【完結】とある侯爵令嬢ですが婚約破棄されました~おバカな王子様は要らないので従妹に差し上げます~

しのみやあろん

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10:シャーロッテ視点②※

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「お前、その男のことを知らないのか?」

 ベッドで男が不思議そうに聞いてくる。なによそれ、知るわけないじゃん。
 わたしが知らないのが分かって、男がフン、と鼻を鳴らした。

「俺が昔働いてた伯爵家の入り婿だよ。下半身のユルい男なんか家に入れちまって、伯爵家も災難だ」

 なにそれなにそれ。母さんはわたしのこと、その男とヤッて出来たって言ってるんだよ?
 それなら、わたしは伯爵令嬢じゃん!

「なあ、お前、自分が伯爵令嬢とか思ってないかあ?」

 ギクっとなったわたしを見て図星だと思ったんだろう。大笑いしはじめる。
「馬鹿だなオイ。入り婿が外の女との間に作った子供になってるってことだろ?伯爵家の血なんざ一滴も流れてないだろが。そんなんで伯爵令嬢なんて言えるかよ。それにしてもお前のえらい性悪だな」

 そんな女とよろしくヤッてたのは誰だっての。アンタにだけは言われたくないわよ。

 男がなんで伯爵家を辞めたのか聞いたら解雇されたんだとか。手あたり次第使用人に手を出してたら当然だろう。下半身がユルいのはどっちだって話。
「なんだあ?俺がいろんな女とるのが気に入らないかあ?」


 頭にきたので母さんの家に帰ると、伯爵家にわたしの存在がバレたとかで、が家に居た。
 そのまま何日もずっと家にいるので変だと思ったら、無一文のまま伯爵家を追い出されたらしい。
 母さんも怒ってて、二人がベッドでわけでもなかったから、しばらくわたしも家にいた。食堂の給仕はとっくに辞めてる。働かなくたって、男ににっこり笑いかければどうとでもなるし。
 
 それよかこいつ馬鹿じゃないの。ホントにわたしが実の娘だと信じて疑ってないの?

 男はベラベラと言い訳がましくしゃべってる。

 伯爵家を追い出されて、実家のリンゼヴァイド侯爵家に戻ろうとしたけど、当主になっていた兄に追い出されたこと、親子三人でここで幸せに暮らしたいこと。
 マジか。母さんにすっかりダマされちゃって。
 
 とはいっても、働こうともしないじゃん。ヒモになる気マンマンだね。
 そういう目で睨んだら"伯爵家にいたころは、母さんに毎月お手当を払ってた"だってさ。
 たいした金額じゃないのは見え見えだけどね。じゃなかったらこんなところに住んでないよ。
 だけどそれで、母さんがなんでわたしをこの男の娘だって言ってたのか分かった。この男から金を巻き上げるためだったのか。

 それよか、こいつ侯爵家の次男だったの?
 わたしが興味を示したのが嬉しかったらしい。男の口はいろんなことを吐き出した。
 
 話に聞くリンゼヴァイド侯爵家はすごい貴族さまだった。当主は外交官、妻は隣国の公女さま。
 極めつけは一人娘が第一王子の婚約者!なにそれ、未来の王妃さまじゃん。
 モロ雲の上の人ってやつ?
 はあ。ため息しか出ないよ。世の中には恵まれた奴ってのがホントにいるんだ。ムカつく。
 


 日がな一日家にいる奴のせいで、わたしは森の小屋にいることのほうが多くなった。

 ある日、どこで調べたのかわたしをとり上げたっていう産婆のところに連れて行かれる。ものすごい皺くちゃで、よく生きてるな、ってくらい。
 婆さんはわたしを見るなり、にたぁと笑った。歯がほとんどない。
「なんじゃ?坊、娘っ子と一緒かや?」ギリなに言ってるか分かるくらい。

「こいつ、どの女から産まれたんだ?」

「何じゃ、もう知っとったと思ってたが。あの性悪女さね。あいつ、わしに金も払わず逃げおってからに」
 男が舌打ちする。
「やっぱりか。血は争えんな……例のを頼む」

「……いいんか?」

「こうまで好き者だと今やっといたほうがいいだろが」
 
 ちょっと!わたしを無視して話を進めないでよ!
 
 二人が一斉にこっちを見る。赤い目と目が合った。わたしとおんなじ赤い――

 


 ◇◇◇





 母さんの部屋にもいたくないし、小屋にいると男の欲望のはけ口に使われるから、なるべく町にいるようにしてる。
 町に一人でいても、かどわかされることもないし、ゴロツキに襲われることもない。
 この髪と目のおかげなんだとあとから知ったけど。


 町で声を掛けてくる奴に食事を奢ってもらったり、夜通し遊んだりを繰り返して何日かぶりに森の小屋に戻ると、男が見たことない女と行為の真っ最中だった。
 扉を開けたらすぐベッドがあるから、繋がってるのがバッチリ見える。


「……なんだ、戻ったのかあ?」

 そう言いながらも行為を止めようとはしない。抜き挿ししてる男の肉棒がテラテラとぬめっているのまで分かる。
 知らない女は小屋に入ってきたわたしに驚いて起き上がろうとしたけど、男に膝裏をがっちり掴まれ脚を持ち上げられていて身動きが取れないようだった。
 ……あぁいやだ……男のことなんて大嫌いなのに……アソコがジュクっと潤んだ。それが挿さってるのはいつもならわたしなのに。


「まだからどっかそのへんにいろよ。こっち出したらすぐ挿れてやるから」

 男が射精するためだろう。腰の動きが激しくなった。
 小屋中ベッドのギシギシ音が響いてるってのに、こんなとこいられるかっての。
 女も女だ。顔がちょっと良くて身体も見た目がいいなら誰でもいいのかって。
 分かってた。分かってたよ!
 男が女断ちなんて出来るわけないって。




 
 森の小屋を飛び出して母さんの家に帰ると、鍵がかかってなくてすんなり扉が開く。


 イヤな汗が噴き出した。
  
 部屋の中におかれた大きいベッドと古臭いソファ。それだけ。他はなにもない。身の回りの物は全部空っぽだった。

 誰もいない。


 あわてて母さんとわたしが働いてた食堂に行くと、おかみに「どこに行ってたんだい!」と肩を揺さぶられる。
 
「あんたの母さんと父さんの乗った馬車が事故に遭ったんだよ!今すぐ憲兵の駐在所に行くんだ」

 最初はなにを言われてるか分からなかった。
 母さんと父さんが馬車に乗ってて事故……?
 
 
 うそ……っ。

 わたしを残してどこに?
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