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しおりを挟む「海途?ねぇ海途、聞こえてる?」
恋人の声が遠くから何度も何度も海途を呼んだ。
「……っごめん、ぼーっとしてた」
適当にそう言うと、恋人の指差す先を海途はもう一度見た。
目の前のものを見ているが、頭では一つも認識していない。
先程の光景が衝撃過ぎて、海途は理解が追いついていない。
電光石火の如く、体にはそれはそれは大きな衝撃が走った。
「どれにする?ケーキも新作だー……可愛い!」
買って家で食べようよ、という恋人の誘いで寄ったカフェ……
だが、ネームプレートには安斎とあった。
違う……
見間違いかもしれない……
じゃあ……——
あの反応は——?
いや違う……見間違いだ。
違う 星川じゃない——
青葉じゃ無い——
何度も何度も、海途はそう自分に言い聞かせる。
それでも、青葉が入って行った扉だけを、海途は何度も何度も見つめていた。
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