36 / 45
番外編 今日もアクアオッジ家は平和です⑫
しおりを挟む
そのとき、王子の背後で光がゆらゆらと揺れ動いた。一つ、二つ、数が増えてくる。
メリルが自分じゃない後ろを見ていることに気が付いて、王子の動きも止まった。
"んも~!そこまでにしなさいよね?"
"ホントホント!メリル困らせちゃダメじゃない"
……あ、精霊たち!?
メリルが考える間もなく、扉が激しくノックされる。
「メリル!?どうしたんだい?精霊たちが慌ててる」
――ウィルだ!助かったぁ~。
なんだか……どっと疲れた……お腹空いた~……その時メリルがパッと閃いた。
ちっ、と王子が舌打ちをして鍵を開けると、ウィルとソルが扉を開けて転がり込んでくる。
「メリルお嬢さま……ッ!?」
「メリル、だいじょう……ぶ?」
「あ~~~~!!王都の焼き串の買い食い~わすれてた~!」
王子が片手で顔を隠して笑い出した。もう笑いしか出てこない。
「……ハハッ。ハハ…」
ウィルフレッドが王子に気忙しく尋ねる。
「王子殿下!?なぜメリルの部屋に?」
「ただちょっと二人っきりで話をしたかっただけだよ」
扉が勢いよく開いたことでメリルの頭に、とあることが唐突に閃いた。ずっと考えていたこと。決して焼き串のことではない。いや、それもあったけれど、この館に来たときに行かなくちゃいけない場所があることを思い出したのだ。
「あ、あのっ!ちょっとみんな付いてきてくれませんかっ。気になることがあるんです」
「うん?」
「えっ。メリルどうしたの」
「ウィル、場所は忘れちゃったんだけど…わたしが気に入ったさかさまバニーちゃんの絵のとこまで連れてって」
「うん?分かった」
◇ ◇ ◇
こうして四人は、仮装したバニー姿の男が何かを指さしながらさかさまにひっくり返っている絵(ウィル談)のある部屋に向かっている。
一階は使っている部屋は応接間くらいで、あとは未使用のままだった。照明もつけていないので、真っ暗闇の中を、ソルが持つ灯りを頼りに進んでいく。護衛騎士たちにはしばらく待機してもらうようにお願いしてあった。最初は反対されたけれど、アクアオッジ家の屋敷だし、万が一があったとき二手に分かれていたほうがいいと王子が無理矢理説得した。あとから様子を見に来る約束付きで。まあ、ソルもいるしね。
その部屋は巧妙に分かりづらくなっている場所にあった。
気が付いたのもスキルのおかげだった。というのも――
メリルが自分じゃない後ろを見ていることに気が付いて、王子の動きも止まった。
"んも~!そこまでにしなさいよね?"
"ホントホント!メリル困らせちゃダメじゃない"
……あ、精霊たち!?
メリルが考える間もなく、扉が激しくノックされる。
「メリル!?どうしたんだい?精霊たちが慌ててる」
――ウィルだ!助かったぁ~。
なんだか……どっと疲れた……お腹空いた~……その時メリルがパッと閃いた。
ちっ、と王子が舌打ちをして鍵を開けると、ウィルとソルが扉を開けて転がり込んでくる。
「メリルお嬢さま……ッ!?」
「メリル、だいじょう……ぶ?」
「あ~~~~!!王都の焼き串の買い食い~わすれてた~!」
王子が片手で顔を隠して笑い出した。もう笑いしか出てこない。
「……ハハッ。ハハ…」
ウィルフレッドが王子に気忙しく尋ねる。
「王子殿下!?なぜメリルの部屋に?」
「ただちょっと二人っきりで話をしたかっただけだよ」
扉が勢いよく開いたことでメリルの頭に、とあることが唐突に閃いた。ずっと考えていたこと。決して焼き串のことではない。いや、それもあったけれど、この館に来たときに行かなくちゃいけない場所があることを思い出したのだ。
「あ、あのっ!ちょっとみんな付いてきてくれませんかっ。気になることがあるんです」
「うん?」
「えっ。メリルどうしたの」
「ウィル、場所は忘れちゃったんだけど…わたしが気に入ったさかさまバニーちゃんの絵のとこまで連れてって」
「うん?分かった」
◇ ◇ ◇
こうして四人は、仮装したバニー姿の男が何かを指さしながらさかさまにひっくり返っている絵(ウィル談)のある部屋に向かっている。
一階は使っている部屋は応接間くらいで、あとは未使用のままだった。照明もつけていないので、真っ暗闇の中を、ソルが持つ灯りを頼りに進んでいく。護衛騎士たちにはしばらく待機してもらうようにお願いしてあった。最初は反対されたけれど、アクアオッジ家の屋敷だし、万が一があったとき二手に分かれていたほうがいいと王子が無理矢理説得した。あとから様子を見に来る約束付きで。まあ、ソルもいるしね。
その部屋は巧妙に分かりづらくなっている場所にあった。
気が付いたのもスキルのおかげだった。というのも――
0
お気に入りに追加
692
あなたにおすすめの小説
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
「お前は彼女(婚約者)に助けられている」という言葉を信じず不貞をして、婚約者を罵ってまで婚約解消した男の2度目は無かった話
ラララキヲ
ファンタジー
ロメロには5歳の時から3歳年上の婚約者が居た。侯爵令息嫡男の自分に子爵令嬢の年上の婚約者。そしてそんな婚約者の事を両親は
「お前は彼女の力で助けられている」
と、訳の分からない事を言ってくる。何が“彼女の力”だ。そんなもの感じた事も無い。
そう思っていたロメロは次第に婚約者が疎ましくなる。どれだけ両親に「彼女を大切にしろ」と言われてもロメロは信じなかった。
両親の言葉を信じなかったロメロは15歳で入学した学園で伯爵令嬢と恋に落ちた。
そしてロメロは両親があれだけ言い聞かせた婚約者よりも伯爵令嬢を選び婚約解消を口にした。
自分の婚約者を「詐欺師」と罵りながら……──
これは【人の言う事を信じなかった男】の話。
◇テンプレ自己中男をざまぁ
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
<!!ホットランキング&ファンタジーランキング(4位)入り!!ありがとうございます(*^^*)!![2022.8.29]>
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる