね。少しは真っ当になったんじゃないかと淡い期待をしていたんですが」
「今更僕が変わると思うの? それより女神、今日は暇?」
「暇じゃないです」
「そろそろ僕のところ来てくれる時期だよね? せっかくだから今日来て! じゃないと僕女神欠乏症で死んじゃうよ」
「人の話は聞いてください。っていうかその女神欠乏症っていうネーミングはどうかと思います」
「だって女神、なかなか来てくれないし。約束してくれたのに酷い」
「私も忙しいんですよ」
「……来ないと石膏像作ってやる」
「……石膏像?」
「気にするなカンナ」
「文脈からすると脅しみたいですけど――」
「油絵も水彩画も描いてやる。最高傑作創ってやる。アトリエに全部飾って、奏ちゃんには裸婦画送ってやる。今日会ったからより正確に描けるし。依頼で書いてるやつも全部女神モチーフに描き直してやる」
「……浅見さん」
「ふんだ。女神が悪いんだからね。女神が来ないから女神の代わりに女神を描くんだもん。僕我慢したもん。来てくれなかったのは女神だもん」
「何歳児ですかあなた。幼児退行しないでください。ただでさえ子供っぽいのに。……わかりました。今日は無理ですが近日中に伺いますから」
「近日中じゃやだ」
「いい年して駄々をこねないでください」
「だって明確な期限がないと女神バックれそう」
「『バックれる』って……誰から聞いたんですかそんな言葉」
「みっちゃん」
「またあの人ですか。相変わらずろくなことしませんね。……バックれませんよ。近日中が気に入らないなら明日にでも伺います。それならいいですか?」
「……うん」
「石膏像も油彩画も水彩画も依頼品の書き直しもやめてくれますね?」
「……」
「や・め・て・く・れ・ま・す・ね?」
「ちぇー……わかった」
「何でそんな名残惜しそうなんですか」
「言ったでしょ? 女神は僕の女神なんだから、本当はいつだって見て、触れて、愛でたいんだって。でも女神も奏ちゃんも駄目だって言うから我慢してるんだよ」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください」
「ちっ、やっぱりつっこんできたか」
「今本気で舌打ちしましたね!? ……じゃなくて、何なんですか、裸婦画とか触れていたいだとか!」
「っていうかそれ以前にどういう知り合いなの!? 何か家にしょっちゅう行ってるみたいな会話だったけど!」
「…………こ、恋人……とか……?」
「い、いやそれだったら流石に僕たちだって気付くだろうし、違う、よね……?」
「何であんたらがそんなに動揺するわけ? まぁ恋人ではないけど」
「女神女神、この子達何?」
「せめて誰って訊いてくれませんかね。……手前の4人は幼馴染で、我関せずでニヤニヤしてるのがついさっき知り合った人ですよ。幼馴染のことは話したことあるでしょう」
「嬢さん、ニヤニヤは酷いっつーかそこはかとなく悪意を感じるんだけど」
「えーっと、奏ちゃん曰くの『害虫』?」
「――…そんな形容してたんですか、兄さん」
「うん」
「全く……」
「ナチュラルにスルーはヒデェよ嬢さん……」
「『そうちゃん』で『兄さん』ってことは――」
「……もしかして奏さんのお知り合いなんですか、その人」
「そういうこと。まさかこんなところで会うとは思わなかったけど」
「恋人じゃなかったんだー! 良かったぁ~…」
「……うん、よかった……」
「いやだからなんでそんな安心してるんだあんたら。マジで謎過ぎるんだけど」
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