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15 たくさんの友達が僕にしてくれたこと
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夏の間には何度か商人たちがやってきて、牧草サイレージ用のトウモロコシと食用の緑と白のアスパラガスを大量に売りにくる。商人たちは服装がちょっと立派になっていた。
あれ?とっくに旬が過ぎてるけれどそれでも美味しいアスパラガスはともかく、このトウモロコシは……。
思わず馬車から下ろされているどでかい葉っぱ付きのトウモロコシに見入っていると、今はもう懐かしい初夏の頃、見本の種をくれた一番若い商人がにっかと笑った。
彼は言う。辺境伯家門が農家になっちゃった、と。どういうことだろ?疑問は尽きない。
夏は農家には忙しい季節だ。人の訪れも頻繁である。
徒歩で一時間も歩けば村もあるし、荷車を馬やロバで曳いて来られるなら町も日帰りコースである。農家の従業員が荷車にいろいろな商品を積んで売りに行っては日常品のあれこれを買って戻ってくる。
逆にチーズやバターや牛乳、卵を買いに来る人もいれば、肉を買いに来る人もいる。商人たちが持っていた燻製肉は全てここの肉だった。
繁殖用のとっても立派な種雄牛を連れてきた人がいたので、アーサーはこの人の連絡先をしっかり聞いておいた。
毎日毎日土を掘り返す。コツコツと。
アクアオッジ家門は積み重ねることを厭わない一族だった。
アーサーの手はマメが出来て潰れてを繰り返し、手の平はどんどん硬くなっていった。
もうなまっちろい、とは誰も思わない身体になっていた――
そしてその日はやってきた。
毎日こうして耕しているけれど、クローバーを植えて根付かせるのは大変だなあどうしようかなぁと、のんびり考えていると、少しずつ増えていた渡り鳥たちが今や上空いっぱいに飛んでいる。
空を覆い尽くさんばかりの真っ黒い鳥の影に、農家のみんなが気が付いて、余りの異常さに空を指さしながら一斉に見上げた。
クローバーはここからここまで、というのをちゃんと聞いていた渡り鳥たちがズタ袋から各々クローバーを嘴に咥えていて、アーサーとミミズたちが夏の間耕した荒野に一斉に落とした。
これにはアーサーもビックリだ。
足元ではミミズたちが、"旅立つときにてつだうっていってたうー""土つくりてつだうまいうー"そう言ってる気がした。
【動物スキル?】のおかげで出来たたくさんの友達が、南に旅立つ最後の日にアーサーが一番求めていたことをしてくれたのだ――
クローバーを落とし終えた渡り鳥たちはあっさりと飛んで行ってしまった。
お礼を言いたかったのに。アーサーは嬉しくて泣いた。ありがとう。優しい僕の友達たち……君たちの無事を祈ってるよ……
夕食の時間になり、アーサーはみんなの質問攻めにあうが、「【動物スキル?】のおかげです」と言いながら渡り鳥たちのことを想って泣いた。みんなが優しく抱きしめてくれるので余計に大泣きだった。
翌日、クローバー生息予定地に向かうと、アーサーは絶句する。
真っ当ではないクローバーたちは見事に根付いていた。
動物たちはクローバーが普通じゃないことをちゃんと知っていたのだ。
◇◇◇
あれ?とっくに旬が過ぎてるけれどそれでも美味しいアスパラガスはともかく、このトウモロコシは……。
思わず馬車から下ろされているどでかい葉っぱ付きのトウモロコシに見入っていると、今はもう懐かしい初夏の頃、見本の種をくれた一番若い商人がにっかと笑った。
彼は言う。辺境伯家門が農家になっちゃった、と。どういうことだろ?疑問は尽きない。
夏は農家には忙しい季節だ。人の訪れも頻繁である。
徒歩で一時間も歩けば村もあるし、荷車を馬やロバで曳いて来られるなら町も日帰りコースである。農家の従業員が荷車にいろいろな商品を積んで売りに行っては日常品のあれこれを買って戻ってくる。
逆にチーズやバターや牛乳、卵を買いに来る人もいれば、肉を買いに来る人もいる。商人たちが持っていた燻製肉は全てここの肉だった。
繁殖用のとっても立派な種雄牛を連れてきた人がいたので、アーサーはこの人の連絡先をしっかり聞いておいた。
毎日毎日土を掘り返す。コツコツと。
アクアオッジ家門は積み重ねることを厭わない一族だった。
アーサーの手はマメが出来て潰れてを繰り返し、手の平はどんどん硬くなっていった。
もうなまっちろい、とは誰も思わない身体になっていた――
そしてその日はやってきた。
毎日こうして耕しているけれど、クローバーを植えて根付かせるのは大変だなあどうしようかなぁと、のんびり考えていると、少しずつ増えていた渡り鳥たちが今や上空いっぱいに飛んでいる。
空を覆い尽くさんばかりの真っ黒い鳥の影に、農家のみんなが気が付いて、余りの異常さに空を指さしながら一斉に見上げた。
クローバーはここからここまで、というのをちゃんと聞いていた渡り鳥たちがズタ袋から各々クローバーを嘴に咥えていて、アーサーとミミズたちが夏の間耕した荒野に一斉に落とした。
これにはアーサーもビックリだ。
足元ではミミズたちが、"旅立つときにてつだうっていってたうー""土つくりてつだうまいうー"そう言ってる気がした。
【動物スキル?】のおかげで出来たたくさんの友達が、南に旅立つ最後の日にアーサーが一番求めていたことをしてくれたのだ――
クローバーを落とし終えた渡り鳥たちはあっさりと飛んで行ってしまった。
お礼を言いたかったのに。アーサーは嬉しくて泣いた。ありがとう。優しい僕の友達たち……君たちの無事を祈ってるよ……
夕食の時間になり、アーサーはみんなの質問攻めにあうが、「【動物スキル?】のおかげです」と言いながら渡り鳥たちのことを想って泣いた。みんなが優しく抱きしめてくれるので余計に大泣きだった。
翌日、クローバー生息予定地に向かうと、アーサーは絶句する。
真っ当ではないクローバーたちは見事に根付いていた。
動物たちはクローバーが普通じゃないことをちゃんと知っていたのだ。
◇◇◇
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