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えくすとら
【拍手再録】ここまで来たらいっそ攻略本が欲しいけど絶望フラグのような気もするよね。
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※以前いただいたコメントを眺めていたらふっと思いついた、IFネタというかお遊びネタです。
※地味に地の文が三人称です。彼・彼女としか表記しないので若干不自然な部分もあるかと思います。
+ + + + + +
その日、各々の家でいつも通りに目を覚まし、いつも通りに朝を過ごそうとした彼らの目に写ったのは、同じものだった。
それを目にした瞬間、彼は乾いた笑いを浮かべて心の中で盛大にツッコむしかできなかったし、彼女は死んだ目を伏せた後に脳内でぼやくしかできなかった。
――故に、放課後まで待てないと、示し合わせて学校をサボり、馴染みのゲーム屋に駆け込んだのも致し方ないことだったのだ。
「とりあえず。……同じの、見えてるんだよね?」
「メールで話した限りはな。――だいたいこんな感じ。一応図にしてみた」
「うん……一緒だね……。これで幻覚の線は消えたわけか」
「ありえない奇跡的な偶然で同じ幻覚を見ている線も残ってるだろ」
「ものすっごいありえない線だね」
「これが現実よりはいいだろ……」
「それを言ったらおしまいだと思う。ところで昨日何か予兆とかあった?」
「特には。でも多分お助けキャラあたりからなんか動きがある予感がする」
「ねえ、アレ実はラスボスとかそういうのなんじゃないの」
「現代舞台でRPGとはまたニッチな。得体の知れなさはそれくらいのレベルだけどな。あとこの世界どう見てもRPGじゃねぇだろこれ見る限り」
そう言って彼が指し示した先には何もない――そのはずだった。けれど、彼が何を指し示しているのか、彼女にはわかった。わかってしまった。
なぜなら、彼女の視界にも同様のものが存在していたからだ。
それは実体のないものだった。目が覚めるまではどこにも見当たらなかったはずの、触れもせず、他人には見えない、けれど類似のものなら画面の向こう側に見たような気がしなくもない――そんなもの。
いわゆるところの、常時表示型パラメーターというやつだった。
「……サボりを決めた瞬間に間抜けな効果音とともに毒々しい色のハートが浮かんだんだけど、そっちは」
「同じく。アレ、なんか浮かんでる時だとタッチの要領で解説見れるっぽい」
「見たんだ……。大体予想ついてるけど、何だった?」
「率直すぎて笑う以外できなかったな。『ヤンデレポイント+1』だと」
「わー笑えなーい。……いや本当笑えないよどうなってるのこの世界」
「本格的に恋愛ゲーム世界にチェンジするんじゃね」
「だったらフラグ折るための完全攻略本もほしいよ……」
「心から同意する。っつーかこれさすがに俺ら精神病んでもいいと思うんだがどうだろう」
「精神病んだら何のフラグになると思う?」
「セオリー的にはヤンデレエンドフラグかバッドエンドフラグだな」
「意地でも病まない方向で行こう」
「現実逃避もままならないこんな世の中じゃ。――まあお互いがんばろうな……」
「ところでここの店長学生のサボりをあっさり容認しすぎてると思うんだけどどうよ」
「むしろ『若いうちにそういうのやっとくのはいいことだ』とか感心されたんだが」
「二次元なんだ……ここはご都合主義が横行する二次元なんだ……」
「癒されない二次元なんて二次元じゃない。認めたくないがこれが俺たちの現実だ」
「まあ私たちにも都合いいからいいんだけど。何かの伏線とかフラグじゃないことだけ祈ろう」
「それな。マジでな……」
そんな風に互いを励ましあった二人だったが、完全に恋愛ゲームの様相を呈した世界での彼らにとっての平穏を勝ち取る戦いは、まだ始まったばかりだった。
+ + + + + +
やったねガチで恋愛ゲーム世界になったよ!数値化した分余計こわいね!という思いつきネタでした。
強制イベントとかは開始がわかるようになって大体いつも死んだ目で流されるようになったり。
※地味に地の文が三人称です。彼・彼女としか表記しないので若干不自然な部分もあるかと思います。
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その日、各々の家でいつも通りに目を覚まし、いつも通りに朝を過ごそうとした彼らの目に写ったのは、同じものだった。
それを目にした瞬間、彼は乾いた笑いを浮かべて心の中で盛大にツッコむしかできなかったし、彼女は死んだ目を伏せた後に脳内でぼやくしかできなかった。
――故に、放課後まで待てないと、示し合わせて学校をサボり、馴染みのゲーム屋に駆け込んだのも致し方ないことだったのだ。
「とりあえず。……同じの、見えてるんだよね?」
「メールで話した限りはな。――だいたいこんな感じ。一応図にしてみた」
「うん……一緒だね……。これで幻覚の線は消えたわけか」
「ありえない奇跡的な偶然で同じ幻覚を見ている線も残ってるだろ」
「ものすっごいありえない線だね」
「これが現実よりはいいだろ……」
「それを言ったらおしまいだと思う。ところで昨日何か予兆とかあった?」
「特には。でも多分お助けキャラあたりからなんか動きがある予感がする」
「ねえ、アレ実はラスボスとかそういうのなんじゃないの」
「現代舞台でRPGとはまたニッチな。得体の知れなさはそれくらいのレベルだけどな。あとこの世界どう見てもRPGじゃねぇだろこれ見る限り」
そう言って彼が指し示した先には何もない――そのはずだった。けれど、彼が何を指し示しているのか、彼女にはわかった。わかってしまった。
なぜなら、彼女の視界にも同様のものが存在していたからだ。
それは実体のないものだった。目が覚めるまではどこにも見当たらなかったはずの、触れもせず、他人には見えない、けれど類似のものなら画面の向こう側に見たような気がしなくもない――そんなもの。
いわゆるところの、常時表示型パラメーターというやつだった。
「……サボりを決めた瞬間に間抜けな効果音とともに毒々しい色のハートが浮かんだんだけど、そっちは」
「同じく。アレ、なんか浮かんでる時だとタッチの要領で解説見れるっぽい」
「見たんだ……。大体予想ついてるけど、何だった?」
「率直すぎて笑う以外できなかったな。『ヤンデレポイント+1』だと」
「わー笑えなーい。……いや本当笑えないよどうなってるのこの世界」
「本格的に恋愛ゲーム世界にチェンジするんじゃね」
「だったらフラグ折るための完全攻略本もほしいよ……」
「心から同意する。っつーかこれさすがに俺ら精神病んでもいいと思うんだがどうだろう」
「精神病んだら何のフラグになると思う?」
「セオリー的にはヤンデレエンドフラグかバッドエンドフラグだな」
「意地でも病まない方向で行こう」
「現実逃避もままならないこんな世の中じゃ。――まあお互いがんばろうな……」
「ところでここの店長学生のサボりをあっさり容認しすぎてると思うんだけどどうよ」
「むしろ『若いうちにそういうのやっとくのはいいことだ』とか感心されたんだが」
「二次元なんだ……ここはご都合主義が横行する二次元なんだ……」
「癒されない二次元なんて二次元じゃない。認めたくないがこれが俺たちの現実だ」
「まあ私たちにも都合いいからいいんだけど。何かの伏線とかフラグじゃないことだけ祈ろう」
「それな。マジでな……」
そんな風に互いを励ましあった二人だったが、完全に恋愛ゲームの様相を呈した世界での彼らにとっての平穏を勝ち取る戦いは、まだ始まったばかりだった。
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やったねガチで恋愛ゲーム世界になったよ!数値化した分余計こわいね!という思いつきネタでした。
強制イベントとかは開始がわかるようになって大体いつも死んだ目で流されるようになったり。
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