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しおりを挟む唯はいつものスーツよりも少し柔らかな印象になる様に、クリーム色のノーカラージャケットとパンツを身につける。
どちらかと言うと小柄で童顔の唯はパンツスーツを好まないが、デートに行くわけでもう無いのでキッチリとした雰囲気は保ちたい。
指定された場所は、都内の高級ホテル内にあるカフェだった。
カフェに付くと、スタッフに予め国から渡されていたカードを渡す。
通された先はカフェの個室だった。
どうやらまだΩは来ていないらしい。
唯はメニューを貰うと、ホテル仕様に彩られたスイーツを前に食欲に抗えず、アフタヌーンティーのセットを頼んだ。
頼んだものが届いても、Ωは現れない。
唯は耐えきれずに、プレートに乗せられた可愛らしいスイーツ類に手を伸ばす。
美味しいーっと舌鼓を打っていると、個室のドアをノックする音がした。
唯は慌てて紅茶を流し込み、はいっ、と返事をする。
「失礼します。お待たせしてすみません」
そう言って現れたのは、スラッとして中性的な、美しく若い男性だった。
「あ……」
唯は椅子から立ち上がり、初めまして、と頭を下げる。仕事の習性なのか、咄嗟に右手で名刺ケースを探してしまった。
個人情報は漏らしてはならない……––––
名刺なんて渡したら言語道断では無いか、と唯は右手を変な動きで背中の方へ回す。
「お爺さんかお婆さんか、おじさんかマダムか…って思ったらお若い方だったのでびっくりしました」
見目麗しい男は柔らかく微笑んで、ボディバックを空いた椅子に置くと唯の前に腰を下ろした。
服装は至ってシンプルなTシャツとシャツ、そして黒いパンツなのにそれだけでも男はとても不思議なオーラを放っていて、唯はダメだダメだと思いつつチラチラとその姿に目を遣る。
唯は男にメニューを渡し、注文が済むとまた個室は2人だけとなる。
「僕の事はユウマって呼んでください、お姉さん。個人情報は明かせないってあったので、僕はお姉さんって呼びますね」
唯が話し出せずにいると、ユウマはそう言って2人に漂うなんとも言えない雰囲気を和ませる。
「……ユウマさん、凄くお若い、ですよね?」
唯がそう尋ねると、ユウマはニッコリと笑った。
「そうですね、でもお姉さんより少し下かな?もしかして同じ位かも?」
––なんだかペースを握られて掌で転がされているような……
キラキラと輝くオーラを振り撒くユウマは、唯の予想に反して随分と余裕がある。
唯は大人の余裕を保とうと、気を引き締めなおした。
「実は、今回お呼びしたのは契約の前に話さなければいけないお話があって……」
唯がそう切り出すと、ユウマが頼んだ飲み物もちょうど良く運ばれて来る。
「何ですか?人妻とか?」
ユウマがそう言うと、唯は一瞬だけ顔を赤くしてブンブンと首を左右に振る。
人妻……の一言が、唯にはなんだか重く肩にのしかかる。唯の父の顔と共に……––
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