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第9話「灯油」の大火災
図書館へ行こう
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あなたもそろそろ「おつよん」の勉強が楽しくなってきた頃ではないだろうか?
少なくともわたしはとても楽しい。
なんといっても、知らない世界を新しくのぞき込むという体験は胸が踊る。
学び始めというのはどんな事でも──たとえその対象が危険物という物騒な代物であっても──ワクワクするものだ。
前回の話でわたしたちは静電気について学んだ。
わたしはそれについてより詳しく知りたくなった。
いつのまにか、わたしの理科アレルギーもだんだんと弱まってきたようだった。
わたしは夏休みのある午後、図書館へ行こうと決めた。
静電気についてもっと調べるのだ。
せっかく興味が湧いてきている今こそチャンスだ。
こんな知的興奮は小学生の自由研究のとき以来だった。
でも、そこはわたしにとって、あまりに久しぶりの場所だったので少し緊張していた。
本がたくさんあるような空間は、勉強とは縁遠かった人間には足を踏み入れがたい。
近所の大きな図書館は徒歩でも行けるような距離にあったのに、一人で行くのはなんとなく怖かった。
さんざん迷ったあげく、わたしは妹のハッカにいっしょについてきてと頼むことにした。
彼女は快諾した。
「いいよ。ちょうど部屋で勉強するのにも飽きた頃だったし、私も調べたいものがあったから」
「よかったー。ありがとう。ところで、ハッカは何を調べるつもりなの?」
「ミカエリス・メンテン式についてかな」
と妹は答えた。
「み、みかえるす……めんめん……?」
彼女が知りたいというそれは、聞き慣れないおまじないの呪文のような言葉だった。どうやら化学の何かの公式らしい。
しかし安心してもらいたい。
この式は「おつよん」の試験には出てこない。
だから、ぜひ覚えないでおこう。
少なくともわたしはとても楽しい。
なんといっても、知らない世界を新しくのぞき込むという体験は胸が踊る。
学び始めというのはどんな事でも──たとえその対象が危険物という物騒な代物であっても──ワクワクするものだ。
前回の話でわたしたちは静電気について学んだ。
わたしはそれについてより詳しく知りたくなった。
いつのまにか、わたしの理科アレルギーもだんだんと弱まってきたようだった。
わたしは夏休みのある午後、図書館へ行こうと決めた。
静電気についてもっと調べるのだ。
せっかく興味が湧いてきている今こそチャンスだ。
こんな知的興奮は小学生の自由研究のとき以来だった。
でも、そこはわたしにとって、あまりに久しぶりの場所だったので少し緊張していた。
本がたくさんあるような空間は、勉強とは縁遠かった人間には足を踏み入れがたい。
近所の大きな図書館は徒歩でも行けるような距離にあったのに、一人で行くのはなんとなく怖かった。
さんざん迷ったあげく、わたしは妹のハッカにいっしょについてきてと頼むことにした。
彼女は快諾した。
「いいよ。ちょうど部屋で勉強するのにも飽きた頃だったし、私も調べたいものがあったから」
「よかったー。ありがとう。ところで、ハッカは何を調べるつもりなの?」
「ミカエリス・メンテン式についてかな」
と妹は答えた。
「み、みかえるす……めんめん……?」
彼女が知りたいというそれは、聞き慣れないおまじないの呪文のような言葉だった。どうやら化学の何かの公式らしい。
しかし安心してもらいたい。
この式は「おつよん」の試験には出てこない。
だから、ぜひ覚えないでおこう。
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