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第7話 優しい熱の伝わり方

熱は3通りに伝わる

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  さて、ここから前回の熱にまつわるお話の続きをしよう。

  今回は熱の伝わり方についてだ。

  灯油を使うストーブやファンヒーターは、その温められた内部から輻射熱(ふくしゃねつ)を出し、付近の空気や周囲の物を温める。

  このようにして移動する熱の伝わり方のことを「放射」または「輻射」という。

  熱というのは、3種類の現象によって伝わることが知られている。

  放射のほかに伝導、そして対流がある。

  これも「おつよん」合格のためには欠かせない知識だ。試験に出やすいからぜひ覚えておこう。



  あなたにも経験があると思うが、夏場に駐車中の車のボンネットに手を当てると、すごく熱くなっていてとても触っていられない。

「あちっ!」と反射的に手を離してしまう、あの光景だ。

  これは熱が金属から肌へ、つまり隣接する物質から物質へと直で伝わる「伝導」が生じるために起こる。

  ちなみに、熱は物質によって伝導のしやすさが異なっていて、それを「熱伝導率」という。

  ボンネットの素材に見られるような金属は良導体(良く伝導させる物体)であり、非金属に比べて熱伝導率が大きくなっている。

  そのため、熱をとても伝えやすいのだ。



  一方、「対流」とはその名の通り、空間内を熱を帯びたかたまりや群れ──これはしばしば気体や液体である──が流れて移動していく現象のことだ。

  たとえば、暖房の効きはじめた室内を思い起こしてほしい。

  部屋全体はまだ均一に暖かくなっているわけではなく、冷えたままの場所も暖まった一角もある。

  熱の加えられた物質、この場合空気は、膨らんで体積を増し──これを「熱膨張」という──軽くなる。

  軽くなれば天井つまり高所へ向かって上昇し、このようにして空間のほかの地点へと熱を運ぶ。

  それが次第に拡がってゆき、やがて部屋全体が「対流」つまり熱の流れによって暖まっていくわけだ。



  ついでに「熱膨張」についても説明しておこう。

  ちょっと解説が長くなってあなたも頭がまた痛くなってきたかもしれないけど、ここは大切な部分なので、なんとかもう少し聞いてほしい。

  これについてはギャスのある話を引用する。

「273分の1」

  そう彼は教えてくれた。

「273分の1ずつだ。温度が1度上がるごとに、気体はそれだけの分膨らむ」

  そう言うと、ギャスは口を閉じて両頬をぷうーっと膨らませてみせた。

「いいか、インカ?危険物のなかでも液体を保管する時はだな、特に注意が必要だ。なぜかって?液体は固体と比べて、熱によって膨張しやすい」

  と彼は話した。

「つまりだな、容器に入れる際にはすきまを作っておかなくちゃならないんだ。
  じゃないと、熱くなったら勝手にその液体は体積が増えてあふれちまうだろ?」

  このすきまのことを、おつよん用語では「空間容積」という。

  また、熱による体積の増えやすさは「体膨張率」と呼び、物質ごとに決まっている。

  熱膨張によって増える分は、もとの体積に「変化した温度の差」と「体膨張率」をかけ算することで求まる。

  これは計算問題を解いて確かめてみるといい。

  桁数を間違えやすいから、実際に自分の手を動かして答えを出してみることが大事だ。



  以上に述べた、放射・伝導・対流、いずれの伝わり方も熱現象を考えるうえで大事なキーワードだけど、「おつよん」においては特に最後の「対流」を意識してほしい。

  第4話の蒸気比重のところで学んだ「低所に滞留する」という表現を覚えているだろうか。

  そう、空気より重い危険物の蒸気は、地表面近くにたまりやすくなるのだった。

  対流のとらえ方とこれは似ている。合わせて忘れないようにしよう。


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