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筆頭局長
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「沖田ぁ、ちったぁ付き合えや」
芹沢筆頭局長が酒を誘ってきたのはまだ日が高かった頃だと思う
俺は近藤さんみたいに一派を引き連れてるわけでも、土方さんみたいに芹沢さんを毛嫌いしてるわけでもなかったから安易に了解した
珍しく新見さんや野口さんがいない、なんて当時は呑気に考えていたけれど……
今思えば何故近藤派の俺だけを誘った理由なんていくつもないはずだろうに
俺は酒を飲むほうではない
とはいえ、近藤さんよりは飲める
お梅さんが
「芹沢はんがめずらしいわぁ、こんな若い子つれてきはるやなんて」
なんていいながら芹沢さんに酒を注いだ
若い『子』と言われ少々むっとしたものの、
「こんなでも立派な大人なんですよ、私」
と返してみる
すると
「はっ、まだ人を斬ったことがねぇんだよ、こいつ。だから子供みてぇに澄んだ目してるだろ」
「あぁ、成る程。でも私はこういうお人に人斬りになってほしくはあらへんよ」
芹沢さんの横槍が入りつつも彼女は俺のお猪口に酒を注いだ
飲めばたちまち体の芯から熱が込み上げてきて酒の旨さが口に広がった
あまりにもうまい酒だったので心のうちで「流石芹沢さん、商家から金を巻き上げているだけある」と密かに誉めた
しばらくすると、芹沢さんがお梅さんを部屋から払った
彼女が訳をきいたが、
「男同士の話があるのさ」
というだけでそれ以上何も言わなかった
彼女が退いてからしばらくの沈黙が流れた
無言で芹沢さんが酒を煽ってくるが、いかんせんもう飲めそうにはなかったので断った
「沖田ぁ」
「なんです?」
「……おめぇは女としたことあるか」
「何故今、」
「答えろ」
なぜだか不機嫌な芹沢さんに対して答えをまた濁すのは得策じゃあないから
「……したことはないです」
と正直に言う
「そうか、なら男はっ‼」
全く予期せぬ事態が起きた
芹沢さんがそう言った瞬間、俺が言葉を放つ寸前にとっくりから溢れる白濁した大量の酒が口に直接注ぎ込まれたのだ
「――――――っ、がほっ❗……ぁが」
既に酔っていた俺は更に酔わされた結果、腰にある刀を抜くことさえままならなくなっていた
そんな情けない自分にかまうことなく、芹沢は俺を抱きしめる
とっくりやお猪口はこぼれた酒とともに畳に散乱し、部屋には芹沢と己の荒い息遣いだけが静かに響く
「やめてくださいっ、芹沢さんんんんっ」
この時俺は男同士の接吻なんてこれから先一生ごめんだ、と思った
猿ぐつわにされ、一通り芹沢にやらされたあとはもっとひどかった
何も抵抗できずにいた自分への怒り
剣を極めてきてこの程度だったという失望感
近藤さんや土方さん、試衛館のみんなへの後ろめたさ
それでも芹沢に愛撫されて悦び、今でも思い出すだけで火照る身体への絶望が許せない
そんな負の感情が心に、身体にこびりついてとれないまま、
今夜芹沢を斬りに行く自分が許せない
芹沢筆頭局長が酒を誘ってきたのはまだ日が高かった頃だと思う
俺は近藤さんみたいに一派を引き連れてるわけでも、土方さんみたいに芹沢さんを毛嫌いしてるわけでもなかったから安易に了解した
珍しく新見さんや野口さんがいない、なんて当時は呑気に考えていたけれど……
今思えば何故近藤派の俺だけを誘った理由なんていくつもないはずだろうに
俺は酒を飲むほうではない
とはいえ、近藤さんよりは飲める
お梅さんが
「芹沢はんがめずらしいわぁ、こんな若い子つれてきはるやなんて」
なんていいながら芹沢さんに酒を注いだ
若い『子』と言われ少々むっとしたものの、
「こんなでも立派な大人なんですよ、私」
と返してみる
すると
「はっ、まだ人を斬ったことがねぇんだよ、こいつ。だから子供みてぇに澄んだ目してるだろ」
「あぁ、成る程。でも私はこういうお人に人斬りになってほしくはあらへんよ」
芹沢さんの横槍が入りつつも彼女は俺のお猪口に酒を注いだ
飲めばたちまち体の芯から熱が込み上げてきて酒の旨さが口に広がった
あまりにもうまい酒だったので心のうちで「流石芹沢さん、商家から金を巻き上げているだけある」と密かに誉めた
しばらくすると、芹沢さんがお梅さんを部屋から払った
彼女が訳をきいたが、
「男同士の話があるのさ」
というだけでそれ以上何も言わなかった
彼女が退いてからしばらくの沈黙が流れた
無言で芹沢さんが酒を煽ってくるが、いかんせんもう飲めそうにはなかったので断った
「沖田ぁ」
「なんです?」
「……おめぇは女としたことあるか」
「何故今、」
「答えろ」
なぜだか不機嫌な芹沢さんに対して答えをまた濁すのは得策じゃあないから
「……したことはないです」
と正直に言う
「そうか、なら男はっ‼」
全く予期せぬ事態が起きた
芹沢さんがそう言った瞬間、俺が言葉を放つ寸前にとっくりから溢れる白濁した大量の酒が口に直接注ぎ込まれたのだ
「――――――っ、がほっ❗……ぁが」
既に酔っていた俺は更に酔わされた結果、腰にある刀を抜くことさえままならなくなっていた
そんな情けない自分にかまうことなく、芹沢は俺を抱きしめる
とっくりやお猪口はこぼれた酒とともに畳に散乱し、部屋には芹沢と己の荒い息遣いだけが静かに響く
「やめてくださいっ、芹沢さんんんんっ」
この時俺は男同士の接吻なんてこれから先一生ごめんだ、と思った
猿ぐつわにされ、一通り芹沢にやらされたあとはもっとひどかった
何も抵抗できずにいた自分への怒り
剣を極めてきてこの程度だったという失望感
近藤さんや土方さん、試衛館のみんなへの後ろめたさ
それでも芹沢に愛撫されて悦び、今でも思い出すだけで火照る身体への絶望が許せない
そんな負の感情が心に、身体にこびりついてとれないまま、
今夜芹沢を斬りに行く自分が許せない
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