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幽霊探偵 AV女優の呪
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伊田裕美:幽霊探偵、旅行ルポライター。ショートカットの黒髪を持ち、知的な印象を与える黒のスーツに身を包んでいた。端正な顔立ちと鋭い眼差しが特徴で、どこか探偵のような雰囲気を漂わせている。
伝兵衛:旅行雑誌編集長。
村田蔵六:陰陽師で湯川寺(とうせんじ)の住職、幽霊探偵の相談相手。
小島孤児男:AVのアシスタント・ディレクター。
藤宮凛(本名:須田久子):自殺したAV女優。
第1証:怪奇現象
【呪われた撮影現場】
藤宮凛が命を絶ったスタジオは、業界の中でも曰く付きの場所として知られるようになっていた。以来、そのスタジオでは不可解な出来事が相次いだ。撮影中に照明が突如消えたり、カメラのバッテリーが一斉に上がったり。さらに、撮影した映像を再生すると、ありえないものが映り込んでいることがあった。
ある日、現場にいたスタッフの一人が突然失踪した。撮影の合間に「ちょっと外の空気を吸ってくる」と言い残し、二度と戻らなかった。警察の捜査でも手がかりはなく、彼の携帯には最後に撮影現場で撮った不可解な写真が残されていた。それは、誰もいないはずのスタジオの隅で、不気味に微笑む女性の姿だった。
【幽霊女優と交わる夜】
AV男優・倉田充雄(くらた みつお)は、最近奇妙な夢に悩まされていた。夢の中で絡む相手は、かつて共演した女優・藤宮凛。彼女は数年前に自殺したはずだ。
夢の中の凛は、ぬめるような白い肌と冷たい手を持ち、倉田の耳元で囁く。「私を覚えてる?」
倉田はその夢を見るたび、寝汗をかいて飛び起きる。しかし、恐ろしいのはそれだけではなかった。目覚めると、いつも自分の体に何本もの指の跡が残っていた。
疲労が溜まりながらも、倉田は仕事に向かう。その日の撮影中、彼は異変に気づいた。カメラの前で身体が勝手に動き出し、まるで誰かに操られているかのような感覚に陥った。共演女優が怯えた表情を浮かべる。「大丈夫?」
だが、倉田の目は焦点が合わず、虚空を見つめていた。
【小島孤児男の異変】
小島孤児男は、今はAVのアシスタント・ディレクターとして働いていた。だが、彼もまた不可解な夢に悩まされていた。
夢の中で、小島はかつての撮影現場に立っていた。暗闇の中、何かがこちらを見ている気配がする。視線を感じ、振り向くと、そこには凛が立っていた。
「また、会ったね……」
その声は、まるで小島の頭の中に直接響いてくるようだった。彼はうなされながら目を覚ますが、腕を見ると青黒い痣が残っていた。
異変はそれだけではなかった。AVの編集作業をしていると、映像におかしなノイズが混じるようになった。巻き戻して確認すると、画面の隅で誰かがカメラ目線で微笑んでいる。
そこに映っていたのは、既にこの世にいないはずの藤宮凛だった。
第2章:怪奇現象の拡大
【怪奇現象の兆候】
その異変は、最初は些細なものだった。
誰もいないはずのスタジオの鏡に、別の顔が映る。スマホのカメラで撮った映像に、写るはずのない影がぼんやりと浮かび上がる。編集中の映像には、唐突に「恨む」「助けて」といった言葉が混じり、関係者の背筋を凍らせる。
そして、最も恐ろしいのは、それがただの錯覚では済まされない事実だった。
呪いの影響は次第に広がり、関係者の身に奇妙な事故が相次いだ。あるスタッフは、自宅の浴槽で不審死を遂げた。彼の首には、何かに締め上げられたような赤黒い痕が残されていた。別の人物は、仕事の帰り道に突如発作を起こし、壁に遺された血文字には「見たな」と記されていたという。
【依頼の発端】
小島孤児男(こじま こじお)は、かつて汁男優として業界に身を置いていた。しかし、今はAVのアシスタント・ディレクターとなり、現場の裏方を支える立場となっていた。
だが、彼の身にも異変が起こり始めた。
最初は、ただの悪夢だと思っていた。
夢の中で、彼は見知らぬ部屋にいた。暗がりの中、誰かがこちらを見ている。目が合うと、女が不気味に微笑んだ。
「また、会ったね……」
目を覚ますと、腕には青黒い痣が残っていた。悪夢は夜ごとに続き、疲労は溜まる一方だった。
だが、それだけでは終わらなかった。
映像編集をしていたある日、小島は異変に気づく。撮影したはずのない影が、画面の隅でゆらめいていた。再生を止め、巻き戻して確認する。影はそこにいる。しかも、カメラ目線でじっとこちらを見つめていた。
小島は恐怖に震え、ついに幽霊探偵・伊田裕美の元を訪れる。
【幽霊探偵・伊田裕美の登場】
ある晩、裕美のスマホに一本の動画が送られてきた。
匿名の発信元。差出人は不明だった。
映像には、AV撮影中の現場が映し出されていた。だが、その画面の隅に、何かがおかしい。
光の加減か、映像のノイズか——最初はそう思った。しかし、違う。
影があった。
人影のような、そうでないような、歪んだ何かが、じっとこちらを見つめている。動画を再生するたびに、その影は少しずつ近づいているように見えた。
「これは……ただの機材トラブルじゃない……」
裕美の背筋に、冷たいものが走る。
【凛の最期の出演作】
調査を進めるうちに、裕美はある一本の映像に行き着く。
それは、藤宮凛の最期の出演作だった。
画面には、彼女が男たちに囲まれ、無理やり笑顔を作る姿が映っている。だが、カメラの奥、目の奥には、絶望が滲んでいた。
そして、次の瞬間。
彼女の唇がわずかに震えた。無音の中、はっきりとこう言っていた。
「助けて……」
裕美は息を呑む。
画面の端に目をやると、そこには誰もいないはずの暗がり。
だが、はっきりと見えた。
何かが、じっとこちらを見つめていた……。
第3章:呪われた調査
【小島孤児男の依頼】
小島孤児男は、かつてマッチングアプリに絡む怪事件で伊田裕美に助けられた過去があった。それ以来、彼女のことを信頼しており、今回の異変についても相談すべきだと考えた。
「幽霊探偵さん、また助けてもらえませんか……?」
彼は疲れ切った顔で裕美の前に座った。目の下には深いクマができ、落ち着かない様子で指を組んでいる。
「最近、俺……妙なものを見ちまうんです。撮影現場でも、編集してるときも……何かに見られてる気がしてならない」
小島の声には明らかな怯えが滲んでいた。幽霊の類はもうこりごりだと思っていたが、彼が関わる仕事にはどうしてもそうした怪異がつきまとっていた。
「また……か」
裕美は彼の言葉を受けて、考え込むように頷いた。彼女はすでに藤宮凛の名前を知っていたが、この件にどれほどの闇が絡んでいるのか、まだ全貌が掴めていなかった。
【裕美の独自調査】
小島の話を受け、裕美は独自に調査を開始した。彼女はまず、藤宮凛が関わった作品を洗い出し、業界関係者に話を聞いた。
「藤宮凛? ああ……あの子、確かにいたな。でも、もうずいぶん前の話だろう」
あるディレクターはそう言って顔をしかめた。
「妙な噂もあったよ。彼女の出てた最後の作品、あれを見た奴らの中には、精神を病んじまったのもいる」
話を聞くうちに、裕美はある事実に行き当たった。藤宮凛はAV業界に引きずり込まれた被害者であり、特にある特定の男性アイドルの「接待役」として利用されていたという。
裕美は業界の闇の深さに改めて息を呑んだ。
【編集長・伝兵衛の怒り】
裕美が調査に夢中になっていることに気づいた雑誌編集長・伝兵衛は、彼女を呼びつけた。
「おい、伊田! 幽霊探偵もいいが、うちの締め切りはどうなってんだ!」
カンカンに怒った伝兵衛を前に、裕美は軽く肩をすくめた。
「まあまあ、編集長。これが片付いたら、ちゃんと記事を書きますから」
「片付いたら、だと? お前、まさか本気で幽霊と戦うつもりか?」
伝兵衛は呆れたようにため息をつくが、裕美は真剣な表情のまま言った。
「……この事件、ただの怪談じゃない。もっと深い闇がある気がするんです」
【男性アイドルの末路】
藤宮凛を弄んだ男性アイドルは、成功の階段を駆け上がった。しかし、その栄光は長くは続かなかった。
「……見られている気がする」
彼はマネージャーにそう漏らしたという。
やがて、幻覚を見るようになり、夜ごとに「助けて」という声を聞くようになった。やつれ果てた顔で、彼は失踪した。
数週間後、彼の遺体は富士山の樹海で発見された。
首を吊った彼のそばには、奇妙な血文字が刻まれていた。
——私は絶対に許さない。
呪いは、まだ終わっていなかった。
第4章:幽霊の正体
【少女の夢と闇の罠】
藤宮凛(ふじみや りん)は、地方の小さな町で生まれ育った。幼い頃からアイドルに憧れ、雑誌のグラビアを眺めながら「いつか自分も」と夢を膨らませていた。中学卒業後、彼女は地元の高校には進学せず、東京へ上京した。ある芸能事務所にスカウトされたのは、そんな矢先のことだった。
「君なら絶対に売れる」
担当者は笑顔でそう言い、夢を語る凛を巧みに誘い込んだ。しかし、その事務所は表の顔とは違い、裏ではAV業界と繋がるブラック企業だった。デビューを夢見ていた凛は、やがて逃げ場のない状況に追い込まれていく。
【強要と絶望の果てに】
「夢を叶えるために、少し大人の仕事を覚えよう」
甘い言葉に乗せられ、彼女は気づけば無理やりAV撮影に参加させられていた。泣きながら拒否しても、周囲は笑いながら「大丈夫、大丈夫」と肩を叩くばかりだった。最初の仕事が終わった後、彼女は鏡の前で自分を見つめた。そこには、かつて夢を語っていた自分の面影などなかった。
事務所はさらに彼女を「接待役」として利用した。人気の男性アイドルたちが集うパーティーに呼ばれ、彼女は笑顔で彼らの相手をすることを強要された。逃げる術はなく、誰かに助けを求めようにも、すでに携帯も取り上げられ、外部との連絡手段はなかった。
やがて、凛は限界を迎えた。
【怨霊への変貌】
ある夜、彼女は決意した。
「私をこんな目に遭わせた奴らを……絶対に許さない」
彼女は自室の鏡の前に座り、震える手でカミソリを握った。細く白い肌に刻まれる傷。そのたびに、彼女の目には憎しみと怨念が宿っていく。
翌朝、彼女は自ら命を絶った。
しかし、死してなお、彼女の苦しみと怒りは消えることはなかった。彼女の魂はこの世に取り残され、強い怨念となって業界を彷徨い始めた。
【呪いの始まり】
凛が亡くなった直後、関係者の周囲で異変が起こり始めた。
彼女を騙した芸能事務所のスタッフは、ある夜、浴室で不審死を遂げた。湯船の中には大量の黒髪が浮かび、壁には「助けて」と爪で引っ掻いたような跡が残されていた。
彼女を弄んだ男性アイドルのうち、一人は夜道で不審な事故に遭い、全身の骨を折って死亡した。事故の直前、彼は友人に「最近、ずっと同じ女が視界の隅にいる」と話していた。
やがて、呪いの連鎖は広がっていった。彼女が関わった撮影スタッフ、AV監督、共演者——次々と不可解な死を遂げる者が現れた。
そして、藤宮凛を搾取し続けた芸能事務所の社長、蛭文字伝八郎(ひるもんじ でんぱちろう)も例外ではなかった。
【蛭文字伝八郎の最期】
蛭文字は、成功者として君臨していた。豪奢なマンションに住み、高級車を乗り回し、金に糸目をつけない生活を送っていた。凛の死後も彼は何の罪悪感も抱かず、新たな少女たちを同じように騙し、業界の歯車として使い捨てていた。
だが、ある夜、異変が起こった。
広い寝室に響く、かすかな足音。
「……誰だ?」
彼はベッドの上で身を起こした。部屋には誰もいない。だが、窓ガラスに映るのは、ひどく見覚えのある少女の姿。
「……まさか」
彼の目が見開かれた瞬間、耳元で囁く声が聞こえた。
「私は……絶対に許さない」
蛭文字は息を呑み、必死に部屋を飛び出した。だが、廊下の鏡に映った彼の姿の背後に、凛が微笑んでいた。
その瞬間、彼の身体は見えない手に引きずり込まれた。
翌朝、蛭文字の遺体は自宅のバスルームで発見された。口を大きく開けたまま、まるで恐怖の極致で絶命したかのような表情を浮かべていた。
壁には、赤黒い文字で書かれた言葉があった。
——私は絶対に許さない。
呪いは、まだ終わっていなかった。
第5章:決戦の夜
【収まらぬ呪い】
関係者が次々と不審死を遂げた後も、呪いは収まる気配を見せなかった。まるでこの世に強く縛りつけられた怨念が、新たな獲物を探しているかのように。
藤宮凛の呪いを断ち切るには、直接対峙するしかない。そう判断した伊田裕美は、湯川寺の住職であり陰陽師でもある村田蔵六を訪ねた。
【梵字の護り】
「相手はただの霊ではない。怨念の塊じゃ……」
村田は険しい顔で呟いた。
「お前さんを守るには、徹底的にやるしかないのう」
裕美は黒いスーツを脱ぎ、顔以外の全身に梵字を刻んでもらった。冷たい筆の感触と共に、呪符の力が肌に沁み込んでいく。
「これで、完璧じゃ。たむならの鏡と共に、霊と対峙する覚悟はできておるな?」
裕美はすでに、その鏡を長年の相棒として持っていた。
「ええ。これで終わらせるわ」
【呪われたAV撮影現場へ】
深夜、裕美は小島孤児男と共に、藤宮凛が最期を迎えたAV撮影スタジオへと足を踏み入れた。
「大丈夫か?」
小島は震えながら鍵を開けた。
「俺はもう関わりたくねぇ……でも、これが終われば……」
彼の言葉が終わる前に、異変が起こった。
スタジオの隅に、ゆらめく影。
それは、凛の姿だった。
【取り憑かれた小島】
「やめろ……やめろ……!」
小島が頭を抱えてうずくまった。次の瞬間、彼の目が真っ黒に染まり、顔が藤宮凛に似たものへと変わっていった。声は女性と男性のものが混じり合い、体から黒い煙が噴き出す。
「裕美……助け……」
だが、小島は次の瞬間、獣のように吠えながら裕美に飛びかかった。
しかし——
霊は梵字に守られた裕美には手を出せなかった。小島の身体を借りたのだ。
その手が届く瞬間、目に見えない結界のような力が弾き返し、彼女の周囲に冷たい波紋が広がる。
小島は苦しげに喘ぎながら仰け反り、完全に霊に乗っ取られた。
【たむならの鏡の力】
「ぐっ……!」
裕美は必死に抵抗し、股を蹴り上げた。苦痛に顔を歪めた小島が怯んだ隙に、彼女はすぐにカバンからたむならの鏡を取り出した。
しかし、その瞬間——
「逃がさない……」
小島(凛)の腕が彼女の手首を掴んだ。指先は氷のように冷たく、体の芯まで凍りつくような感覚が広がる。
「もう……終わらせる……!」
裕美は震える手で鏡を持ち上げ、月光を反射させた。
たむならの鏡が光を帯び、呪文を唱えると、鏡の中に映る霊の姿が凛から別の少女へと変化した。
「これは……」
藤宮凛だけではなかった。
そこには、過去に同じように犠牲となった無数の女性たちの顔が映し出されていた。
「……助けて……」
その声が響いた瞬間、光が爆発するように広がり、小島の体から黒い煙が吹き出した。
【呪いの終焉】
「ギャアアアアアアアア!!」
小島の体から何かが引き剥がされるように暴れ回る。
霊はたむならの鏡の光に焼かれ、苦しみながら叫び続けた。
「もう……終わらせて……!」
最後の瞬間、藤宮凛の姿が現れた。涙を浮かべながら、光の中に溶けていく。
——そして、すべてが静寂に包まれた。
呪いは、ついに終焉を迎えたのだった。
第6章:静寂の湯
【穢れを落とす湯】
深穢れを落とす湯夜、裕美は湯川寺の温泉に浸かっていた。長い戦いを終え、梵字に守られた体をゆっくりと湯に沈める。肌に染みついた呪詛も、この湯に流されていくようだった。
「ようやく終わった……」
彼女は小さく呟いた。戦いの緊張が解け、湯の温もりが全身を優しく包み込む。
しかし、ふとした瞬間、視線を感じた。
誰かがこちらを見ている——そんな錯覚。
彼女はゆっくりと顔を上げ、湯気の向こうに目を凝らした。しかし、そこには誰もいない。
「気のせい……よね?」
安心したように笑い、目線を落としたときだった。
湯殿の鏡に映った自分の姿。
——その隣に、藤宮凛が立っていた。
しかし、それは一瞬のこと。
次の瞬間には、鏡はただの湯気に曇ったガラスに戻っていた。
「もう終わったこと……」
裕美はそう呟き、肩まで湯に沈めた。
【生の実感】
湯の温もりに包まれながら、裕美は静かに目を閉じた。戦いの緊張が抜け、全身の力がほどけていく。
ほのかな湯気が肌を撫で、心地よい熱が、疲れた身体を解きほぐしていく。
気づけば、指先がゆっくりと動いていた。
無意識のうちに、波紋のように甘い感覚がじんわりと広がる。
ただの性欲ではなかった。
——生きている。
生の実感と、戦いから解放された安堵感が、指先の動きと共に身体に満ちていく。
「……っ」
だが、その瞬間。
ふと、背後に気配を感じた。
指の動きを止め、ゆっくりと周囲を見回す。
——誰もいない。
それでも、彼女は微かに笑い、湯に深く身を沈めた。
戦いは終わった。
しかし、幽霊探偵の旅は、まだ終わらない。
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