異世界チェンジリング

空月

文字の大きさ
45 / 56
旅路をなぞる

『迷宮(仮)』・2

しおりを挟む



  無事レアルードの了承も得て、ところどころのトラップ解除をさせてもらうことになった。『記憶』とのすり合わせというか、勘を取り戻したかったので複数挑戦してみたわけだけど、どれもこれもあっさり解除できてしまって拍子抜けする。……いや、シーファの積み重ねを考えたら当然なんだけど。
  なので、失敗して罠が発動したときに備えて一応待機してくれてるレアルードを、ただ待たせるだけになっていてちょっと申し訳ないような気がしなくもない。

  で、でも普通罠のある『迷宮』だったらこういうものだし……! 解除スキルある人が解除しながら進むのが普通だし、申し訳なくなる必要はない、はず……!

  けど、そろそろコツも掴めてきた――もとい、勘も戻ってきたっぽいから、この罠の解除終わったら、またサクサク(力押しで)進む方法に戻ってもいいかもしれない。

  なんてぼんやり考えつつ、淡々と罠を解除していたんだけど。


 「……シーファは、」


  ぽつり、とレアルードが言った。
  今までずっと黙って作業を眺めるだけだったのにどうしたんだろう。流石に暇すぎて黙ってられなくなったんだろうか。

  内心首を傾げつつ、続く言葉を待つ。一応手元は止めて、軽く背後を振り返った。
  聞こえなかったのでも無視してるわけでもないよ、という意思表示だ。


 「シーファは、何でもできるな」


  …………。
  ……いきなり何事だろう。脈絡がな……くもないのか。危うげなく罠を解除するシーファを見ての感想、なんだろうけど。


 「そんなことはない」


  とりあえずさくっと否定しておく。率直な感想だとして、そこに含みも何もないとしても、それはちょっとスルーできない。スルーしちゃうと必然的にナルシスト的なことになるとかそういうのは別にして。


 「何でも、はできない」


  重ねて言い置く。
  積み重ねた、繰り返した分だけ、シーファにできることは多いけれど、それでも当然できないことは多々ある。『何でもできる』ようになれればよかったけど、現実としてパーティ内の人間関係すら上手い具合にいってないんだから、むしろダメダメだよね……。

  けれど、レアルードはどうもそうは思わなかったらしい。


 「……でも、旅をするなら、シーファだけの方がよかったんじゃないのか」


  流石に予想外の言葉すぎて目を瞬いた。……なんでそんな結論に? ちょっと理解できない。
  というか、そもそもシーファが旅に出るのはレアルードの付き添いというかそういう感じでなので、一人で旅をするという選択肢はないし、そういう流れにもなりようがない。

  ――一人で旅ができるのなら、だってそうしたかったけれど、できないものはできないのだ。そういうふうに古のエルフたちが仕掛けをしたのだし、そういうふうに繰り返して・・・・・いるのだから。


 「そもそも、私は一人で旅に出ることを考えたことはない。今回だって、君が旅に出るから、一緒に出てきただけだ」


  いったいどういう思考回路を経てこんなことを言い出したかは謎だけど、ひとまず率直な事実を伝える。
  ……言ってから思ったけど、この言い方微妙だな。レアルードに誘われたっていう流れはあったけど、元々シーファは誘われなくてもついていくつもりだったし。


 「――……そう、だったな」


  レアルードは頷いて、それきり黙り込んでしまった。

  ……じ、地味に気まずい……!
  レアルードの真意は分からないにしろ、なんか思うところがあったみたいだしな……。もうちょっとフォローのしようがあったかもしれない。

  というかこういう機会でもないとゆっくり話せないんだし、ちょっと突っ込んでもよかったんじゃ?
  ピアもタキもいなくて横槍入る可能性ゼロってそうそう無いし。

  よし、『シーファ』としておかしくない程度にちょっとフォロー兼探りを入れてみようかな。この流れならいける、気がする。


 「その、……少し気になっていたんだが」

 「……? なんだ?」


  若干歯切れの悪い切り出しになってしまったけど、まあ許容範囲だろう。不自然にならない程度の間しか置けないので急いで思考をまとめて口を開く。


 「村を出てから、君は少し私に気を遣いすぎていると思う。もし、旅に誘ったことを負い目に感じてのことなら見当違いだ。旅に出ることを決めたのは私自身だし、巻き込んだふうに考えているのなら認識を改めてもらいたい」


  旅が始まってからこっち、体調不良もどきに始まり、負傷の度合いがダントツなのがシーファになっちゃってるから、変に気にされてるんじゃないかと思うんだよね。度を越しすぎな過保護っぷりの一端はそこから来てるような気がする。守る対象枠に寄りつつあるっていうか……。元々見た目がアレな上、出来事が積み重なった結果、虚弱じゃないけど虚弱扱いされてる感もあるし。

  そういう諸々を込めて言うと、レアルードは思ってもみなかったことを言われたみたいに目を瞠った。


 「そんなつもりは――」


  焦りを含んで紡がれた否定は、けれど途中で不自然に途切れ、少しの間を置いて「……そうかもしれない」と覆された。


 「旅に誘ったこと自体を、負い目に思っているわけじゃない。けど、お前を気にしすぎてるのは自覚してるし――お前は旅に出ない方が良かったんじゃないかとは、思う」


  自覚あったんだなぁ……ないはずないか、とか思いつつ、そこについてはうかつに突っ込めないので、とりあえず後半について言及することにする。自覚があってアレっていうのに突っ込めるほどの材料はない。


 「その、……前半については、君の意識の問題だからひとまず置いておくが。私が旅に出ない方が良かった、などというのは、所謂余計なお世話というやつだろう。そもそも、多少体調が悪いのが続いたり、負傷したりしただけでそう思われるというのも、君の中での私の立ち位置というのを再考する必要性を覚えるんだが」


  『シーファ』としては饒舌気味かなとは思うけど、ここはちょっと言葉を尽くさないとならない場面のような気がするので多少は仕方ない。


 「そうじゃない、シーファ。……いや、体調や怪我のことも確かにあるが、そうじゃなくて」


  レアルードは、そこで少しだけ言うか言うまいか迷うような仕草をした。

  体調とか怪我以外で何かあったっけ……? 村にいた方がシーファが幸せそうだとかっていうのは無いはずしなぁ……(それもどうかと思うけど)。旅に出るよりは村にいた方が平穏といえば平穏だけど、別にシーファが平穏を愛する言動をしていたわけでもないし、この線は薄いだろう。かと言って他に何があるかは思いつかないんだけど。

  考えているうちに、レアルードは腹を決めたらしい。外されていた視線が戻って、真剣な色を宿した碧眼とかち合う。


 「この道行が、あまりお前にいいものになるような気がしなくて、――……その、根拠は、ないんだが」


  ……。
  …………。
  この思わせぶりな流れで、それはどうなんだろう……。
  ギリギリ表には出さなかったけど、ちょっと拍子抜けしたというかなんというか。

  い、いや、でもレアルードって『勇者』だもんな……。『前』の記憶からするに、レアルードの勘って侮れないし。勇者補正なのかどうかはよく分からないけど、直感とか閃きが優れてるのは確かだ。
  そういう方面から、シーファのめんどくさいあれこれについてなんとなーく勘付いて――はないと思うけど(本人も根拠はないって言ってるし)、よろしくない気配は察知しちゃってるのかな。
  思い返す限り、この時期にこういうこと言われたことないんだけど、そこはタイミングの問題と考えればありえない台詞ではない、かな。うん。


 「夢のこともあるから、余計に気になってしまうんだろうな……」


  ぽつりと落ちた呟きは微かで独り言めいていて、気になりはしたものの、内容的にうかつにつつくこともできない。
  以前言われた、シーファとレアルードの共通認識になっているらしい『例の夢』とやらことなのか、そうじゃないのか。
  未だ『例の夢』の詳細が不明なままだし、不自然な受け答えをしてしまいかねないから追及はできない。

  これ以上話を続けるのも『シーファ』としては微妙なラインだし……ここまで、かな。
  切り上げ時だと判断して、トラップ解除に戻る方向に会話を持って行くことにする。

  今やってるのの解除終わらせたら、あとはもう『迷宮(仮)』攻略に向けてさくさく進もうそうしよう。この『迷宮(仮)』、人造だからわりと簡易だけど、彷徨おうと思えば一日二日余裕で彷徨える規模だったはずだから、早く攻略するに越したことはないよね。
  あとピアに余計な隔意を抱かれないためにもさっさと帰った方が身のためだろうし。……二人だけで依頼に向かった時点でアウトかもしれないというのは考えないことにしよう……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...