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拍手再録
リクエスト小話・1
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異世界チェンジリングにいただいたリクエストより。
「入れ替わった先で『私』として過ごすシーファ(困惑気味)の明るいギャグ風味の話」
……だったんですが、すみません。作者の力量により、何やら求められていたものとは大分違った何かになってしまったような気がします。少なくともギャグとは呼べなさそうです。
ちなみに作者はギャグシーンを書いた時、知り合いに「真面目なギャグを書くよね…」と生温い反応をされた経験があります。苦い思い出です。
※IFにIFを重ねた感じのパラレル話です。
※試行錯誤の果てに何やらよくわからない感じになりました。
※反応に困ってもいいので石は投げないでください。
+ + + + + +
考えて考えて考え抜いて実行した、『チェンジリング』の魔法。
それがきちんと発動した証左に異世界の少女の体を得た『シーファ・イザン』は、しかしうっかり自分の選択を後悔しそうになっていた。
(ある程度、断片的に知識を得ていたと言えど、まさかここまで『違う』とは……)
自分の都合で『巻き込んだ』少女に対しては、色々な『補助』を用意することができたが、己の方にまで力を裂く余裕はなかった。故に、シーファにはこの『世界』――少女が生きる世界の常識が、ほとんど無いといっていい。
『少女』の体に残る知識は、うまく己とラインをつなげていないために断片的にしか想起されない。つまり無いよりはマシ程度。
力なく座り込んだベッドのシーツの手触りも未知なる感触としか言いようがないし、足裏に感じる敷物(『カーペット』と呼ぶらしい。材質は『ポリエステル』だそうだが、まずその『ポリエステル』がなんなのかわからない)もまた未知なる感触だ。というか自分(シーファ)が未知だと感じないもののほうが少ない。
自分の居た世界と共通するものも確かにあるが、恐らく加工技術の違いだろう、同一のものだろうとは判断できても感情が納得しないという事態が起こっている。
つまり一般的な宿の一人部屋より少し広い程度のこの部屋だけでも、『未知』と感じるもので溢れかえっているのだ。
それに慣れきる(もしくは『知識』を把握しきる)までは部屋から出るという選択肢は無い。無いと言ったら無い。たとえそれが、『彼女』の家族の不審を買おうとも。
そして知識の把握と共に行わなければならない必要性をひしひしと感じるのは、表情筋の制御である。
この世界の人間がそうであるのか、それともこの体が特にそうなのかは未だシーファには不明だが、この――現在シーファのものとなっている体は大変表情が変わりやすかった。
己の姿を映せるものを探し、見つけ、改めて覗き込む。その一連の流れで見事なまでに変化した己(もとい『彼女』の体)の表情に、「何だこのよく動く顔は……!」と思わず驚愕し、その驚愕した顔にさらに衝撃を受けたのは記憶に新しい。
表情筋が緩いのかと最初は考えたものの、些細な感情の動きでこうもコロコロ表情を変えられるということは、逆に表情筋は鍛えられているのだろう。恐らく。
ならば目に映るもの、手で触れた物に驚くたびにバリエーション豊かに驚愕を示すこの顔は、己の支配下に置かない限り他者からの不審を買う代物にしかならない。
どうやら体に多少ひきずられているのか、数えきれないくらい『旅』を繰り返した故の精神の摩耗は大分修復されているらしい。シーファにとってはあまりいいことではないが。
精神が退行しているにも近いその作用のおかげで、この部屋から出て少女の家族と触れ合えば、遠からずぼろが出る。彼女の知識や記憶をうまく把握できていない今の状態なら尚更。
よって、やはりしばらくは少女の家族との接触を最小限にし、この部屋を出ずにこの世界に慣れることが最善だろう。
そう思考に区切りをつけて、まずは部屋にあるものを片端から『知識』を伴う理解の段階へ持っていくことにしたシーファは、まだ知らなかった。
――その状態を、少女の生きる世界でなんと表すかを。
のち、『知識』を己に馴染ませ、さらに貪欲に多くの知識を集めていったシーファは、それを表す言葉とそのあまりの不名誉さに心底少女に申し訳なく思った。叶うのなら土下座して謝りたいとすら思った。異世界文化に馴染みすぎだろうとツッコミを入れる者は残念ながら居なかった。
しかしそれは、『彼女』の心配症な家族たちが連日連夜涙ながらに出てくるように説得してくるのに根負けしたシーファが万全と言えない状態で外界と接触を持ち、どうしても隠しきれなかった不自然さからベタに記憶喪失だと勘違いされた上にやはり心配症な『彼女』の幼馴染も交えてひと騒動起こった後、ようやく普通に学校に通えるようになってしばらくしてからのことであり――もちろん現時点での『シーファ』がそんな未来を予想できたはずもなかったのだった。
+ + + + + +
自分の部屋から出ず、他者との関わりを極端に避ける――いわゆるひとつの『引きこもり』。ついでに『不登校』でもあるよね、という話。
人によってはそんなに不名誉と思わないでしょうが、まあポジティブな言葉ではなかったのと参照した資料が悪かった模様です。
お待たせした挙句こんな出来で大変申し訳ありませんが、ほんの少しでも楽しんでいただければ幸い。
リクエストありがとうございました。
「入れ替わった先で『私』として過ごすシーファ(困惑気味)の明るいギャグ風味の話」
……だったんですが、すみません。作者の力量により、何やら求められていたものとは大分違った何かになってしまったような気がします。少なくともギャグとは呼べなさそうです。
ちなみに作者はギャグシーンを書いた時、知り合いに「真面目なギャグを書くよね…」と生温い反応をされた経験があります。苦い思い出です。
※IFにIFを重ねた感じのパラレル話です。
※試行錯誤の果てに何やらよくわからない感じになりました。
※反応に困ってもいいので石は投げないでください。
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考えて考えて考え抜いて実行した、『チェンジリング』の魔法。
それがきちんと発動した証左に異世界の少女の体を得た『シーファ・イザン』は、しかしうっかり自分の選択を後悔しそうになっていた。
(ある程度、断片的に知識を得ていたと言えど、まさかここまで『違う』とは……)
自分の都合で『巻き込んだ』少女に対しては、色々な『補助』を用意することができたが、己の方にまで力を裂く余裕はなかった。故に、シーファにはこの『世界』――少女が生きる世界の常識が、ほとんど無いといっていい。
『少女』の体に残る知識は、うまく己とラインをつなげていないために断片的にしか想起されない。つまり無いよりはマシ程度。
力なく座り込んだベッドのシーツの手触りも未知なる感触としか言いようがないし、足裏に感じる敷物(『カーペット』と呼ぶらしい。材質は『ポリエステル』だそうだが、まずその『ポリエステル』がなんなのかわからない)もまた未知なる感触だ。というか自分(シーファ)が未知だと感じないもののほうが少ない。
自分の居た世界と共通するものも確かにあるが、恐らく加工技術の違いだろう、同一のものだろうとは判断できても感情が納得しないという事態が起こっている。
つまり一般的な宿の一人部屋より少し広い程度のこの部屋だけでも、『未知』と感じるもので溢れかえっているのだ。
それに慣れきる(もしくは『知識』を把握しきる)までは部屋から出るという選択肢は無い。無いと言ったら無い。たとえそれが、『彼女』の家族の不審を買おうとも。
そして知識の把握と共に行わなければならない必要性をひしひしと感じるのは、表情筋の制御である。
この世界の人間がそうであるのか、それともこの体が特にそうなのかは未だシーファには不明だが、この――現在シーファのものとなっている体は大変表情が変わりやすかった。
己の姿を映せるものを探し、見つけ、改めて覗き込む。その一連の流れで見事なまでに変化した己(もとい『彼女』の体)の表情に、「何だこのよく動く顔は……!」と思わず驚愕し、その驚愕した顔にさらに衝撃を受けたのは記憶に新しい。
表情筋が緩いのかと最初は考えたものの、些細な感情の動きでこうもコロコロ表情を変えられるということは、逆に表情筋は鍛えられているのだろう。恐らく。
ならば目に映るもの、手で触れた物に驚くたびにバリエーション豊かに驚愕を示すこの顔は、己の支配下に置かない限り他者からの不審を買う代物にしかならない。
どうやら体に多少ひきずられているのか、数えきれないくらい『旅』を繰り返した故の精神の摩耗は大分修復されているらしい。シーファにとってはあまりいいことではないが。
精神が退行しているにも近いその作用のおかげで、この部屋から出て少女の家族と触れ合えば、遠からずぼろが出る。彼女の知識や記憶をうまく把握できていない今の状態なら尚更。
よって、やはりしばらくは少女の家族との接触を最小限にし、この部屋を出ずにこの世界に慣れることが最善だろう。
そう思考に区切りをつけて、まずは部屋にあるものを片端から『知識』を伴う理解の段階へ持っていくことにしたシーファは、まだ知らなかった。
――その状態を、少女の生きる世界でなんと表すかを。
のち、『知識』を己に馴染ませ、さらに貪欲に多くの知識を集めていったシーファは、それを表す言葉とそのあまりの不名誉さに心底少女に申し訳なく思った。叶うのなら土下座して謝りたいとすら思った。異世界文化に馴染みすぎだろうとツッコミを入れる者は残念ながら居なかった。
しかしそれは、『彼女』の心配症な家族たちが連日連夜涙ながらに出てくるように説得してくるのに根負けしたシーファが万全と言えない状態で外界と接触を持ち、どうしても隠しきれなかった不自然さからベタに記憶喪失だと勘違いされた上にやはり心配症な『彼女』の幼馴染も交えてひと騒動起こった後、ようやく普通に学校に通えるようになってしばらくしてからのことであり――もちろん現時点での『シーファ』がそんな未来を予想できたはずもなかったのだった。
+ + + + + +
自分の部屋から出ず、他者との関わりを極端に避ける――いわゆるひとつの『引きこもり』。ついでに『不登校』でもあるよね、という話。
人によってはそんなに不名誉と思わないでしょうが、まあポジティブな言葉ではなかったのと参照した資料が悪かった模様です。
お待たせした挙句こんな出来で大変申し訳ありませんが、ほんの少しでも楽しんでいただければ幸い。
リクエストありがとうございました。
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