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プロローグ

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 薄暗い部屋に淫猥な水音が響く。手枷から繋がる鎖が擦れる音がする。


「んっ、……あッ、やだ、そこもうやだぁ……!」

「んー……、いや、ですか? こっちはそう言ってないみたいですけどねぇ。ほら、こんなにびちょびちょにして」


 ぐちゅぐちゅ、とことさら音を立てて秘部を弄られる。
 シアはたまらず声を上げた。


「あアッ、あっ……おかしく、なっちゃうっ、からぁ……! やなの、お願い、っ……やめて、リクぅ……!」


 懇願するも、膣内を掻きまわす指は止まらない。感じるところを何度も引っかかれて、シアは容易く高みにのぼった。


「あ――ッ、あ、あ、ンんッ……!」


 体を弓のようにしならせて達したシアを、リクは満足そうな目で見遣る。その視線に羞恥を感じて、抜かれないままの指を意識してしまう。


「おねが、い、抜いて、リクっ……!」

「いいんですか? それって次の段階に進んでいいってことになりますけど」


 そういう意味で言ったのではない、慌てて首を振るシアに、リクは「わかってますよ」と優しく笑んだ。


「お嬢はもうやめてほしいんですよね? ……でも、駄目です。これは俺らの義務なんで。お嬢だって同意したでしょう?」


 いつもの笑みで、最後通牒のように現実をつきつけてくる。
 わかっていても認めたくない心のまま、シアはリクに訴えかけた。


「いま、今、なら、なかったことに、できる……っ、からぁ……!」

「なかったことにしてくれます? 本当に? 何にもなかった顔で今まで通り過ごせます? ――無理無理、何年一緒にいたと思ってるんですか。お嬢がそんな器用じゃないことなんて、お嬢よりよく知ってますよ。……だから、もう戻れないんです。俺も、お嬢もね」


 指を引き抜いたリクが、シアの愛液に塗れた手を淫らに舐めとる。その様には滴るような色気があった。


(そんな顔、知りたくなかった……!)


 シアの足を押さえつける手がまぎれもない『男』のものだということを、どんなに必死になって抵抗してもかなわないのだということを、知らないままでいたかった。


「でもお嬢、気持ちいいでしょう? この部屋はそういうふうにできていますからね。どんな痛みも快楽に変えて、『そういう』気にさせて、行為をしやすくする部屋です。歴代の苦労が偲ばれますよね」


 言いながら、リクは下穿きをくつろげた。そそり立ったリクのモノがシアの視界に入る。
 その大きさに、シアは身震いした。知識はある、それをどうするのかも知っている、だけれど無理だとしか思えない。


「そんな怯えないでくださいよ。言っておきますけど、俺の大きさなんて平均的なものですからね。【青】とか【赤】のはもっと大きいんじゃないですか?」


 そう言われても、比較対象を知らないシアからすればなんの慰めにもならない。
 恐怖にこわばるシアの頬を、リクは優しく撫でた。幼子をあやすように。


「大丈夫です。言ったでしょう? この部屋は『そういう』ふうにできてるって。初めてだって痛くないらしいですから、安心してください」


 何も安心できる要素がないのに、リクはそう言って、シアの足を高く上げた。そして自身のモノを、シアの入り口に押し当てる。


「やっ……やぁ……無理……!」

「無理じゃないです。あれだけほぐしたんだから入ります。そういうものです」


 いつもと変わらない口調で淡々と言って、リクはグッと腰を押し進めた。

 ぐちゅりと音を立ててリクのモノがシアのナカに入ってくる。ず、ずず、とさしたる抵抗もなく迎え入れてしまうそこに、シアは絶望的な気持ちになった。
 と、何かにひっかかったように割り入ってくる動きが止まる。それが何故なのかわかって、シアは今度こそ泣き喚いた。


「やだ、やだ……それ以上は……!」

「そう泣かれると俺もちょっと罪悪感が芽生えるんですが……諦めてください。処女の〈姫〉なんて意味がないって、もうわかってるでしょう?」


 ぐっと力任せに押し込まれて、何かがぶつりと切れるような感覚がする。痛いはずのそれは、快感となってシアを苛んだ。


「んっ、ンん……!」

「はっ……はぁ……はッ、……あー。入りましたね」


 淡々と。こんな時でも淡々と、リクは事実だけを述べて、ゆっくりと抽送を開始する。


「あっ……動か、ないで……ッ」

「無茶言わないでください。俺だってこの部屋の影響を受けてるんです。だいぶ我慢してるんです、よっ」


 言葉とともに、ずん、と最奥を貫かれる。シアの背をびりびりと快感がはしった。


「あッ……ああっ、ンッ」

「気持ちいいですか? まあ、この部屋でヤッて、気持ちよくならないわけがないんですけど」


 ずん、ずん、と何度も奥を貫かれる。その度にあられのない声をあげてしまって、シアは消え入りたい気持ちになった。


「そんな顔しないでいいんですよ。誰だってそうなっちゃうんですって、この部屋では。――まあ、俺との行為で感じてくれてるって方が、俺は嬉しいですけ、どッ」


 憎らしいほどにいつもどおりだったリクの息が荒くなる。抽送の間隔が速くなる。白い波が、シアの意識を攫おうとする。


「やっ、やだ、やだぁ、リク……! イッちゃう、イッちゃう……!」

「イっていいですよ、俺も、すぐ……!」


 ひときわ強く奥を貫かれて、シアはびくびくと痙攣し、達した。
 一拍の後に、お腹の奥に熱いものが注がれて、シアはまたびくりと体を震わせた。


「ん、んー……あー……やばいなこれ。気持ちよすぎる……」


 断続的に熱いものをシアのナカに注ぎながら、リクはひとりごちるように呟いた。


「な、中に、出した、の……?」

「抜かなかったからそうですね。わかるでしょう?」


 何でもないことのように言われる。シアは慌てて腰を引こうとしたが、リクの動きの方が早かった。より深くつながるように腰を押し付けられる。


「何慌ててるんですか。わかってるはずでしょう。――〈姫〉は〈神子〉の器となる子どもを宿さないといけないんですから、中出しなんて問題はないんですよ。むしろ、中出ししないと孕まないんですから、そうしないと」

「で、でも……」

「でももだってもありません。――お嬢はもうちょっと、〈姫〉っていうのはどういうものか、思い知らないと駄目みたいですね」


 ナカにおさめられていたままのモノがまた大きさを取り戻す。シアは蒼白になった。


「一回で終わると思いましたか? 残念ながら、俺もそんなに枯れていないので。もう少し付き合ってもらいますよ」


 どこか愉しげにリクが言うのに、シアは気が遠くなるのを感じた。


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