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番外編 今日もアクアオッジ家は平和です⑦

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 ◇ ◇ ◇


 三体のドラゴンがタウン・ハウスのドラゴン留まりに降り立った。
 管理人はすでに今か今かとみんなの到着を待ち構えていた。隣にはおそらく王子の護衛騎士たちだろう。馬から降りて一緒に並んでいる。
 きゅう舎の管理人も下働きの者を数名連れてきていた。今日はここに一泊するためドラゴンの鞍を外すためだ。

「お待ちしておりました。馬車もこちらに。直ぐにリー商会に向かわれますか?」

「そうしましょ。約束の時間ギリギリだもの」
 母がドラゴンにお礼を言ったあとそう言うと、管理人がエスコートして馬車へと案内する。
「かしこまりました」

 王子がメリルの手を取ると連れ立って馬車に乗り込む。彼女は気が付いていないが、王子はこういう時の席順まで常に意識し、注意を怠らない。メリルは母と王子に挟まれた。そのあとウィルフレッド、ソルが乗り込み馬車が出発する。王子の護衛騎士たちは各自の馬に乗って馬車と並走していた。

「う~相変わらず遠目から見ても悪趣味な家だよねえ」
 メリルが窓から見える館を見て遠慮なく口にする。

「ホントだね。今回上から初めて館を眺めたけど、なんか変な像がくっついてるし。しかも像はみんな全裸だし…」

「おええ。ウィルよく見てるね…」

 そんな二人の様子を見ながら母は言った。
「あらあら。仕方ないわ。取り壊すことも考えたのだけれど、当時は買うだけで精いっぱいでね。それでも中に置いてあった物は、商人たちが結構頑張って高値で買い取ってくれたのよ。おかげで外観はともかく、内装はさっぱりしたじゃない。(それに念願の一人一台のベッド)」

 ウィルフレッドが母の一番言いたかった心の声をしっかりと聞き届けた。
「(一人一台のベッドが最高)…それってなんだかよく分からない壺とか彫像とか絵画ですよね。館に入ったとき、余りの悪趣味さにびっくりしたよなあ。そういえばメリルが何故か気に入ったあの絵画は……」

「あ!あれは、売っちゃダメって父さまにお願いしたの!だって可愛い絵だったし!」

「「可愛いー?」」
 ありゃ?母さまとウィルが見事にハモった。何故かメリルは数年前の自領の街で髪と眉毛が全焼した男たちを思い出した。やった張本人はメリルだが。

「仮装したバニー姿の男が何かを指さしながらさかさまにひっくり返っている絵が!?」
 ウィルフレッドが呆れてお手上げの仕草になった。

「うん。だってあの努力はすごいよね。さかさまになってるのに涼しい顔してて」

 馬車の中に大量の『?』が飛び交った。絵だよね?今話してるのは絵の話だよね?そんな『?』だ。

"メリルってやっぱり"

"ヒトにしては変よね"

"面白いからま、いっか"

 何が面白いのか。ぷぅ、と膨れながら大真面目にメリルは思った。


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