転生先が二次元みたいな三次元だったけどエンジョイしない人達(二次元愛)の話。

空月

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えくすとら

【番外】彼と彼女と、彼女の誕生日。

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「……珍しく朝から会いたいって何事かと思ったら。随分大荷物だね」

「俺の腕によりをかけたフルコースだからな」

「フルコース。……ということは、ご飯?」

「その通り」

「なんでそんなもの……今日何か特別な日だったっけ――って、あ。そっか、君の嫁(の一人)の誕生日だっけ」

「そ。公式で出てる好物全部作って、日付変わると同時に画面の向こうに捧げたわけだが、それを家族他知り合いに振る舞うわけにもいかなくてな」

「不審を買うか、好感度爆上げ要素にしかならなそうだもんね。……君の嫁的に、私に下げ渡しても大丈夫なの?」

「食事と食物を信仰している域だから、スタッフが美味しくいただきましたってしないとむしろ嫌われるな」

「へ、へー……。まあそういうわけなら有り難くいただくけど。しかしよくこれだけ作れたね。お姉さんに何か言われなかったの?」

「昨日から仕事で家にいなかったんだよ」

「それはまたタイミングのいいことで……。っていうか、一人で食べきれない量でもなさそうだし、それなら家で思う存分逢瀬すればいいのに」

「家だと幼馴染の強襲を回避できない」

「まだ鍵が仕事しないんだ、君の部屋……」

「もうあれは鍵としての役割を果たせないような気がしてならない。むしろ仕事してくれた時が思い出せない」

「世界の強制力こわい」

「マジそれな。なんであんたの方は仕事するのに俺の方は仕事しないんだ……」

「男向けと女向けの違いかな」

「そんな正論はいらない」

「ほ、ほらせっかくの嫁の誕生日なんだからそんな辛気臭い顔しないで。うちでお嫁さんと蜜月を過ごすといいよ。確かアペンドディスク出たばっかりでしょ」

「お言葉に甘えさせてもらいたいところだが、こんな朝からだとあんたの家族がいい顔しないだろ」

「それはもう今更だと思うんだ」

「ついに兄たちがシスコンだと認めたのか」

「いや一応前から自覚あったからね? まあでも言うほど早い時間でもないし、そこまでないんじゃないかなーと」

「まあ確かにあんたのオニーサマ方に睨まれるのは今更だし、あんたがいいっていうなら全力でお言葉に甘えるけど」

「心置きなく二次嫁と過ごしたい気持ちは痛いほどわかるから遠慮なくどうぞ」

「じゃあお邪魔させてもらう。……一応聞くけど、あんた、今日予定とかなかったわけ?」

「休日の単独外出イコール?」

「隠しキャラフラグか……」

「ちょっと最近シャレにならない遭遇率になってるからしばらく自粛する。どうしても休日外出しないといけないときは付き合って」

「発売日が休日とかだとどうしようもないからな。了解」

「今のところ強制外出イベントっぽいのはないから、自粛すればなんとかなると思うんだ……」

「早めにフラグ折れるといいな」

「君のところも鍵が仕事するようになるといいね」


+ + + + + +

彼にとってのみ特別な日、という位置づけなので、特に妨害が過剰になるわけでもなく、比較的平穏に過ごせる一日として終わったり。たまにはこんな日もある。
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