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第3章 : 乖離
月と太陽の衝突
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ユウキも剣を抜き、臨戦態勢に。左右に居るアインズと桜華もまた、武器を取った。が、少年は二人の仲間を制止する。
「アインズさん、桜華さん。手出しは無用です。ここは、僕にやらせてください」
「え、ユウキ殿……?」
「わかったわ。離れるわよ、桜華」
「え、でもユウキ殿は——」
「いいから、早く。大丈夫、ユウキ君は負けないわ」
「……うん」
ユウキは騎士でも何でもない素人。そう聞いていた桜華は、彼が負けてしまわないか大いに心配していた。
それと同時に、なぜアインズがここまでユウキを信じているのか、という疑問が喉につかえている。疑心暗鬼の桜華を見て、アインズは続けた。
「あなたも見てなさい。ユウキ君の、心の温かさを」
「心の……?」
二人が少し下がったのを確認し、少年はまっすぐ敵の眼を見て剣を構える。
「一人でいいのか? 死んじまうぞ?」
「僕は……負けないよ。仕返しなんて、そんな虚しいことに囚われてるお前には」
「くっ……てめえ!」
ユウキの言葉に腹を立て、彼は輝く剣を振り上げ、走った。
「サン・フラメン!」
ユウキが叫ぶと、彼の剣も輝きを帯びる。太陽のように強く明るく、煌々と周辺を刺激した光は、桜華の身体の芯まで届いて彼女を温める。
「ア、アインズ殿……? これって……?」
「ユウキ君の日長石は、クライヤマの巫女様から引き継いだ物なの。あの子が戦うと決心した時、石が呼応して、この温かさが目覚めたのよ。どう? これでも、ユウキ君の目的は復讐だと思う?」
「……ううん」
ふと桜華は自身の過去を思い返す。
復讐に駆られ、何年もかけて牙を磨いた。その結果生まれたのは、憎い相手なら殺すことも厭わない凶暴な蛇であった。
ユウキの話を聞いた桜華は、勝手に彼も蛇になってしまうと考えた。しかしそれは、大きな勘違いであると思い知った。
「ユウキ殿はもっと——私なんかより、純粋なんだ」
家族が殺され、その犯人を憎んだ桜華。対してユウキは、死んだ想い人が悪く言われないようにと行動していた。
それは報復などという悲しき行為ではないのだと、彼女はユウキに感心するばかりであった。
◇◇◇
「うおおおお!」
剣と剣が。太陽と月がぶつかり合う。火花を散らしながら、二人は互いに斬撃を繰り出し合い、また、防ぎ合う。
「はあ、はあ、しぶといな、日の巫女の力!」
「そ……そっちこそ!」
「だが……そろそろ、トドメだ!」
「うわっ⁈」
敵の跳び斬りを、間一髪で防いだユウキ。押される側となった太陽の少年は必死に防ぐも、どんどんと押し込まれていく。やはり、根本的な力の差が見え始める。
——く、くそ!
——力比べで勝てないなら!
「こっちだ!」
右方向へと逃げ、敵をしっかりと引きつけながら後ろへ数歩下がる。
——よし、来た!
月の少年はユウキを追い、勢いをつけた突き攻撃に出た。しっかりと彼の行動を確認し、ユウキは攻撃を放つ。カマイタチ戦で目覚めた、二つ目の攻撃手段である。
「サン・プロミネンス!」
剣に太陽の力をまとわせたまま空を斬ると、光が独立して前へ飛んでいく。
予想だにしなかった攻撃を、ジュアンは回避できなかった。
「なにっ⁈ ぐああああああ!」
太陽の力に全身を包まれ、もがき苦しむ。
——やるしか、無い!
少し心が痛んだが、ここで追撃をせねばと鬼になり、月の少年に向かっていく。
「くらえ、サン・フラメン!」
あわよくば首にかかった月長石を破壊してやろうと、ちょうど胸の高さに横斬りを見舞う。炎を帯びた刃が彼に——月長石に迫る。
「さ、させるかあああ!」
——えっ⁈
この宝玉は壊させまいと、彼は石の前に左腕を出してユウキの攻撃を逸らした。。無論、刃に捉えられたその腕は落ちる。
「ぐあああああ! いってえ! くそ、くそ!」
「お前……なんでわざと腕を⁈」
「この月長石は、セレーネ様がボクにくれた大事な宝だ! 信頼の証だ! それを、太陽なんて穢れた力で触らせるわけねえだろ⁈」
——も、物凄い気迫だ
——ツヴァイさんから日長石を取り返そうとしてた僕も、こんな風に必死だったのかもしれない
「くそ、くそくそ!」
血の滴る左腕を気にしながら彼は剣をしまい、右手で指笛を吹いた。
「くそ、邪神め! 今回は不意を突かれたが——次は絶対に仕留めるからな!」
「あ、ま、待て!」
指笛に呼応した月長石が徐々に光を強め、やがて月の騎士を覆い隠した。あまりの眩しさに、ユウキは思わず目を瞑ってしまった。
「い、居ない……?」
次に目を開けた時には、ジュアンの姿は無かった。なんとか撃退できたようだと安心しきったユウキは、剣を納めてその場で膝をつく。
「お疲れさま、ユウキ君」
そこへ、旅の相方であるアインズがやって来て、手を差し伸べた。大きな戦闘を一つ終えたばかりだが、主目的は守護者の討伐と鎖の破壊だ。
「ごめんね、ユウキ殿。君の温かさを感じて分かったよ。君が目指してるのは、醜い復讐なんかじゃない、ってね」
桜華も彼のもとへ駆けつけ、己の考えが変化したことをユウキに告げる。
「桜華さん……」
こうしてまた、リオとユウキが織り成す力が、他人の考えを変えるに至ったのである。
「アインズさん、桜華さん。手出しは無用です。ここは、僕にやらせてください」
「え、ユウキ殿……?」
「わかったわ。離れるわよ、桜華」
「え、でもユウキ殿は——」
「いいから、早く。大丈夫、ユウキ君は負けないわ」
「……うん」
ユウキは騎士でも何でもない素人。そう聞いていた桜華は、彼が負けてしまわないか大いに心配していた。
それと同時に、なぜアインズがここまでユウキを信じているのか、という疑問が喉につかえている。疑心暗鬼の桜華を見て、アインズは続けた。
「あなたも見てなさい。ユウキ君の、心の温かさを」
「心の……?」
二人が少し下がったのを確認し、少年はまっすぐ敵の眼を見て剣を構える。
「一人でいいのか? 死んじまうぞ?」
「僕は……負けないよ。仕返しなんて、そんな虚しいことに囚われてるお前には」
「くっ……てめえ!」
ユウキの言葉に腹を立て、彼は輝く剣を振り上げ、走った。
「サン・フラメン!」
ユウキが叫ぶと、彼の剣も輝きを帯びる。太陽のように強く明るく、煌々と周辺を刺激した光は、桜華の身体の芯まで届いて彼女を温める。
「ア、アインズ殿……? これって……?」
「ユウキ君の日長石は、クライヤマの巫女様から引き継いだ物なの。あの子が戦うと決心した時、石が呼応して、この温かさが目覚めたのよ。どう? これでも、ユウキ君の目的は復讐だと思う?」
「……ううん」
ふと桜華は自身の過去を思い返す。
復讐に駆られ、何年もかけて牙を磨いた。その結果生まれたのは、憎い相手なら殺すことも厭わない凶暴な蛇であった。
ユウキの話を聞いた桜華は、勝手に彼も蛇になってしまうと考えた。しかしそれは、大きな勘違いであると思い知った。
「ユウキ殿はもっと——私なんかより、純粋なんだ」
家族が殺され、その犯人を憎んだ桜華。対してユウキは、死んだ想い人が悪く言われないようにと行動していた。
それは報復などという悲しき行為ではないのだと、彼女はユウキに感心するばかりであった。
◇◇◇
「うおおおお!」
剣と剣が。太陽と月がぶつかり合う。火花を散らしながら、二人は互いに斬撃を繰り出し合い、また、防ぎ合う。
「はあ、はあ、しぶといな、日の巫女の力!」
「そ……そっちこそ!」
「だが……そろそろ、トドメだ!」
「うわっ⁈」
敵の跳び斬りを、間一髪で防いだユウキ。押される側となった太陽の少年は必死に防ぐも、どんどんと押し込まれていく。やはり、根本的な力の差が見え始める。
——く、くそ!
——力比べで勝てないなら!
「こっちだ!」
右方向へと逃げ、敵をしっかりと引きつけながら後ろへ数歩下がる。
——よし、来た!
月の少年はユウキを追い、勢いをつけた突き攻撃に出た。しっかりと彼の行動を確認し、ユウキは攻撃を放つ。カマイタチ戦で目覚めた、二つ目の攻撃手段である。
「サン・プロミネンス!」
剣に太陽の力をまとわせたまま空を斬ると、光が独立して前へ飛んでいく。
予想だにしなかった攻撃を、ジュアンは回避できなかった。
「なにっ⁈ ぐああああああ!」
太陽の力に全身を包まれ、もがき苦しむ。
——やるしか、無い!
少し心が痛んだが、ここで追撃をせねばと鬼になり、月の少年に向かっていく。
「くらえ、サン・フラメン!」
あわよくば首にかかった月長石を破壊してやろうと、ちょうど胸の高さに横斬りを見舞う。炎を帯びた刃が彼に——月長石に迫る。
「さ、させるかあああ!」
——えっ⁈
この宝玉は壊させまいと、彼は石の前に左腕を出してユウキの攻撃を逸らした。。無論、刃に捉えられたその腕は落ちる。
「ぐあああああ! いってえ! くそ、くそ!」
「お前……なんでわざと腕を⁈」
「この月長石は、セレーネ様がボクにくれた大事な宝だ! 信頼の証だ! それを、太陽なんて穢れた力で触らせるわけねえだろ⁈」
——も、物凄い気迫だ
——ツヴァイさんから日長石を取り返そうとしてた僕も、こんな風に必死だったのかもしれない
「くそ、くそくそ!」
血の滴る左腕を気にしながら彼は剣をしまい、右手で指笛を吹いた。
「くそ、邪神め! 今回は不意を突かれたが——次は絶対に仕留めるからな!」
「あ、ま、待て!」
指笛に呼応した月長石が徐々に光を強め、やがて月の騎士を覆い隠した。あまりの眩しさに、ユウキは思わず目を瞑ってしまった。
「い、居ない……?」
次に目を開けた時には、ジュアンの姿は無かった。なんとか撃退できたようだと安心しきったユウキは、剣を納めてその場で膝をつく。
「お疲れさま、ユウキ君」
そこへ、旅の相方であるアインズがやって来て、手を差し伸べた。大きな戦闘を一つ終えたばかりだが、主目的は守護者の討伐と鎖の破壊だ。
「ごめんね、ユウキ殿。君の温かさを感じて分かったよ。君が目指してるのは、醜い復讐なんかじゃない、ってね」
桜華も彼のもとへ駆けつけ、己の考えが変化したことをユウキに告げる。
「桜華さん……」
こうしてまた、リオとユウキが織り成す力が、他人の考えを変えるに至ったのである。
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