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暗影の森での訓練

魔界の訓練巡り:暗影の森での訓練 Ⅱ

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「次は幻影についての訓練をしましょう、これは感知技術を応用した特殊な技術です。感知技術と同じく、まずは環境の気配や動きに敏感になることが大切です。相手が何を感じ、見ているのかを理解することが、幻影を成功させる第一歩です」

 ヴェラは影魔法の中で幻影を具体的に操作する方法を伝えてくれた。

「幻影は、自身の周囲にエネルギーを集め、それを自分の姿の代わりに投影することで機能します。相手の知覚は、この投影されたイメージに惑わされ、本物のあなたを見落とし、奇襲がしやすくなります。しかし、それだけでは十分ではありません。相手の感知技術や魔法に対する抵抗力が強い相手には通用しづらいこともありますが、この場合はもっと高度になるので後々説明します」

「幻影の成功には、状況判断や適切なタイミングが欠かせません。相手の視線や注意が幻影に向けられている時、ハルト殿は敵への攻撃を仕掛けるべきです。幻影を使っている間は、相手が本物を見逃すように仕向けることが重要なのです」

 ヴェラはその後も具体的な操作法を詳しく説明してくれた。

「先程も言いましたが幻影を使うには、まず自身のエネルギーを感知し、それを周囲に広げて投影する必要があります。感知技術と同じように、まずは自分自身のエネルギーを感じる練習から始めましょう」

  俺は彼女の指導に従い、自分自身のエネルギーに集中した。感じることが難しく、最初はうまくいかなかったが、ヴェラは忍耐強くサポートしてくれた。

その暗闇の中で、彼女の存在は頼りになる存在であり、心強い支えとなっていた。俺が自分の内なるエネルギーに集中しようとするたびに、彼女は優しく促してくれ、失敗や挫折に直面しても決して諦めないでと励ましてくれた。彼女の声は安定感に満ち、俺に自信を与えてくれるようだった。その姿勢とサポートによって、俺は少しずつ自分の内なるエネルギーを感じることができるようになっていった。

「良い感じですね。次に、そのエネルギーを形にし、周囲に投影してみてください。イメージが大切です。相手の視線を引きつけ、惑わせるための具体的なイメージを持つことが成功の鍵です」

  俺は再びトライし、自身のエネルギーを集めるために深呼吸をした。息を吐き出す間に、周囲の空気が動き出し、微かな霧が広がっていくのを感じた。集中を高めるため、頭には幻影のイメージが鮮やかに浮かんでいた。指先から伸びるエネルギーが、幻影の輪郭を描き始める。それはまるで透明な絵筆がキャンバスに触れるように、エネルギーが空間に線を描いていく感覚だった。イメージを辿りながら、幻影の形を次第に具現化していった。

初めて成功した瞬間、不思議な感覚が全身を包み込んだ。その幻影が俺の手で実体化する様子は、まるで魔法の一端に触れたような錯覚を覚えた。手の中に自分の意志が形を成し、現実と交わる感覚は、まるで別次元に存在するような感触だった。自分がエネルギーを制御し、幻影を生み出す力を手に入れた自信が俺を包み込む。しかし、その喜びも束の間、幻影は一瞬にして消えてしまった。その消え行く姿を見て、俺はまだその力を完全には把握していないことを実感した。

「幻影はできましたが、一瞬で消えてしまいましたね」

 ヴェラは厳格な表情で言った。彼女の緑の瞳が真剣さをにじませていた。

 俺は少し息を整えながらヴェラの言葉を受け止めた。それでも、幻影が一瞬で消えたことは、俺にとってはまだまだ未熟な証拠だった。

「もちろん、もっと練習が必要です」

 俺はしっかりと言った。

「でも、どうやったら幻影をより長く保つことができるのか、もっと教えてもらえますか?」

 ヴェラは微笑みながら言った。

「もちろん、もう少し忍耐と集中力が必要です。幻影を保つためには、自身の気を集中させ、影の力をコントロールしなければなりません。そして、敵の目を欺くことが大切です。それを踏まえて次の試みでより長く幻影を保つようにしてみましょう」

「わかりました、やってみます」

 練習が続く中で、ヴェラの指導のもとで幻影を長く保つことに焦点を合わせた。初めの頃は幻影を形作ること自体が難しく、その姿を維持することはさらに難しい課題だった。しかし、ヴェラの厳格な指導と励ましのおかげで、徐々に技術を磨くことができた。

繰り返しの練習を通じて、俺は自身のエネルギーを感知し、周囲に広げる方法をマスターしていった。それを具体的なイメージに変える技術も向上し、幻影を形成するための基礎を築いていった。ヴェラの的確でわかりやすい指導があったおかげで、感知技術を応用し、幻影を操作する方法にも理解を深めることができた。

「ハルト殿、良い感じです。幻影を長く保てるようになりましたね」

 ヴェラは微笑みながら言った。

「ありがとうございます、ヴェラ」

 私は誇らしげに答えた。確かに、幻影を保つ時間が長くなり、成功への自信も高まっていく。

「それでは次に、もう一つの要素を追加しましょう。敵の感知技術に対する抵抗力です」

 ヴェラが続けた。

「敵が強力な感知技術を持っている場合、幻影を見破られてしまうことがあります。その際、あなたはどうすべきかを学びましょう。」

 俺は興味津々でヴェラの指導を待ち望んだ。これからの訓練が、さらに高度なスキルの獲得へとつながることを感じていた。

 ヴェラは緑の瞳を俺に向け、言葉を続けた。

「敵の感知技術に対する抵抗力を高めるために、まずは自身のエネルギーを守る力を養いましょう。自身の気配を消すことが大切です。これはコツを掴めば今のハルト殿には簡単なはずです。自分のエネルギーを包み込み隠すイメージを強く持ってください」

  言葉通り、俺はヴェラが教える方法に従って、自身のエネルギーを包み込み、外部の感知技術から隠すことを学んでいった。最初は難しい技術だったが、徐々に理解を深め、自分のエネルギーを制御する方法を身につけていった。集中力を高め、エネルギーを感知する訓練を繰り返すことで、周囲からの感知を遮断する能力を向上させた。ヴェラが微笑みながら俺を褒め称えると、達成感が心を満たした。この新しいスキルは、戦闘や偵察などの様々な状況で役立つことを感じた。

「素晴らしい成長です。感知技術への抵抗力を高めることが、敵に対して幻影をより強力にする秘訣です」

 ヴェラの指導のもとで、感知技術と幻影の魔法を向上させるために日々精進した。最初は未熟であったが、ヴェラの的確なアドバイスと厳しい指導によって、徐々に成長していく自分自身を感じた。

感知技術では、周囲のエネルギーを感じ取る繊細な訓練を繰り返し、自分の感覚を研ぎ澄ませていった。その過程で、魔界での生活においてより効果的に隠れることができるようになった。また、幻影の魔法では、自分のエネルギーを具現化し、幻影を長時間維持するための技術を磨いた。ヴェラの教えに従い、練習を重ねることで、幻影の魔法をより自在に操れるようになった。
  
「さて、私との最後の訓練を始めましょうか、ついてきてください」

 俺はヴェラについて行った。どれだけ進んだだろうか、森の深奥に到着した。

「ここは影の聖域です。ここは魔族たちの特別な訓練場所として利用されています」

 暗い闇が辺りを支配し、静寂が漂う。巨大な木々がその影を投げ、暗い影が地面を覆っている。地面には幻想的な模様が複雑に刻まれ、そこに幽玄な雰囲気がただよっている。光の届かない場所に包まれ、不気味な静けさが心を打ち震わせる。

 ヴェラは説明を始めた。

「影の聖域には一対一の勝負ができる場所があります。ここでの勝負は訓練の一環で、たとえ致命傷を受けたとしても即座に回復します。ルールはシンプルです。私に一撃でも与えることができれば、ハルト殿の勝利です。しかし、私も簡単にはやられません。本気でぶつかってきてください」

 ヴェラの言葉に俺は決意を固めていたが、ヴェラは微笑みながら言いました。

「その前に休憩しましょうか、私が手料理を奮いましょう!」
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